第9話 市民アル-Uと都市の姿

『体の調子はどうですか?市民アル-U。』


少女は軽く手足を伸ばしてコンピューターの問いに答える。


『大丈夫だと思いますコンピューター。』


『検査結果も問題無し、必要なデータの収集もすんだのです。定期的な検査を条件に、市民アル-U退院を許可するのです。』


『データの収集?』


市民アル-Uは、コンピューターの言葉に疑問を感じる。


『市民アル-Uは、ナノマシーンの異常を検知され、その原因究明のためにマリア-Uが派遣されたのです。彼女は、戦後の技術発展に大きく影響を与えた、すでに成果を出した UV(ウルトラヴァイオレット) なのです。』


市民アル-Uは、マリア-Uの凄さよりも、それを我が事のように話すコンピューターの方に驚いたが、それは伝えないことにした。


『そう言えば私の居住区画って何処でしたっけ?』


『案内をしたい所なのですが、その前にする事があるのです。』


何の事かわからないと首をかしげる市民アル-Uの目の前に少女の姿が写された、患者衣姿の赤髪ショートの女の子。


『病院貸し出しの服のままなのです。ショッピングというよりかはオーダーメイド、外出用の衣服の購入を推奨するのです。』


モノレールに乗り込んだのは白いレースの羽織を纏った少女。


黒い洋服に赤いスカート、赤い髪には青い髪飾りをちょこんと乗せた、市民アル-Uがモノレールの座席に腰かけていた。


『もうすぐ医療セクターをぬけるのです。』


『?』


市民アルーUは疑問をコンピューターに伝える。


『地下都市の街並みを見て欲しいのです。』


コンピューターの言葉に、少女は眉をひそめた、いくつもの明かりがちりばめられた都市は美しかった、だが段々と使える明かりは消え、いつ世界は闇に没するのかと怯えた日々。


『どうしたのですか?』


機械的な建物の隙間を通り抜けたモノレールの窓に広がっていたのは広大な地下空間、鏡の様に周りの景色を反射する万能セラミックで建造された角ばった印象の建造物、デジタルデータの流れを表現した青いラインの装飾が施されていた。


『地下空間である為、閉鎖感の軽減のために鏡の様な外装になっているのです。地下空間の壁部のスクリーンから地下都市を照らしているので、地下にいるという感覚は少ないはずなのです。』


地下都市の都市区画は高さ10キロメートル、半径60キロメートルの円形都市、面積は約11304平方キロメートル、発電区画や重工業区画、海洋区画と言ったコンピュータが管理する無人の施設と、それらを除いた市民が住む都市としての区画が自給できるセクターとして分割され広がっていた。


『市民アル-Uは、明るい景色は初めてのはずなのです。改めてようこそ地下都市へ、ここが私達の都市なのです。』


外は暗い、そんな既成概念が音をたてて崩れていく、見上げればいくつもの建造物が天井から伸び、いくつかの巨大建造物が柱の様に天井と地上を繋いでいる。


そんな建物の向こうには、作り物ではあるが澄み渡る青空が広がっていた。




今頃ですが、市民アルーUと地下都市の描写です。


天井がある以外は、地上とあまり変わりの無い未来都市です。


だからこそ、市民の多くは外の世界にあまり感心を示しませんし、その必要もありません。


戦前の地下都市も外の世界に興味を示さないのは同じですが、壁面のスクリーンが存在せず、建物や乗り物の窓から見える夜の街並みこそが地下都市の姿でした。


次回は軽く戦闘描写を入れようと思います。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る