3.ケイヤクをしに来たお姉さん

コホン、とお姉さんが一回咳をした。


「お姉さん、ノド痛いの?アメ、食べる?」

「いらん」


そう言って断ったのに。

ボクが差し出したイチゴミルクのアメを見ると、


「せっかくだ、貰っといてやる」


と言って、イチゴミルクのアメを受け取って、口に入れた。

お姉さんがちょっとだけ、笑った気がした。

お姉さんも、イチゴミルクのアメ、好きなのかな。おいしいもんね。ボクも好きだよ。


「輝、あたしはお前と契約をしに来たんだ」

「ケイヤク?」


学校に行けないボクは、先生に来てもらって少しずつ勉強もしているけど、まだ習っていない言葉だった。

ケイヤクって、なんだろう?


「ん~・・・・参ったな」


お姉さんが困った顔をして考え込んでいる。

なんか、ごめんなさい。ボク、ケイヤクが分からなくて。


「うん、そうだ。ケイヤクとは、約束のことだ」


ポン、と手を叩き、お姉さんが言った。


「約束なら、ボク、分かる」

「そうか、それはよかった」


なんだか、お姉さんは嬉しそうだ。

ボクもつられて、嬉しくなる。


「で。あたしは輝と約束をしに来たんだ」

「どんな?」

「いいか、よく聞けよ?」


お姉さんの言葉遣いは相変わらず悪くてちょっと気になったけど、僕は黙ってお姉さんの言葉を聞いた。


「あたしは、輝のお願いを3つ叶えてやる。その代わり、3つの願いを叶え終わったら、お前の魂をあたしにくれ」


えっ?

3つも?

ボクのお願い、3つも叶えてくれるの?!

なんでも?!


「ああ。なんたって、あたしは『すげー悪魔』だからな。なんでも叶えてやる。ただし、願いの数を増やすとか、不死とかは、ダメだ」


お姉さんはそんなこと言ってたけど。

ボクは、そんなお願いなんてしない。

だから、お姉さんに言ったんだ。


「うん、いいよ」

「えっ?!」


お姉さんは、またびっくりした顔をしていた。

ボク、お姉さんを驚かせるようなこと、なにも言ってないと思うんだけど。

お姉さん、『すげー悪魔』なのに、ちょっと驚きすぎじゃない?


「お前、いいのか?ほんとに、いいのか?よく考えたのか?」


お姉さんから言い出したのに、なんだかお姉さんは、すごく慌てているみたい。

変なの。

だから、もう一回


「うん、いいよ」


って答えたのに。


「とっ、とりあえず、もうちょっと考えろ。また来るからな!」


そう言って、お姉さんは突然消えてしまった。

ドアも窓も開いてないのに。

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