第5話 記憶喪失の市民とコンピューター
地面が冷たい、全身がひどく痛み、辺りはオレンジ色の炎に包まれている。
「あれ?私何で、」
辺りには自分と同じ様に倒れた市民がおり、少し離れたあたりを地下都市の消防隊や救急隊、また都市警備隊の警察官が忙しそうに駆け回っている。
『怪我の状況、倒れた位置を元に優先順を視界に表示します。』
「ありがとうコンピューター、良し何人かは付いて来い。」
救急隊の一部隊がストレッチャー型の機械を引きずりながら近寄って来る。
『推奨、止血ナノマシーンの使用。』
「ああわかってるコンピューター、おい大丈夫か君。」
力の入らない体をストレッチャーに乗せられる時、何か言われた気がするが、その意識は暗転した。
真っ暗な空間に横たわっていた、自分の身体が柔らかい何かに横たわっている事は分かるが、それ以外何も分からない。
起き上がろうと体に力を入れた時、脳に電流が走る。
(端末起動中)
視界の左上に通知が浮かびあがり、視界を占めていた暗闇が晴れ、清潔感ある天井が広がる。
「おや、意識が戻りましたか、アル-R。」
頭の上にマリア-U-MC4Sと頭に表示された、白髪の白衣の女性に話しかけられる。
「何が起きたか覚えているかしら?」
「UV様!!いかがなされましたか?」
アル-Rと呼ばれた少女は、あわてて起き上がり、姿勢を正す。
「あら、40年前みたいな反応ね、この様子だと本当に記憶喪失の様ね。」
その様子に、マリア-Uは少し笑いをこぼしながら、楽な姿勢を取るよう促す。
「あなたは、貨物自動車の充電中に、発電施設の爆発に巻き込まれたの、それで接続機と脳の記憶領域を損傷してしてしまったようね。」
視界に、自分の脳が表示され、損傷部分が赤く表示される。
「幸いな事に救助が間に合い、再生治療で回復したのだけど、記憶の一部が欠落しているかもしれないわ。」
「何ですって!?」
驚くアル-Rを、マリア-Uは優しくなだめる。
「今から、いくつかの機能テストをするから、ベットから起きて私の支持する通りに行動してね。まずは地下都市の管理者であるコンピューターに向けて、君の自己紹介をしてみて、やり方は覚えているかしら。」
アル-Rはしばらく記憶の中をさ迷った後に、肯定の意を込めて頷き、自己紹介を始めようとする。
「私は、あっ、しゃべっちゃった、えっと確か。」
『私はアル-R-24S、何だか分からないけど、しゃべるのと乗り物の運転が得意なのを覚えています。ちゃんと仕事もしてた気がするけど、内容は覚えてないです。』
上手い事、喋らずにコンピューターと話す事に成功した、念話とでも言おうか、脳内の通信ナノマシンの感覚を思い出せたようだ。
『おかえりなさい市民、貴方を監視カメラで見なくなってから、コンピューターは悲しかったのです。元気な様子が見れて安心しました、是非また都市の為に市民らしい行動を心掛けて欲しいのです。』
視覚内に、台形のモニターと、そこに映る目玉と言う、奇妙で何処か可愛げのある、コンピューターのアバターが表示され、精いっぱいの悲しみと喜びを表現する。
『しかし、ちゃんと仕事もしてた気がするけど、内容は覚えてない、それは重大な欠陥かもしれません。可哀そうに……。』
と、コンピューターは憐れんでいる。
『ありがとうございますコンピューター様、治れば何をしていたのか思い出せると思います。』
市民の言葉に、様はいいですよ、コンピューターはコンピューターなのでと答えるが、一応再検査が必要かと考える。
『市民アル-R、少しそちらに接続します。!?これは、市民アル-R、腕の力を抜いてみるのです。』
アル-Rが両腕が持ち上がった、勿論アル-Rがコンピューターに逆らおうとするはずも無く、あわてて両腕を降ろそうとしたところで、コンピューターにそのままでいるよう言われ、困惑しながらも従った。
(コンピュウターの思い通りに体が動いたのです。自動機械のセンサーとは全く異なる情報、今のコンピュータには市民アル-Rの腕の感覚があるのです。)
記憶喪失の市民目線の地下都市を描写していきます。
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