第7話

 次の日、学院の玄関前にいたのはセオ様でした。


「ルナ。おはよう。今日一日宜しくね。朝からルナを見ると幸せな気分になるよ。今日は僕と2人で一杯話をしよう。もっと君の事が知りたいんだ」


そう言いながら優雅にエスコートをしてくれるセオ様。リーヴァイ様もさることながらセオ様のエスコート姿にドキドキですわ。


私の心臓、持つのかしら。耐えて、頑張るのよ、私の心臓!



 授業中は普段と変わらず、皆様と話をしたり、勉強するのですが、お昼はセオ様と『食堂で昼食を一緒に食べよう』と誘われていたのでセオ様のエスコートで食堂へと向かう。私とセオ様は食堂の日当たりの良いテラス席へと座った。


席は空いていたけれど、何故か隣同士で座っています。セオ様との距離も近く、セオ様に見つめられると恥ずかしいわ。もちろん今日も向かい側にはオリバー様もいる。


「ルナ。今日の放課後は空いている?僕と街に出かけてみない?今話題のケーキ屋で新作のスイーツが出たらしいんだ」


「行ってみたいです」


私は街に数度しか行った事が無いのでとても嬉しいわ。新作のスイーツ、食べてみたい。


「よし。じゃあ、授業が終わったら一緒に行こうね。楽しみで今からワクワクしてしまうよ。あぁ、オリバーはついて来なくていいよ」


「分かりました。程々にお願いします」


「ルナ。今日は天気も良くってテラス席は居心地が良いね。このまま2人でのんびり過ごすのもありだよね。オリバー有難う」


オリバー様が持ってきたのは食後のお茶とデザートのクッキー。さすが執事科。


「ルナ、はい。あーん。ふふ。顔が真っ赤なルナ、可愛い」


セオ様はニコニコしながら私の唇にクッキーをそっとあてて口が開くのを待っている。


「もうっ。セオ様。揶揄わないで下さい。自分で食べられますわ」


「そう言う所も可愛いよ。ルナのモグモグする可愛い姿も見たいんだ。あぁ、ルナとこの時間がずっと続けばいいのに」


セオ様は恥ずかしげも無く甘い言葉を隣で囁いてきます。


「セオ様。ルナ様。午後の授業の時間が迫っています。お急ぎ下さい」


「…オリバー。有難う」


 私達はオリバー様に促され急いでクラスへ戻って授業を受ける。今日は午後1科目のみなので問題なく街に出かけられそうね。



「ルナ。帰る準備は出来たかな?さぁ、街に行こう」


セオ様は颯爽と私の手を取り、エスコートする様はまさに王子様そのものですわ。


 オリバー様はいつの間にか護衛の手配をしてくれていた。オリバー様凄い。玄関前では護衛と馬車が待機していました。私とセオ様は待つ事なく馬車に乗り込んだ。さすが執事科。


 セオ様と私は馬車の中で今、街で流行っている物やクラスの話をしながら目的地に到着するまで楽しく過ごした。


 店には程良く客がいたが、並ばずに入る事が出来た。店内は女性客向けの可愛い作りとなっていて、ネコ足テーブルと椅子や所々にお話や飾りがあしらわれていたわ。


このお店は男の人は入り辛そうね。セオ様はどこで知ったのかしら?


「ルナ。何を食べる?」


「このプディングというのを食べてみたいですわ」


私は沢山の種類があって悩んでいると、セオ様はその様子を見てふふっと微笑んでいたわ。


「僕は、チェリータルトにするよ」


セオ様はメニュー表を店員に渡し、注文をしてくれる。運ばれてきたケーキと紅茶。一口食べるととても美味しい。


「ルナ。美味しいね。口を開けて?」


セオ様にそう言われて、何も考えずに口を開けると、セオ様のタルトが口の中に。これって恋人同士がするという『はい、あーん』というやつよね??


あわわ。恥ずかしい。やってしまったわ。


「ルナ。顔が真っ赤だよ?ははっ、嬉しいな。また一つルナの可愛い顔を見る事が出来たよ。ルナと一緒に過ごすこの時間がいつまでも続けばいいのに」


「セオ様。私、恥ずかし過ぎて心臓が止まってしまいますわ」


「あはは。心臓が止まってしまったら僕がすぐさま人工呼吸と心臓マッサージをするから大丈夫だよ」


これまた死ねますわ。


私達は甘い言葉のやり取りをしながらケーキを食べ終えると、セオ様のエスコートでお店を出る。


「どこか寄りたい所はあるかい?」


「あ、あそこの雑貨屋さんに寄りたいですわ。」


目に入った雑貨と書かれているお店は優しい雰囲気に包まれている感じがするのは私だけでしょうか。


雑貨屋に入ると沢山の品物が所狭しと置かれており、小物入れからレターセットやノートまで目に映るものが全て新鮮に写りましたわ。


「ルナ。可愛い。これはどうかな?お揃いで万年筆ってどう?」


「セオ様。私とお揃いで良いのですか?セオ様は他のご令嬢方にも人気がありますし、嫉妬されてしまいますわ」


「ルナと仲が良いのは今更だし、何も言われないさ。むしろ僕の方がみんなに羨ましがられるよ。それはそれで良いね。よし、みんなに自慢してやろう」


セオ様はなんだか楽しそうに笑っていますわ。


結局、私とセオ様はお互いの万年筆を買うことにした。私はセオ様にピンクのリボンでラッピングされた万年筆を渡す。セオ様は私に青いリボンでラッピングされた万年筆を買って渡してくれましたわ。


 セオ様の優雅なエスコートで雑貨屋さんを出ると、そのまま馬車に乗り込み、邸まで送ってくれました。



あぁ。心臓が保って良かったわ。頑張ったね。私の心臓。

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