第6話

 お父様に先日のヒル男爵令嬢とのやり取りの話をしましたわ。その場は和かな雰囲気で終わり、冗談だと思いましたのに。


「お父様、この中から婚約者を絞る時間を下さい」


「そうだな。こんなに一度にくるとは思ってもみなかった。ある程度はこちらで絞るからルナは気の合う人を探しなさい」


翌日からは普段通りに過ごせると思っていましたが、どうやら違ったようです。





「おはよう。待っていたよ。朝からルナをエスコート出来るとは嬉しい限りだ」


学院の門の前で馬車を降りると、そこにはリーヴァイ様が立っていました。


「えっと、リーヴァイ様。どういう事なのでしょうか?」


「あぁ。ルナ嬢は聞いていなかったんだね。あの後、みんなで話し合ったんだよ。誰が一番君の婚約者に相応しいか。そこで君に選んでもらうべく、毎日交代で君の側にいる事になったんだ。今日のエスコートは僕。宜しくね」


私はそのままリーヴァイ様のエスコートでクラスへ。途中、御令嬢達の視線はリーヴァイ様と私に向けられていました。私、普段を装いながらも恥ずかしさできっと顔が真っ赤だったのかも知れません。クラスでは変わらず皆様は接して下さいましたわ。 



 午前の勉強も終わり、お昼はいつものようにテラスで皆様と食べようと席を立ちましたが、リーヴァイ様から声がかかりましたわ。


「ルナ嬢。今日は中庭で一緒に食べないか?」


リーヴァイ様の誘いを無碍にしてはいけません。リーヴァイ様、笑顔が近いです。あぁ。内心、心臓がいつ止まるか分からないほどドキドキしてますわ。


 私はリーヴァイ様の優雅なエスコートで中庭に到着。花が咲き誇る一角にあるガゼボで昼食を摂る事となりました。


「リーヴァイ様。急に。どういう風の吹き回しでしょうか?」


「どういう風の吹き回しとは?ああ、今まで誘わなかった理由かな。


僕は入学初日からルナ嬢とお近づきになりたいと思っていたんだよ?だが、他にもルナ嬢と仲良くなりたい子息が沢山いてね。


抜け駆けしないように協定を結んでいたんだ。だが、セオがあの時抜け駆けして君に婚約を申し込んだ。それだけの事さ」


「フォレ…リーヴァイ様」


「なぁにルナ嬢」


「リーヴァイ様は見目麗しく、他の御令嬢からも人気があり、選びたい放題ですわ。私に気を遣って下さらなくても大丈夫ですのに」


「ルナ嬢」


「はい」


リーヴァイ様がぐっと至近距離で手を握り、


「よく聞いて?僕は、一目見た時からこの人だ!と思ったんだ。ルナは美しく、聡明で優しい。話せば話すほど君の素晴らしさに溺れてしまっている自分がいるんだ。将来、君を夫人として迎えたい。他の令嬢では駄目なんだ。君と共にいたい」


「あっ、あの」


こんな至近距離であ、愛の告白!?ど、どうすればいいのかわからず、視線が泳ぎます。


「リーヴァイ、そこまでだよ」


振り向くとそこにはセオ様とレオ様が立っていました。


「セオ、レオ。今日は僕の日のはずだが?」


「ルナ嬢を見てみなよ。困ってるよ?僕達は君が暴走しないように来たんだよ」


セオ様が距離の近くなった私とリーヴァイ様の間にグイグイと入って私達の距離をあけました。


どうやら二人は少し離れた所から様子を見ていたようです。


「オリバー。君に頼むのが一番いいね。ルナとなるべく行動をお願いしようかな。頼んだよ執事君」


「了解しました。ルナ様、リーヴァイ様。お茶が冷めていますので新しいものをどうぞ」


リーヴァイ様からは舌打ちが聞こえたような気がしますわ。セオ様もレオ様もオリバー様を残してまた何処かへ行ってしまわれました。


気を取り直したようでリーヴァイ様は和かに私に話しかけてきます。


「ルナ。今度の休みは空いているかな?一緒に遠出しない?」


「リーヴァイ様。あ、空いておりますわ」


「ルナと遠出が出来ると思うと今から楽しみだよ」


リーヴァイ様と遠出。ドキドキしてしまう。



なんだか嬉しくもあり、恥ずかしい気持ちですわ。

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