第2話 コンピュータと地下都市

(あきららかに崩壊寸前なのです。)


あらゆる施設は壊れかけ、物資の配給は年々減るばかり、何をするにも途方もない手続きが必要、なのにこれまでのコンピュータは市民は幸福であると妄想し何もせず、行った事と言えば幸福になる薬を配布したぐらい、不幸なのは当たり前なのに、それを反逆者のせいにして市民の監視の目を厳しくするばかりで本格的な解決は何も行っていないようです。


(こんな都市で真っ当に生きていけるはずが無いのです。そりゃ秘密結社も作るし、生き残るために悪い事もするはずなのです。自分で反逆者を作って、ほら反逆者が居るって言っても、何を言っているんだとなりますですよ、石橋を壊れるまで叩くタイプなのです。)


過去の失敗よりも、現状をどうにかする方が先だと判断したコンピュータは、行動を開始する。


(まず食糧配給の改善を目指すのです、建物の建造に必要なのは、というより今の技術はどうなっているのですか?)


地球の事を原始惑星と呼べるぐらいの未来技術に、コンピュータは好奇心を刺激されたのだ。


(エネルギーや他金属素材は地下のマグマから抽出しているのです。)


マントル近くまで伸びた施設により、安定したエネルギーと資源が供給されていた。


(万能セラミックによって衣服から乗り物までの各種工業製品、建材に至るまでの全てが作成されているのですか、万能と言うだけあって何にでも作れるのです。)


精密セラミックと人工生体物質、その他金属素材の組み合わせによってつくられた万能セラミック、その加工の自由さというか万能さにより、採掘した資源は万能セラミックの高密度インゴットとして保管されていた。


(もしも地下都市が滅びても、万能セラミックの立体印刷技術が残れば再建は出来そうなのです。)


保管される万能セラミックの量から、コンピュータはそう判断した。


次に確認するのは各種資源の採掘量と発電量、と確認するが、どちらの貯蓄量も産出量や発電量の方が多いので次の項目に移る。


(水と食料の項目が右肩下がり、食糧生産施設の整備不良、上下水路の水漏れ及び汚水処理施設の老朽化、何というか全体的に整備が行われていないのです。)


インフラの整備が出来ていない事に不満を募らせつつ、コンピュータは原因を探る。


(整備機械が止まっているのです。というか生産系の自動機械が生産されず、何故か市民で代用されているのです。)


自動機械の製造工場区画からの情報を確認する。


(は?戦闘用自動機械の在庫により新規自動機械の製造中止中!?)


前任者のコンピュータの認識では、地下都市は戦争に巻き込まれており、インフラの劣化は敵対組織による攻撃と認識し、戦争状態の解除まで軍事重視とし、現状の整備自動機械に任せて、軍事力の増強を優先するという方針で動いていたようだ。


(保管庫内の戦闘用自動機械を解体、整備用自動機械の生産に変更、食糧施設と上下水路の整備を最優先にするのです。あー、他にも似たように必要ない物の在庫を抱えている施設があるような気がするのです。)


万能セラミック精製工場が停止している事に気が付くも、これは他の施設が正常に稼働すれば解決するだろうと、都市全体の情報収集に励む。


(まずは配給だけで生活出来るだけの生産力を回復させ、同時に前コンピュータの広めたパラノイア的思考を何とかしなきゃなのです。)


日用品や食品などの基本的な産業は自動化する事が可能です。


仕事の無い世界を作ってユートピという事は出来るが、独善的な奉仕機械に管理されたデストピアが出来る可能性がある為、作者を含めてコンピューターは悩んでいます。

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