第9話 リーヴァイ エンド

 ようやく来た週末。リーヴァイ様は私の邸へと馬に乗り、やってきた。馬に乗るその姿は凛々しく後光が差しているようですわ。


私はリーヴァイ様に見惚れてしまう。学院での制服姿のリーヴァイ様も素敵だけれど、私服姿のリーヴァイ様も素敵。


「ルナ。迎えに来たよ。制服姿のルナも可愛いけれど、私服姿は誰にも見せたくないほど、可愛いよ。さぁ、我が姫。参りましょう」


リーヴァイ様は馬から降り、従者に手綱を渡して私の側へ来てそっと手を差し出す。


「リーヴァイ様。私も同じ事を思っていましたわ。今日のリーヴァイ様も素敵すぎて私には勿体無いほどですわ」


「ありがとう。ルナに褒めて貰うだけでこんなにも嬉しいんだね。さぁ、ルナ。出発しようか。」


馬舎に2人で向かうと、従者が私の馬を連れてくる。


「アルケミスですわ」


私の自慢の愛馬。漆黒のボディに艶めく鬣。いつ見てもアルケミスに惚れ惚れしますわ。私が撫でるとアルケミスも目を細めて喜ぶ。


「素敵な馬だね。アルケミス。宜しく」


どうやらアルケミスはリーヴァイ様を気に入ったみたいですわ。鼻を鳴らしていますもの。2人とも馬に乗り、邸を出る。テラがお弁当を鞍に付けてくれたわ。


 馬に乗り、駆ける姿のリーヴァイ様は本当に王子様のようですわ。




しばらく行く道を進むと、森に入る脇道へと進む。


私の目的の場所はもうすぐね。森の中に少し拓けた所に湖がある。その湖は私のお気に入りの場所。散策路では無いため、木々が邪魔で馬車では残念ながら来れない。


 森の中を進んでいくと、先程までの緑一色の景色が一変する。一面に広がる湖の湖面は森の木々を鏡のように映し、そこに陽の光が差し込み、煌めいて神秘的な風景である。


「リーヴァイ様。着きましたわ。私のお気に入りの場所なのです。ここに人を連れてきたのは家族以外初めてですわ」


この風景を目にしたリーヴァイ様も流石に言葉を失っているわ。そうよね。神々しい、とはまさにこの感じなのだと思うわ。


「ルナ嬢。素敵だ。神秘の森の湖に降り立つ女神のようだ」


風景に私も入っているのでしょうか。それは嬉しくもあり、恥ずかしくもありますわ。


「リーヴァイ様、冗談でも嬉しいですわ。リーヴァイ様もす、素敵で私、見惚れてしまいますわ。こ、この辺でお茶にでもしましょう。」


私は恥ずかしさのあまり、リーヴァイ様から視線を外してアルケミスに付けた籠を取りに行く。リーヴァイ様と絶景を見ながらのピクニック、なんて素敵なのかしら。


「リーヴァイ様、お茶をどうぞ」


リーヴァイ様は差し出したお茶を口にしながら何か考えている様子。日頃、鍛錬や令嬢方に追いかけられ疲れているのかもしれないですわね。私もそっと隣でお茶を楽しみますわ。


徐にリーヴァイ様は私の方へ向いて跪き、ポケットから指輪を差し出す。


「ルナ。先日、キミに話した事。嘘偽りは無いんだ。一目見た時から美しい君に僕の心は囚われたままだ。もっともっとルナを知りたい。側にいたい。僕と婚約して欲しい。素敵なルナと出来るなら今すぐにでも結婚したいんだ」


「私はきっと嫉妬深いですわ。浮気は許しません。それでもいいのですか・・・?」


「ああ。もちろんさ。今もルナしか僕の瞳には入ってこない。これからも僕にはルナだけだ」


「リーヴァイ様。リーヴァイ様にどんどん惹かれている私がここにいます。もっとリーヴァイ様の事を知りたい。もっと貴方の近くに居たい。そんな私で良ければ、嫁にもらって下さい」


そう言って差し出された指輪を指にはめる。嬉しくて涙が出てしまったわ。リーヴァイ様がそっと私にキスを落とす。2人とも耳まで紅葉色だわ。


そこからは、ふわふわの柔らかい夢心地で優しい時間を過ごしてから邸に戻った。


 邸に戻ったその足で父の執務室に行く。2人で父へ報告をすると、父は喜んでくれたわ。すぐに公爵家へ連絡し、数日後には婚約の話が纏まった。


 実際問題、政治的な意味合いの多い結婚。公爵家同士の婚約は中々難しく、破談になる事も多いのだが、今回は両家とも問題なく婚約となって良かったわ。


婚約発表を行うと、セオ様もリオ様も祝福してくれた。リーヴァイと喧嘩したら俺んち来いって。セオ様らしく祝福してくれたわ。




 それから私達は学院卒業と同時に結婚し、私は王宮医務官として働いているの。


リーヴァイ様は騎士団へ所属し、持ち前の才能でとんとん拍子に副団長まで上り詰め、日々部下と忙しく鍛練に励んでいるわ。


お義父様はまたまだ元気で、現役公爵のため引退するまではリーヴァイ様は公爵様の補佐をしつつ、騎士として王宮で働く事にしたみたい。


私はというと、毎日、朝はリーヴァイ様と一緒に出勤。医務官として騎士団の医務室で騎士様達の不満を聞いているの。少し大きくなったお腹をさすりながら。




【リーヴァイエンド完】

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