第6話 メガネクンを呼び出してっ★
あっという間に年末が近づいてくる。
仕事も忙しくなり、残業が多くなる。
隣の席の水野さんも疲れているのか背伸びをしながら肩を回したり首を回したり…。
「…水野さん肩でも揉んであげようか?」
水野さんは苦笑する。
「ううん…ありがとう。帰ったら透にして貰うから。」
…透クンが嬉しそうに水野さんの肩やらおっぱいやらを揉む姿が目に浮かぶ。
…利害の一致ってやつね。
水野さんはマッサージされて気持ちいいだろうし透クンは大好きな水野さんの身体に触られて幸せなんだろうな…。
「相変わらずラブラブなのね。」
「…そうでもない…かな。多分最近透私に…飽きてきちゃったのかも…。あんまり触ってくれないし…。」
…なんだと!?
こんな可愛い子と結婚しておきながら…。
透クンが憎らしい…。
「…でももうすぐ冬季休暇に入るからゆっくり透と過ごせるといいな…。でも透…私なんかと一緒に居たいと思ってないかもしれないし…。」
俯いてしまった水野さん…。
…そう言うことなら確か良いものが売ってる場所を私は知っている。
★
今日を乗り切れば仕事納め!12月24日の本日はクリスマスイブだ。
心なしか朝から水野さんがそわそわとしている。
時計を見てはため息を吐き…。
…早く帰りたいのかしら。
…まあそうよね。
透クン待ってるだろうし。
ましてや今日はクリスマスイブだ。
透クンご馳走作って待ってるんだろうな…。
「水野さん透クンへのクリスマスプレゼント何にしたの?」
そう聞くと水野さんは嬉しそうに笑う。
「透に似合うセーター見つけたから、お揃いで買ったんだっ」
…何よラブラブじゃない。
でも最近元気なかったし水野さんの笑顔が見れて安心した。
★
仕事終了間近と言う時、嫌なものが目に入ってしまった。
…女の子が…泣いている。
…っていうかまだ仕事中に…何やってるんだか…。
何があったのかは知らないがお仕事そっちのけで…。
まあ身内が亡くなったとかなら仕方ないけど…。
…めんどくさいなぁ…。
見なかったことに…。
と思ったのだが事もあろうに水野さん声を掛けに行ってる。
あれやこれやという間に水野さん女の子に泣きつかれてしまい勤務終了時刻。
私はさっと仕事を片付けて、机を片付ける。
「水野さん、帰ろう?」
そう声をかけるが困ったように女の子を慰めている水野さん。
…あんなに早く帰りたがっている様子だったのに…。
★
街はクリスマスムード全開だった。
大きなクリスマスツリーにキラキラ輝くイルミネーション。
…水野さんと2人っきりだったら良かったのに…。
…隣を歩く水野さんを見る。
…さっきから多分透クンに電話をかけてるみたいだけど…。
…再び携帯を眺めているあたり、連絡つかなかったんだろうな…。
水野さんと目が合う。
「…浅川さんごめんね。今日は浅川さんだって早く帰りたいよね?…浅川さん無理しないで帰って良いよ?」
いらない心配をしてくれる。
「私はもともと何も用事なかったからむしろ水野さんと呑めるのは幸せよっ。水野さんこそ透クン待ってるでしょ?」
「…でも…放って置けないよ。」
水野さんの更に隣にいる女の子を眺める。
…。
めんどくさいなぁ…。
何とか3人座れる居酒屋に入る。
「浅川さん…本当にごめんね。」
…何も悪くない水野さんに謝られる。
「水野さんいいって。もし何かお詫びをしてくれるんならまた2人で呑みに行こう?」
そう言うと水野さんは笑ってくれた。
…本当かわいいな…。
…透クンは憎いけど、水野さんは早く帰してあげたいっ!
注文したお酒が来たので呑み始める。
あまり他人の色恋沙汰に興味はなかったので携帯電話をいじる。
…水野さんの恋バナなら興味あったけど。
…あいつ今何してるのかしら…。
…誰かと過ごしてたりするのかな…。
それともあの部屋で1人で居るんだろうか…。
なんだか無性に逢いたくなってしまった。
…どうせならここに呼び出して代わりに水野さん帰すか…。
泣いていた女の子はくだらない色恋沙汰の末フラれただけだったみたいだし、今度は代わりに水野さんの方が泣きそうな顔をしているし…。
携帯を持った水野さんがトイレから戻ってきた。
相変わらず透クンは電話に出ないようだ。
透クン何やってるんだか…。
もし水野さんを放って置いて浮気なんかしてたら本当…コロしてやるんだからっ!
「水野さんそろそろ帰ったら?透クンきっとご飯作って待ってるよ?」
「うん…でもっ…。」
心配そうに女の子を見る水野さん。
「水野さん今日はクリスマスイブだよ?早く帰らないと透クン…もしかしたら家に女の子連れ込んでるかもしれないよ?男なんてヤレる時はヤりたい生き物なんだろうし、透クンあの顔じゃあ女の子なんてよりどりみどりっ…!!」
「お前は何言ってるんだよ!」
背後から突然頬をつねられる。
まあつねるといっても優しいものだったが。
ってか早っ!
急いで来たのか少し息の上がった真実が立っていた。
「泉…代わるから帰れよ。俺が乗ってきたタクシー待たせてあるから。」
真実はそう言いながら水野さんが座っていた席に鞄を置く。
…こいつさりげないな。
こうなってしまったらもう水野さんは帰らざるを得ないだろう。
「っでも…。」
私を見つめる水野さん。
…もうっ!気にしないでいいのに…。
「水野さんこれあげるっ!透クンと仲良くネっ★」
可愛らしい紙袋に入った水野さんへのプレゼント。
水野さんは不思議そうな顔をしながら袋を開ける。
一緒に中を覗き込んだ真実がギョッとしたような顔をする。
「お前っこんなものどうして買ったんだよ?!」
「…どうしてって真実に使おうと思ってっ★」
そう言うと真実は慌てたように水野さんを送り出す。
「泉それ持って早く帰れっ!」
真実はタクシーまで水野さんを送っていくと戻ってきた。
さりげなく私から離れて椅子座った。
流石に女の子は真実と私の3人になると自分が邪魔者だと気づいたらしく、そそくさと帰ってくれた。
2人で改めて呑み直す。
「ねえ真実…呼び出さなかったらどうやって過ごすつもりだったの?」
「ん?今日か?」
真実が静かにグラスを傾ける。
「別に…普通に家で過ごすつもりだったけど…。でもなんとなくお前に誘われると思ってたからな…。」
真実がふっと笑う。
「…。」
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