第3話 受け継がれる意志
ヘルシャフトに恵みの村を襲撃され、避難した聖なる
そして現在ケイは、飛ばされた場所で木に縛り付けられていた。
「う~、なんでこんな事になるんだよーっ!」
*****
何故このような状況になっているのかというと数時間前になる。
竜巻によってケイは恵の村から遠く離れた人里に飛ばされた。
そこでケイは今まで自分を閉じ込めていた竜巻から解放されたのだが、解放された場所を見ると、そこは空中だった。
『んあ? ここは……クッ空中―っ⁉ うわーっ!落ちる~‼』
ケイはそのまま見知らぬ家に落ちて行った。
その落ちた先に少年がいたのだがケイはよける事ができず、そのままぶつかってしまったらしい。
『いててて、ここ何処だ? 恵の村じゃないみたいだし……』
ケイは自分が今いるのが何処なのか確認しようと周りの様子を見回しているその時だった。
ケイがぶつかった少年が起き上がり、ケイを見て叫んだのだ。
『くっ、くせ者! であえ、であえーっ‼』
『え? くせ者ってなんだ? なんか嫌な予感がしてきた……』
くせ者という言葉を聞いたケイの不安は的中した。
くせ者という言葉を聞いた途端、どこからともかく知らない大人が集まってきたのだ。
大人達は鎖鎌を取り出し、それをケイに目掛けて投げつけ、たちまちケイは鎖に縛られ捕まってしまったのだ。
『えっえぇーっ⁉ なんで俺捕まらなきゃいけないんだよー‼』
こうしてケイはこのような状況に立たされてしまったのだ。
*****
ケイは必死で縄をほどこうとするのだが、縄はきつく縛ってあるらしく、ほどこうにもほどく事ができなかったのだ。
今思えばくせ者とは泥棒という事であると、ケイは思っていたのだった。
「なんで俺が泥棒に間違えられなきゃならないんだ~。ヨキ~、マリ~、どこにいるんだよ~」
ケイはすぐにでもヨキとマリを探しに行きたかったが、このような状況でケイにはそんな余裕はなかった。
それどころか木に縛り付けられている。
なんとかして誤解を解かない限り、縄をほどいてくれそうにない事がわかったケイは自分を見張っている大人に声をかけた。
「あの~、ちょっといいっすか?」
「なんだ?」
「いつになったら俺解放される訳? 俺ヨキとマリ探しに行きたいんですけど」
「そんな事は親方様が決める事だ、黙っていろ、くせ者」
「俺泥棒じゃないんですけど~」
何時間も木に縛り付けられている状態で待たされているケイにとっては、とてもつまらない感じがした。
そこでケイは今までの状況を整理する事にした。
最初は村がヘルシャフトに襲われ聖なる祠に逃げ込み、次にヨキが祠にあった石に触れた途端にその石が光り始め、なにが起きたのかわからないまま竜巻によってヨキとマリとは離れ離れ。
挙句、空中で落ちて知らない少年とぶつかり泥棒と間違えられ、今のような状況になってしまったのだった。
そうやって自分の身に起きた事をまとめていると、ケイとぶつかった少年と少年の両親らしい夫婦がやってきた。
ケイを見張っていた大人はその場に
どうやらこの里では村長並の位らしい。
「親方様!」
「見張りごくろう、このものが例のくせ者か」
親方様と呼ばれた男がケイに向ってそう言った。
親方様と呼ばれた男にくせ者呼ばわりされたため、すかさずケイはそこに訂正を加える。
「いやだから俺泥棒じゃないんですけど」
そう言っただけでケイとぶつかった少年が怒り、背中に背負っている刀に手を掛けた。
「おのれ! お主父上を愚弄する気か⁉」
「だーっ! 待て待てなんでキレるんだよ! ってか愚弄って馬鹿にしてるって意味なのか⁉
兎に角斬るな、斬るなーっ!」
目の前で抜刀しようとしている少年の姿を見たケイは、このままだと本当に斬られると思い少年を説得した。
幸いな事に、少年の父親も止めに入ったためケイが切られる事はなかった。
「やめよヒバリ、それでは立派な忍びにはなれぬ」
「はっはは、申し訳ごじゃりませぬ、父上」
ヒバリと呼ばれた少年は慌てて頭を下げた。
どうやら親子といえど立場はわかっているらしく、少年の父親なら話が通じると考えたケイは、誤解を解くために改めて男に声をかけた。
「あの~、ちょっといいっすか?」
「なんだ?」
「俺、なんか盗もうとしてここに来た訳じゃないんですけど」
「ならば、何故ここにいる?」
少年の父親に何故ここにいるのかを尋ねられたケイは、自分の身に起きた信じられない事を説明するべきかを考えた。
普通に考えると、ケイの身に起きた出来事はあり得ない事であるため、説明したとしても信じてはもらえない可能性があった。
(話がややこしくなるかも、けどこのままじゃ二人を探せないし…)
話したとしても信じてもらえない可能性はあったが、このままではヨキとマリを探す事ができないと考えたケイは、意を決して自分の身に起きた事を話す事にした。
「話すと訳わかんなくなるんすけど、いいっすか?」
ケイはできるだけわかりやすく村で何があったのか、そしてなぜここにいるのかを話した。
話し終わった途端、話の内容がないようなだけに信じられなかったであろう少年が怒った。
「そのような嘘で騙せるとでも思っておるのかお主は!」
「思ってねぇよ! あとなんでキレるんだお前⁉」
「ヒバリ」
少年は一歩下がった。男は話を続けた。
「では、お前は知らぬ内にこの里に来たという事か」
「まあ、そうなります、……多分」
ケイがそう言った後、男はしばらく黙りこんで考えた。やがて口を開きこう言った。
「どうやらその話は嘘ではないようだな。縄をほどいてやらろう」
「っ! 本当⁉」
「ただし、しばらくの間お前にはうちで使用人として働いてもらう、わかったな?」
「そっそんな~」
こうしてケイは誤解を解く事ができたのだが、しばらくの間ヨキとマリを探しに行く事ができず、掃除をする事になってしまったのだった。
そしてケイは早速庭の掃除をさせられた。
庭自体はかなりの広さではあったが、掃除はよく罰としてマリにやらされていたおかげですぐには疲れなかった。
だが、今回は悪戯をしていないのに掃除をさせられているため、ケイはブツブツと小声で文句を言っていた。
「なんで掃除させられなきゃいけないんだよ~、早くヨキとマリ探しに行きたいのに~」
一刻も早くヨキとマリを探しに行きたいケイにとって、掃除をしている暇はなかったのだが少年の父親がケイを簡単には外に出してくれそうにはない事は、ケイ自身がわかっていた。
なんとかしてヨキとマリを探す事ができないかと掃除をしながら考えていると、ケイとぶつかった少年が声を掛けて来た。
「おーい、飯でごじゃるぞー」
少年の手には団子のような物が乗った器があり、食事の時間になったと知ったケイは掃除道具を投げ捨て、団子を運んできた少年のもとに駆け寄ろうとした。
「おっ飯か! ラッキーッ!」
「こりゃお主! 掃除道具を投げ捨てるな‼」
「わへ~、なんか厳しいなアイツ」
少年に叱られたケイは投げ捨てた掃除道具を片づけた手を洗い、ようやく食事にありつく事ができた。
ケイは団子を一つ掴んで一口食べると、その味にしばし疑問を抱いた。
「なぁ、これ薬じゃねぇのか?」
薬屋の息子だからこそわかる事なのか、ケイは少年が運んできた団子が薬のような味をしていたため、その団子が食事ではなく薬の類だと思った。
そんなケイの疑問に答えるように、少年は運んできた団子の説明をした。
「これはキザミの里に伝わる非常食でごじゃる。これ一個で一日分の食事になるでごじゃるよ」
「ふ~ん、ところでお前、名前なんて言うんだ? 俺は薬師ケイ」
団子の説明を受けていたケイは、名前がわからないのは不便だと思い少年に自分の名前を教えた後、少年の名前を尋ねた。
「セッシャは
「へえー、ヒバリっていうのか。そういや喋り方が古いな」
「おのれ! セッシャを愚弄する気か⁉」
「だー待て待て! だからなんで怒るんだよ! 人を殺す気かおい!」
喋り方が古い事を指摘した事で、またしてもヒバリを怒らせてしまったケイは慌ててヒバリを落ち着かせた。
ケイ本人はそんなつもりはないのだが、どうしてもヒバリを怒らせてしまい何が原因でヒバリが怒るのかわからなかった。
不意に遠くから離れていてもよく見える大きな滝が、ケイの目の中に移った。
「あの滝でけ~な」
「あの滝は里の名物、『キザミの
「そうなのか、すっげーなー」
ケイがいるキザミの里の由来が、今見ているキザミの滝からきていると聞いたケイは、眺めるようにキザミの滝を見ていた。その時だった。
(ん?)
キザミの滝を見ていたケイは、一瞬何かに呼ばれているような感じになったのだが、ケイは気のせいだと思い気にする事はなかった。
それから
そんなある日、里から出ないという事を条件に外出の許可を得る事ができ、ケイは迷わずキザミの滝に行こうとヒバリに案内してもらった。
ケイはもっと近くで滝を見たいと思ったからだ。
キザミの滝に着くとケイは思わず興奮してしまい、危うく落ちかけた。
「落ち着くでごじゃる、滝壺にのまれでもしたらひとたまりもないでごじゃるぞ!」
「ワリィワリィ。にしても、近くで見ると予想以上にでかいんだなぁ」
そう言った直後だった。
(え…?)
ヒバリの実家にいる間に感じていた何かに呼ばれているような感じがした。
それは前よりも強いもので、ケイが滝壺の方に視線を移すと、呼ばれている感じは更に強い物になった。
(滝壺に、何かあるのか?)
「ケイ、どうしたでごじゃるか?」
何かに呼ばれているような感じがする原因が、滝壺にあると感じたケイは一体何があるのかと滝壺を凝視した。
ケイの様子が可笑しい事に気付いたヒバリは声を掛けたが、今のケイにはヒバリの声は全く聞こえてはいなかった。
自分を呼ぶ何かの正体が滝壺にある事に気付いたケイは、その正体を確かめるべくそのまま滝壺に向かって飛び込んだ。
ケイの予想外の行動に驚いたヒバリは慌ててケイの名を呼んだ。
「ケイ? ケイ⁉ ケイィーッ!」
*****
地上でヒバリが混乱している頃、滝壺に飛び込んだケイはそのまま息づきもしないで底の方に向かって泳いで行った。
するとケイは底の方に光る何かを見つけて近くまで泳いで行くと、そこにあったのは羽の生えた雫の形をした石があった。
(間違いない、俺を呼んでたのはコイツだ!)
それこそが自分を呼んでいる何かの正体であると確信したケイは躊躇わずにその石に触れた。その瞬間、石が光始めた。
それはヨキが風車の形をした石に触れた時と似ており、石は形を変え斧になり、右腕にヨキの右腕にある痣のような模様が現れた。
斧に姿を変えた石はそのままケイの手の中に納まり、ケイは斧を手に地上に向かって泳ぎ始めた。
*****
地上では滝壺に飛び込んだケイの事を心配していたヒバリが、いまだに上がってこないケイが心配で飛び込もうとしていた。
丁度その時だった。
「プハッおーい、ヒバリー!」
「ケッケイ…!」
ケイが無事だった事に安心したヒバリは泣きそうになりながらもグッとこらえ、すかさずケイの近くまで降りた。
ケイも斧を手に持ったまま、ヒバリがいる岸まで泳いでいき無事を伝えようとした。
「ケイ! 心配したでごじゃるよ! 急に飛び込むなど自殺行為でごじゃる‼」
「ワリィワリィ。それより見ろよ! これさっきまで石だったんだぜ!」
「えっその斧がでごじゃるか?」
滝壺に飛び込んだソラが無事戻って来たと思ったら、ケイが訳の分からない事を言ってきたためヒバリは困惑した。
ケイは手に持っている斧をヒバリに見せながら、笑顔で斧を手に入れた経緯を話したのだが、それを聞いたヒバリはとても信じられないという顔をしていた。
ケイは面白そうに話を続けた。
「それだけじゃないぜ、見ろよこれ! 右腕になんか模様が出てきたんだ」
「そんな馬鹿な! そのような事が起きるなんて…、兎に角一旦帰るでごじゃるぞ」
ケイの話を聞いて心配になったヒバリは、ケイと一緒に大急ぎで実家に向かって走って帰るのだった。
ヒバリの両親はヒバリの話を聞き、ケイの右腕と斧を見てよく分からない事を言った。
「まさか、『アクアシーフ』の生まれ変わりと出会うとはな」
「えっ?」
「アクアシーフ⁇」
二人は全く理解できなかった。ヒバリの両親はケイが持つ斧と右腕に現れた模様について心当たりがあるらしく、ヒバリは両親に尋ねた。
「父上、母上、アクアシーフとは何なのでごじゃりますか?」
ヒバリは両親の口から出てきたアクアシーフという言葉が何を示すのかを尋ねると、ヒバリの父親はアクアシーフという言葉が何を示すのかを説明し始めた。
「アクアシーフ、それは三千年前にヘルシャフトを封印した『スピリットシャーマン』という種族の一つ、そして六百年前に滅びた者達だ」
「村を襲った奴等を封印した⁉ どういう事だよそれ⁉」
恵みの村を襲ったヘルシャフト達を封印した種族と聞いたケイは、更に訳が分からなくなり混乱してしまった。
それをみたヒバリの父親は
「詳しくはこの巻物に書いてある」
二人は慌てて巻物に書かれている内容を見た。
そこには三千前に起きた出来事、ヘルシャフト、スピリットシャーマン、そして六百年前の事が描かれていた。
「六百年前に突如ヘルシャフトが復活したのをきっかけに、アクアシーフ、アイスアサシン、そしてウィンドウセイジの三つの種族が滅んだそうだ」
「そのような事があったとは」
「けど運良く生き残った『ナチュラルトレジャー』と『ファイヤーファントム』だけじゃヘルシャフトを倒せねぇじゃん!
どうしたらいいんだよ⁉」
三千年前の出来事が書かれていた巻物とヒバリの父親から聞いた話から、生き残ったナチュラルトレジャーとフレイムファントムのだけではヘルシャフトを倒す事ができない事がわかったケイは、どうするべきなのかとヒバリの父親に問いただした。
ケイの問いに対し、ヒバリの父親の代わりにヒバリの母親が答えた。
「その事についてはこのように書かれています」
ヒバリの母は懐から巻物を取り出し、その巻物を広げた。
「アクアシーフの最後の一人はこの里に逃げ伸び、水の礎をこの里の何処かに隠したと」
巻物にはまだ続きが書いてあった。そこには意外な事が書いてあった。
________________________________________
例えスピリットシャーマン滅びたとしても、その魂必ずや来世で転生し、魂に刻まれし運命を受け継ぐであろう
________________________________________
その巻物に掛かれていた一文の意味が何を意味しているのか理解できず、ケイは余計に混乱した。
「えっどういう事だ、これ?」
「スピリットシャーマンが全て滅んだとしても、その魂は必ずや転生して刻まれた運命と共にこの世に舞い戻るであろうと書かれているのです」
「転生、生まれ変わるという事でごじゃるか?」
「そして言い伝え通り、アクアシーフの生まれ変わりが現れた。キザミの滝に隠されていた水の礎と共に」
そう言いながらヒバリの父親はケイの方に視線を向けた。
ケイは自分の周りを見たが、ヒバリとヒバリの両親以外には誰もいないため、ヒバリの父親が言うアクアシーフの生まれ変わりが自分であるという事に気付いた。
「そっそれが俺⁉ 俺が
自分が持つ斧が水の礎であり、自分自身がかつてヘルシャフトを封印したアクアシーフの生まれ変わりだと知ったケイは、とても驚き、大声で叫んだ。
ヒバリの父親はケイがアクアシーフとして、ケイが今なさなければならない事を話し始めた。
「ケイ、お前は旅に出て残るナチュラルトレジャーとファイヤーファントムの子孫を探しだし、礎に選ばれた者達と共にヘルシャフトを封印しなければならない」
「ヘルシャフトを封印しなきゃどうなるんだ⁉」
「……それはわからぬ。滅びるかもしれぬし、そうではないかもしれない」
そう言われたケイは無言で立ち上がった。そして不意に口を開いた。
「そうと決まればさっさと行かねぇとな、ヨキとマリが危ないかもしれない」
ケイは迷う事無く、ナチュラルトレジャーとファイヤーファントムの子孫を探す事を決意した。
それからすぐに部屋に戻り、旅の支度を始めた。
ケイが旅の支度をしていると、あとからヒバリ部屋に入ってきた。
「ケイ、これからどうするでごじゃる?」
「わかんない」
「わからないって、行く当てもないのに旅に出つもりでごじゃるか?」
「まぁ、そうなるかな~?」
ナチュラルトレジャーとファイヤーファントムを探す旅に出るケイの身を案じるヒバリに対し、ケイは何も考えていないのか、軽く返事をして荷物の確認をしていた。
ケイが何を確認しているのか気になったヒバリは、ケイの背後から覗き込むようにしてみると、座り込むケイの目の前にあったのはからの小瓶や包帯、幾枚かの布に置かれている乾燥した薬草だった。
それらを見ただけでケイが確認していたのは治療用の道具である事が分かったが、何故それらを用意していたのかわからなかったヒバリは、ケイに治療用の道具を用意していたのかを尋ねた。
「ケイ、お主が今確認しているのは医療用の道具に見えるが、何故それらを用意する必要があるのでごじゃるか?」
「あぁ、これか? これは俺がいつも持ち歩いてる道具なんだ」
「ケイの持ち物でごじゃるか? しかし、持ち歩く量にしてはいささか多いような…」
ケイが確認してた医療用の道具は、元々ケイが持ち歩いている者であると知ったヒバリだったが、一人で持ち歩くにしてはどうも量が多いように見えた。
そんなヒバリの疑問に対し、ケイは恵みの村での日常を話し始めた。
「俺ん家さ、家族で薬屋やってんだよ。
でもって俺が生まれた恵みの村は山の中にあるからさ、狩猟とか山菜取りとかで怪我する事が多いし病気とか体調不良の人とかも出たりするからさ、そうなると俺らがすぐ容体確認したり、手当てしないといけないんだ。
でも村には病院とかないから俺の家族が治療する事になってて、家族全員医療用道具を持ち歩いて、何が起きても対応できるようにしてるんだ。
旅に出るとなると、その先でヘルシャフトのせいで傷ついた人達がいるかもしれないならさ、少しでもそういった人達の力になりたいんだよ」
恵みの村での日常を話しながら、これから起こるであろう事や背合う人々の事を考えながら、道具や薬草を一つ一つ確認しながら鞄にしまっていくケイの顔は真剣な表情をしていた。
そんなケイの表情を見たヒバリは、ケイはケイなりにこれからの事を考えているのだと悟った。
そしてケイの決意は揺らぐ事はないとも感じた。
(しかし、このままケイを一人で送り出してもよいのじゃろうか…?)
ケイは恵みの村やキザミの里以外の事を全く知らない。
わかりやすく言うならば、ケイは外の世界というものを全く知らないという事になるのだ。
そんなケイを送り出す事に対し、ヒバリはいささか不安を感じていた。
どうするべきかと考えている内に、いっその事、自分もケイに同行しようと考えたヒバリはすぐさま両親の元に行き、自分の考えを伝えるとヒバリもまた自室に戻り旅の支度に取り掛かった。
「これは?」
「その巻物にはスピリットシャーマン共通の法術とアクアシーフのみ使える法術が描かれている」
「それを読み、法術を使うとよいでしょう」
受け取った巻物にスピリットシャーマンが使える法術とアクアシーフのみが使える法術が書かれている巻物を受け取ったケイは、巻物を鞄にしまい斧を腰に掛けると、傍にいたヒバリがケイに声を掛けてきた。
「セッシャも共に旅に出て力を貸すでごじゃるよ」
「ヒバリ……あんがとな! よーし早速行こうぜ!」
こうして、ケイとヒバリはナチュラルトレジャーとファイヤーファントムの子孫と、ヨキとマリを探す旅に出るのであった。
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