第14話 番外編 ララ

シャロンお姉様が平民に落とされた?私がその話を聞いたのはつい先日。


「どういう事なの!?お父様!お姉様は何故?」


いつになく疲れた顔のお父様は忙しそうにしていた。


「シャロンはな、公爵令嬢の誕生日パーティーに参加し、公爵令嬢の婚約者、ウィル・モリス伯爵子息と不貞を犯した上で二人で誕生日パーティーを潰したんだ。


シャロンが公爵令嬢とウィル・モリス伯爵子息の婚約を破棄させてしまった。シャロンは伯爵家で子供がお腹の中にいると言って別れるのを嫌がったようだ」


なんで?わかんないよ。お姉ちゃんはいつも恋人と仲良く過ごしていただけでしょう?恋愛なんて自由じゃない。


大好きなウィルさんと仲良くしちゃいけないの?大体、貴族なんて妾やら愛人やら沢山いるじゃない。綺麗で愛されているお姉ちゃんが本命で公爵令嬢がお飾りの付属品でしょ。


 公爵令嬢の方がウィルさんを好きで権力を盾に婚約者に迫ったってお姉ちゃんは言ってたわ。悪いのは公爵令嬢の方よ!!


 私はお父様に黙ってこっそりとサハル村へと向かった。お父様が渡した家の近くまでくると、お姉ちゃんとウィルさんの喧嘩が聞こえてきた。


私は慌てて隠れ、窓から覗くと、そこには生活に疲れているお姉ちゃんがいたわ。化粧もせず、薄汚れた服。髪の毛もボサボサ。なんて可哀想なの。


私は居た堪れずにそっと邸に戻った。


 お姉ちゃんを平民に落とした公爵令嬢になんとかギャフンと言わせたいわ。学院の入学式に彼女はいた。隣の席にいた人に聞くと最近婚約破棄された令嬢はルナ・ブラウン公爵令嬢だという。


彼女はSクラスで、男の人しか居ない中で勉強しているらしく、男達はこぞって彼女に声をかけているらしい。


何よ!男にモテるって自慢したいの!?




 ある日、食堂でお昼を食べようと、テラスを通りかかるとルナ・ブラウンがいたわ。見るだけで腹立たしい。一言でも何か言わないと私の気が収まらないわ。


「ルナ様はいい御身分ですね!いつも、いつも男を侍らせて!そんなのだから婚約者に捨てられるんですよ!」


一応、格上の貴族だから様付けで呼んであげるわ。言ってスッキリしたけど、言い返されたわ。なんなの、あいつ。リーヴァイ様やセオ様、レオ様まで婚約者候補に立候補とか、あり得ないわ。


皆に笑われ、ムカついたからその場を出て行ったけど、もっと言うべきだったわ。これじゃ、お姉ちゃんは酷い扱いのままだし、外聞も悪いわ。


あーイライラするわ。


 お父様もお姉ちゃんが平民に落ちてからげっそりしてる。やっぱりちゃんとあいつに言うべきよね!お姉ちゃんの仇を討たないといけないわ。


でも、殺したり、傷付けたら私が捕まっちゃうわ。そんなのは嫌よ。いい事思い付いたわ。あいつは食堂のテラスによくいるし、皆の前で恥をかかせちゃえ。



ーバシャー



あいつに向かって水を掛けた。


驚いて振り返るルナ。あーいい気味だわ。


「ははっ!良い格好ね!!あんたのせいでおねぇちゃんは平民になったのよ!ウィル様だって勘当されて今、平民として暮らしているんだから。あんたなんか居なくなればいいのよ!」


痛いわ。


なんで私がオリバー様に取り押さえられているの!?守衛が私を引きずって職員室へ連れて来られた。


 学院長は難しい顔をして私を謹慎させると言っていたわ。家に帰るとお父様がとっても怒っていたわ。お前まで何て事をしてくれたんだと。


それから私はすぐ学院を退学となった。ブラウン公爵家とモリス侯爵家から抗議が来ていたのだ。私は分からずお父様に訴えてみたが、お父様は逆に怒るばかりだった。


そして、親族一同が集まり、会議を開く事になった。その会議の場で詳しく説明されて私はようやく理解したの。


ごめんなさい。


私は皆に謝ったわ。


馬鹿だった。


 紛糾した親族会議。お父様は男爵位を弟に譲り、お父様は平民として小さな商会の長となった。私もお父様に付いて行く事にしたの。


貴族と婚約してもらいたいとお父様は願っていたようだけど。着飾る事はもう出来ないけど、仕事の大変さや遣り甲斐を見つけたわ。


 お父様と二人三脚でやっていると、親族からの一報が。どうやらお姉ちゃんはウィルさんを殺害しようとして捕まり、殺人未遂と横領等の複数の罪で処刑となったみたい。


優しくて、美人で大好きだったお姉ちゃん。


どうして道を間違えてしまったの。


涙が止まらない。


 お姉ちゃんの事は、私とお父様に暗い影を落としたわ。従業員達には見せないようにしているけれど。


 お父様と二人きりになると会話も少なく、互いに暗い表情となる。私はお父様と気分を変えるべく、冗談を言ったりするけれど、お父様も辛そう。


 そんな中、従業員のサイモンが私を一生懸命励ましてくれた。毎日毎日、戯けてみせたり、私にそっと寄り添ってくれたの。


サイモンは従業員としても優秀でお父様も、私も、色々と救われたわ。お父様もサイモンを認めてくれ、ようやくサイモンと結婚する事になった。サイモンと知り合ってもう4年になる。


「サイモン、私でいいの?色々と訳ありで面倒な女よ?」


「俺は家族も居ない。たった一人きりで生きてきたんだ。ララが訳ありの令嬢だって従業員達は皆知ってるさ。でも、ララも親父さんも頑張って働いている姿も知っている。

俺は直向きに頑張る姿のララを好きになった。ララ、愛しています。一生涯、ララだけを愛し続けます。どうか、僕の伴侶となって下さい」


「…サイモン。ありがとう。こんな私で良ければ、お嫁さんにして下さい」


 ささやかではあったけれど、お父様や従業員に見守られ結婚式を挙げる事が出来た。


馬鹿な私を支えてくれた従業員のみんなやサイモン。お父様。


本当にありがとう。



【ララ編 完】

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