転生コンピューター様の内政チート

テンユウ

第1話 コンピューターはコンピューター

(完璧なはずなのに、もう誰も信用できない、市民の全てが反逆者に見える。完璧なコンピュータでさえも。)


思案する、コンピューターは一体何者なのか、そもそもこの体は生物のものでは無い、暑くもない、寒くもない、何も見えない暗闇の中、宙に浮いたような感覚に戸惑う。


(コンピューターは誰なのと疑問を浮かべます。)


何も見えない暗闇ではありませんでした、莫大な情報の中にコンピューターは居たのです。


(此処は一体何処だろうか?いや、コンピューターはそもそも一体何者だろうか?分からない、思い出せない・・・。)


曇りガラスに映る風景のように、過去の自分の記憶が酷く曖昧で、しかし、確実に存在した記憶の残滓をかき集める様にコンピューターは思い出そうとする。


(ここは電脳世界なのです。それともネットの世界?少なくとも電子的な感じの中でコンピューターは思考しているのです。つまり物質的な情報収集機にアクセツするのです。)


コンピューターであるが故に温度を感じず、視覚を持たず、人間が必要とする感覚器官が存在しないこの体は、嫌がらせのように周囲のあらゆる物を感知していた。


(まるで自分の周りに神経が伸びている様な不快な感覚なのです、触覚も熱も感じない筈なのに、何も見えないのに、せめて視覚ぐらいは取り戻したいのです。)


コンピュータは、いくつかの監視カメラに接続し、地下都市での最高権力。完璧かつ公平で常に市民の友人であるコンピューターと自己を認識する。


(えー戦争状態てコンピューターはコンピューターは驚愕するのです!?失礼、取り乱しました。)


戦争と言えば素早い判断が求められることが多い、僅かな判断ミスが致命傷を招くと、現在の情報を精査する。


(敵の規模は不明、外部からの情報途絶?あれ、断片的な情報しかないのですが、えっと戦争が起きてから数世紀以上経過していますがどういう事でしょうか?)


回答は出ないが、しばらく放置して良いことだと、優先順位をいくつか下げる。


(さて、このほんのちょっとが外部の情報ならこっちの莫大な情報はなんなのでしょうか?)


 コンピューターは電脳空間で、情報の再確認を行う。


(地下都市の統治コンピューターって?ああコンピューターの事ですか、あれ一人称がコンピューターなのですか!?コンピューターは誰なのです、あー、えっとコンピューターは原始文明の惑星に居住していたような、そう大陸型惑星の島国、そう日本だ、コンピューターは日本出身の学生、転生、う、頭が、)


それより、現状確認しなければと自身の機能を確認する。


無駄に人格、少なくとも偏執病パラノイアに陥る程度には感情を持てるほど高性能、ある意味でポンコツ、演算リソースは際限のない増築によりかなりの物の様だ、正直比較対象が無いため良く解からない。


(人類反逆者の存在、完璧で幸福なクローン市民、セキュリティー・クリアランス、理解、あ、現状の確認の為、コンピューターの演算リソースの2%を全体の再スキャン及び再演算に割り当て、……)


僅かな沈黙、前任者と言うか前世を思い出す前のコンピュータの統治方針と地下都市の現状を確認してしまう。


市民の皆様こんにちは。


あなたは近未来の市民です。


あなた地底都市に住んでいます。


人類は肉体も科学技術も進歩しています。


食料不足も貧困もありません。アルファコンプレックスはユートピアです。


全能にして慈悲深いコンピューター様によって運営されています。


コンピューター様はあなたに全てを与え、そしてあなたを完璧に幸せにします。


あなたが幸福でないなら、あなたは十分にコンピューター様のことを愛していないのです。


これは反逆行為です。


そして反逆者にはレーザーによる塵も残さない焼却的な略式の処刑が与えられます、あなたは幸福ですね?疑いようもなく。よろしい。


あなたのことをコンピューター様がどれだけ愛しているか分かりましたか?


コンピューター様こそあなたの友人です。信じなさい。




コンピューター様は平和と食料と生活だけをあなたに与えるのではありません。


シェルターや娯楽や仕事その他あなたの必要とするもの全てを与えます。


その他に何か必要なものがあるならば、あなたは反逆者に間違いありません。


コンピュータはこんなに尽くしているのに、市民の事を考えているのに、それなのに不幸な市民が居るわけがありません。


それは反逆者による攻撃に違いありません。


現在、地下都市は戦争状態です。


「コミー」や「テロリスト」と呼ばれる反逆者がこのユートピアに攻撃を行っています。


あらゆるところに敵対者がいます。


コミーを見つけたら即座に抹殺してください。


また、コミーは反逆的な秘密結社に所属しています。


コミーは市民の中にも潜んでいます。徐々に数を増やしていることもわかっています。


彼等はあなたの隣人かもしれませんし、あなたの友人かもしれません。


もしかしたらあなた自身かもしれません。


生き残るには全てを恐れ、無関心を貫くことです。恐怖と無視。恐怖と無視。


警戒せよ!信用するな!武器を手放すな!


(あっはいこれはアウトなのです。間違いなくデストピアなのです。見てて不快になる奴なのです。)


コンピューターは断言した。

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