第8話
次の日はレオ様が学院の玄関前で待っていた。
「ルナ。今日は俺だ。宜しくな」
少し赤くなっている顔。ぶっきらぼうに差し出された手をそっと取る。
レオ様は3人の中で一番無口な方。だけれど、薬学の道への熱意は凄い。才能もあるため、王宮医務室からはもう既に声をかけられているのだとか。
お昼になると、レオ様は食堂のテラス側へと私をエスコートし、席に着きました。話す内容は薬草の話。ふふっ。婚約者候補と言うより、同志に近いかも知れないですね。無意識に笑っていたのか、
「どうした?面白い話だったか?」
「いえ。レオ様と話をしていると、将来は医務官同士になるのかなぁと思ったらなんだか微笑ましくて」
「俺はルナがやりたい事を優先させる。ルナが笑顔を見る事が俺の幸せだ。だからいつも俺の側にいて笑ってくれ」
レオ様の不器用だけれど、ストレートな言葉が私には嬉しい。耳まで真っ赤にしているレオ様。私もきっと今真っ赤になってますわ。
ー バシャ ー
横から水が掛かる。
振り向くと、そこにはララ・ヒル男爵令嬢の姿があった。
「ははっ!良い格好ね!!あんたのせいでおねぇちゃんは平民になったのよ!ウィル様だって勘当されて今、平民として暮らしているんだから。全てあんたのせい!あんたなんか居なくなればいいのよ!」
「オリバー」
レオ様が呼ぶと、どこからかオリバー様が来ました。私を見たオリバー様が珍しく顰めっ面でララ・ヒル男爵令嬢を取り押さえました。
「このまま守衛に引き渡せ。ヒル男爵へはブラウン公爵とモリス侯爵から正式に抗議させてもらう。ルナ、大丈夫か?無理はするな」
「オリバー様。私なら拭けば大丈夫ですわ」
ヒル男爵令嬢を取り押さえているオリバー様に言ってみる。が、そのままオリバー様は礼をしてヒル男爵令嬢を連れて食堂を出て行ってしまいました。
「ルナ、ずぶ濡れだ。それに、これのままでは風邪を引いてしまう」
そう言うと、レオ様は私をヒョイっと抱き抱え、歩き出しました。お、お姫様抱っこよね!?
「レ、レオ様。何処へ?」
「あぁ。医務室だ。風邪を引く前に薬を飲む事ができるしな。それに、濡れたルナの姿は唆る物がある。他の男に見せたくない。特に、リーヴァイやセオはダメだ。ルナに何をするか分からん」
抱き抱えられたまま医務室へ着くと、レオ様はそっと椅子に私を降ろすと、棚からタオルを出し、丁寧に濡れた髪をタオルで拭いてくれる。
レオ様はそっと髪を拭きながら私の頬に指が触れる。
「少し待ってろ」
レオ様は薬品棚から数種の薬草を出し、ビーカーで混ぜて沸かし、薬湯を作って渡してくれた。
ふふっ。ビーカーで作るところがレオ様らしいですわ。
「レオ様。有難う御座います」
薬湯を飲んでいると、リーヴァイ様とセオ様が医務室へ入ってきた。
「ルナ。大丈夫か!?」
「お二人ともわざわざ有難う御座います。私はこの通り、水をかけられただけですので大丈夫ですわ。」
「良かった。オリバーに聞いてルナの姿を見るまでは気が気じゃなかったんだ」
「レオ様の作って下さった薬のおかげで体もぽかぽかしてまいりました。レオ様、有難う御座います」
「それなら良かった。リーヴァイもセオも帰れ。今日は俺の日だ。濡れたルナを飢えたお前達にこれ以上見せたくない。授業も残り1時間だ。帰っても何の問題もない。ルナ、馬車まで送ろう」
リーヴァイ様もセオ様も不服そうにしていますが、レオ様が一睨みすると『分かったよ』と教室へと戻っていきました。
「有難う御座います。リーヴァイ様、セオ様。わざわざ有難う御座いました。私、嬉しかったです。」
レオ様は馬車まで送って下さいました。
家に帰ると早速、お父様からの呼び出し。オリバー様が我が家に連絡をしてくれていたようだわ。後でオリバー様にお礼を言わなけばなりませんわ。
テラに着替えをお願いして簡素なワンピースに着替え、お父様の執務室へ入る。
「お父様、ただ今戻りました」
「お帰りルナ。今日、ヒル男爵令嬢から水をかけられたそうじゃないか。正式に抗議をしたからもう大丈夫だ。あそこは何を考えているのだか」
「お父様、私は大丈夫ですわ。レオ・モリス侯爵子息様がすぐさま対応していただいたので」
「ふむ。それならいいが。そうだ。ルナ、この間の婚約者候補を絞るという事だったが、この中でどうだろうか?」
お父様から数名の婚約者候補リストを受け取り、目を通す。あら、
「お父様、このリストの中に気になる方がいますわ」
「そうか。今度は辛い思いをしないようにな」
「はい。お父様」
そう返事をして執務室から出る。少しのドキドキとまた人に裏切られるのではと猜疑心がせめぎ合う。
あの人ともう一度会って話をしようと思いますわ。
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