第13話 番外編 シャロン

 私は色気があって美人なの。


これでも学院では求婚が相次いでいたのよ?


 私と付き合った男の子達は数多くいるけど、ウィルは一番爵位が高くて、金持ちで、格好良くて私の物にしたいって思ったわ。


最初は可愛い婚約者が居るからって断られ続けてたんだけど、無理矢理関係を持ったらイチコロだったわ。やっぱり私の魅力に虜になった。彼は伯爵家の跡取り。私が夫人になるのよ。だからウィルの婚約者は邪魔なのよね。


今度、婚約者の誕生日パーティーに婚約お披露目をするんですって。婚約者を潰す良い機会じゃない。


 私は当日、無理矢理参加してウィルの婚約者と初めて会った。磨けば将来絶対に美人になるような子だったわ。


悔しくてウィルとの仲を見せつけてやったの。ふふっ。面白かったわ。青い顔して倒れちゃうんだもの。そこまでは上手くいってたの。




 何故か伯爵家を継ぐのは弟になってしまった。ウィルは領地に籠るの?ウィルだけ楽してズルいわ。私もウィルと領地でのんびり過ごしたい。だから咄嗟にお腹に子がいると嘘をついたのよね。


何が悪かったの?


ウィルが平民に落ちちゃったじゃない!!


贅沢出来ないじゃない。


 実家に帰ると父は怒っていたわ。いつも私に大甘なのに。酷いわ。皆、私に意地悪をしているのね。



 それからのウィルとの2人暮らしは最悪だったわ。あいつ、何にも出来ないんだもん。服も脱がせるまで待ってたのよ?馬鹿だわ。食事も掃除も碌に出来ない。


ウィルは隣の夫婦と仲良くなって色々と教えてもらっていたけど、私はこんな所で仲良しごっこがしたいわけじゃないの!


町の警備兵?贅沢出来ないじゃない。こんな稼ぎのない男といつまでも一緒に居るなんて考えられないわ。お金を求めて食堂で働き始めたけれど、田舎にはもっさいヤツしか居なかった。


 夜の部になると客層が変わるのでチャンスね。私は美人を生かし、金持ちそうな男の所で酌をするようにした。男達はコロコロと騙されてお金を出してくれるし、面白かったわ。


 そんなある日、一人の金持ちが護衛と一緒に食堂にきた。男は貴族である事を隠しているようだったけれど、雰囲気や着てるものを見ると違うわ。


これはチャンスよ。


私は早速、男の隣に座り、酌をする。


「お兄さん、この町に何をしに来たの?」


「美人な君を見つけに来たんだ。僕は、君に一目惚れだよ」


チョロいわ。中々のハンサムだし、合格!


「嬉しいわ。私もお兄さんと仲良くなりたいわ。お名前は?」


「カイって言うんだ。君の名は?」


「シャロンよ。カイ、また貴方に会いたいわ」


「あぁ、僕もこの町に数日滞在しているから滞在中は毎日此処に来るよ」


やったわ!カイは約束を違える事なく毎日食堂へと来てくれたわ。毎日プレゼントを持って。歳下のカイは恋愛をした事が無いらしい。ふふっ。私の物ね。


「シャロン、僕はそろそろ王都に帰らないといけない。付いてきてくれるかい?」


「勿論!付いて行くわ」


「でも、君と暮らしている夫が居るんだろう?どうするんだい?離婚届は書いてくれないのかい?僕には君が必要なんだ」


「そうね…」


カイは私を必要としてくれているのね。ウィルをどうしようか考えあぐねていると、


「これを夫に飲ませるといい。楽に彼方へ行ける薬さ。ワインに混ぜるといいよ。早く君と一緒になりたい」


カイは私の事をそこまで考えてくれていたのね。


「分かったわ。飲ませた後、私も王都に向かうわ。王都の宿屋で落ち合いましょう?」


「待っているよ。マイハニー」


 仕事終わりにワインを買って帰り、薬を混ぜて、ウィルに飲ませる。何か気づいたみたいだけど、もう遅いわ。ウィルが動かなくなったのを見て怖くなり、急いで荷物を纏めて家を出た所で、



ピィーー。


警笛の音と共に兵士が私を取り押さえる。


「何!?何で私が取り押さえられるの!?」


「匿名でお前が旦那に毒を盛ったと話が来た。その荷物は何だ?家の中を調べる」


兵士は家に入ると、ウィルが横たわる姿を見つけた。嘘よ!何でこんなに早く足が付くの。


「お前を殺人犯として逮捕する」


「ち、違うわ!私は言われてやっただけよ!!」


私の話を聞かずに兵士達は私を引きずり、牢屋に入れた。何時間経ったのだろう。暗い牢屋では時間も分からなかった。


「お前の刑が決定された。罪名は殺人未遂、貴族への詐欺・横領である。よって明後日、処刑を取り行う」


「嘘よ!!!」


あいつ、死んでなかったのね。


「カイは?カイと話がしたいの。彼は貴族でこの町に滞在しているはずよ!!」


「調べてみたが、カイと言う者はこの町にはいなかった。虚言もいい加減にしろ」


看守が私を殴りつける。どうしてこうなったの。私は何も悪くないわ。悪いのは稼ぎの無いあいつよ。処刑の時間が迫ってくる。


私は悪くない、悪くない、悪くない。


「お前の最後の面会だ」


看守がそう言うと出て行った。代わりに牢屋に入ってきたのはカイだった。


「カイ!助けに来てくれたの?嬉しいわ!早くここから出して!・・・カイ?」


「ぷっ。あはは!あー面白かった。お前、馬鹿だよね。本当に卑しい女だ。兄さんも何でこんな女に引っかかったのかな。最後にいい夢が見れただろ?良かったな」


「兄さん・・・?貴方、ウィルの弟?」


「お前気づいて無かったよな。笑える。あぁ、死ぬ前に教えておいてやるよ。兄さんに飲ませた薬は痺れ薬と睡眠薬だ。これから兄さんには働いて貰わないといけないからね。お前が邪魔だったんだよ」


そう言ってカイは笑いながら牢屋から出て行った。私は最後の最後で騙されていた事を知り、絶望したわ。


もう、誰も私を見てくれない。


助けてくれない。


数時間後、私は看守に最後を看取られた。


【シャロン編 完】

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る