7.ふたつ目のお願い

「なによ」

「これでも食べて、落ち着きなよ」


マリカの前に、イチゴミルクのアメを差し出す。


「ふんっ」


と言いながらも、マリカはアメを受け取って、すぐに口の中に放り込む。

とたん。

不機嫌そうな顔が、少しだけ柔らかくなった。

マリカは昔も今も、イチゴミルクのアメが、大好きなんだ。

そーゆーとこ、やっぱり可愛い。


「で?なに?」

「ふたつ目のお願い。いい?」

「ああ、もちろん」


ベッドの端に軽く腰掛け、マリカはさして興味もなさそうに、足をブラブラさせている。

そうだよね。

マリカが興味があるのは、ボクの魂だけだもんね。

でもね、マリカ。

ボクはね・・・・


「マリカと付き合いたい」


マリカの足が、ピタッと止まった。

そのままゆっくりボクを見たマリカの目は、眼球が飛び出しそうなほどに、大きく見開かれている。

マリカの赤い瞳は、相変わらずとてもキレイだ。


「お前、バカなのか?」

「マリカ、言葉・・・・」

「うっせぇっ!」


マリカの顔が、みるみる内に真っ赤になってくる。

瞳の色と、同じくらいに。

あれ?

前にもこんなこと、あったような?

あ、そっか。

あの時マリカ、照れてたんだ。ボクにお礼を言われて。

今は、どっちだろう?

怒ってるのかな?

それとも。

照れてるのかな?


「呆れてんだよっ!」


マリカは大声でそう言ったけど。

ちょっと、怪しいなぁ。


「ああああたしがなんでっ、照れなきゃいけねんだよっ!」


うん、間違いない。

マリカ、照れてる。

可愛い。


「だまれっ!」


そう言われても。

・・・・ボク、さっきから一言も喋ってないんだけど、ね?


「ねぇ、マリカ」

「なんだよっ」


口を尖らせて、目を吊り上げて。

怒ったような顔で、マリカがボクを見る。


「お願い事は、3つまでなら、何でも叶えてくれる契約、だよね?」

「・・・・」

「お願い事を増やすとか、不死とか以外は」

「・・・・」

「マリカは『すげー悪魔』だから、何でも叶えてくれるって、ボクに言ったよね?」

「・・・・あーもうっ!」


両手で頭をクシャクシャとかき回し、マリカは唸っている。

その度に、綺麗な長い銀色の髪が宙を舞ってキラキラと輝き、ボクは思わず見とれてしまった。

いいなぁ、マリカの髪。

サラサラしてて、手触り良さそう。

触ってみたい。


「なぁ、あたしじゃなくて、お前の好みドンピシャの女と付き合わせてやる、ってのは、どうだ?」


ふと、マリカが顔をあげて言った。

さんざん考えて出た代替案が、それ?

ボクの好みドンピシャが、マリカだって言ってるのに。

マリカこそ、バカじゃないの?


「お前っ!あたしを誰だとっ」

「『すげー悪魔』の、可愛いマリカ」

「バっ・・・・可愛いとか、気安く言うんじゃねぇっ!」


ブチキレているんだか。

照れまくっているんだか。

多分、マリカ自身も分かってないんじゃないかな。

でもボク、正直どっちでもいいんだ。

だってもう、決めたんだから。


「マリカと付き合いたい。これがボクのふたつ目のお願いだからね、マリカ」

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