8.ボクの可愛い彼女、マリカ

「なんであたしなんだよ。お前、モテない訳じゃないだろ?昨日も女振ってたし」

「仕方ないよ、ボクはマリカが好きなんだから」

「物好きめ」

「そうかもね」

「なんだとっ?!」


マリカの言うとおり、ボクは何故だか、男女を問わず好かれている。

それもこれも、ボクの『何の汚れも無い魂』のせいだとか。

マリカ曰く、近寄ってくる人達の中には、マリカの同類、つまり、人に化けた悪魔もいるとのこと。

でも、どんな魅力的な人がボクを好きになってくれても、ボクの気持ちが動くことは無かった。

おそらくボクは、ずっとマリカのことが好きだったんだ。

出会った時から、ずっと。


「髪、銀色のままで、良かったのに」

「アホか。そんな奴、お前の周りにいないだろ」

「瞳だって、赤いままでも」

「寝言は寝て言え」

「なんなら、ツノだって、そのままでも」

「バカなのか、お前は。あたしは悪魔だぞ?おいそれと、人間に正体なんか見せられねえんだよ!」

「でも、言葉遣いは、ちゃんとして」

「・・・・はい」


マリカは、ボクの2つ目の願いも叶えてくれた。

マリカは、ボクの彼女になった。

ボクと同い年の、同じ高校に通っている、同じクラスの女子高生の設定で。


「似合ってるよ、制服」

「はぁっ?」

「マリカ、可愛い」

「だーかーらっ!可愛いとか、気安く言うんじゃねぇっ!」


マリカは顔を真っ赤にして、大股で歩き出す。

ボクはその手を捕まえて、指を絡めた。


「なにしやがるっ!」

「手、つないでる」

「あぁっ?!」

「付き合ってるんだから、いいでしょ?」


マリカ、大丈夫かな?

ずーっと、顔赤いままだけど。


「誰のせいだと思ってんだっ!」


あれ?

もしかして、ボクのせい?


「うっさい、黙れっ!」


・・・・黙ってるんだけど、ねぇ?


思わずクスクス笑ったボクは、マリカに睨まれてしまったのだけど。

なにこの悪魔。

悪魔がこんなに可愛いなんて、反則じゃない?


「離せバカっ!」

「やだ」


ブンブンと暴れるマリカの手を、ボクはギュッと握りしめる。


「離さないよ、マリカ」


マリカがギョッとしたような顔で、ボクを見た。

出会った頃は、ボクより背も高くて、お姉さんだったマリカ。

今は、ボクの方が背も高くて、力も強い。

・・・・もちろん、本気を出したマリカには、敵うわけがないけどね。

なんたってマリカは、『すげー悪魔』なんだから。


「あんま調子に乗んじゃねえぞ」


ボソッとそう呟くように言って、マリカはおとなしく、ボクに手を委ねてくれた。


「どうかな。だってボク、マリカの彼氏だし」

「なにぃっ?!」

「一緒に色んなコト、しようね?」

「・・・・はぁ」


ため息はつくけど、拒否はしないんだ?

ありがと、マリカ。


「契約、だからな」

「マリカ、言葉遣い」

「・・・・はぁい」


ふてくされたような返事も、やっぱりすごく、可愛かった。

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