第4話
なんとか初日を終えましたわ。まだ自己紹介と、オリエンテーションしかしていないのに。ぐったりしながら馬車に乗り込み、帰宅する。
自室でテラにお茶を淹れてもらい、飲んでいた。やっぱりステラの淹れてくれたお茶は癒しだわ。私はゆっくりお茶を楽しんでいると扉がノックされる。返事をした後、扉を開けるとそこには心配そうな顔をしたお兄様が立っていた。
「ルナ、学院はどうだった?」
「アーロお兄様。まだ分かりませんわ。ただ、クラスで女子は私一人だけでしたので寂しいです」
「ルナ。ルナは清楚で美人で魅力的だから男子には気をつけるんだよ?」
「ふふっ、お兄様ったら。冗談が上手ですわ。私が魅力的なのではなくて公爵の肩書に魅力があるのではないでしょうか?」
お兄様と話をした後、疲れてベッドで少し横になっている間にいつの間にか寝てしまっていましたわ。外を見ると少し明るくなっている。もう!テラったら起こしてくれても良かったのに。
ぐっすり寝たおかげでスッキリと目覚め、頑張って一人で入浴。テラのお世話にならずに制服に着替え、食堂へ向かう。食事は基本的に家族皆で摂るのだが、昨日は夕食になっても起きてこない私を心配していたみたい。お父様達ごめんなさい。
さて、学院の準備も終えたので馬車に乗り、登校する。
「ルナ嬢、おはよう」
クラスに入ると皆が声を掛けてくれる。女子が一人だけという事もあり、色々気を遣ってもらえるのは有り難いですわ。
たまに騎士科の方がクラスの入り口から席までエスコートして下さったり、皆本当に優しくて良い雰囲気のクラスだと思います。
クラスでは文官科のセオ・クラーク伯爵子息や薬学科のレオ・モリス侯爵子息と行動やお昼を一緒にする事が多いですわ。
セオ・クラーク伯爵子息様とレオ・モリス侯爵子息様は二人とも王宮での勤務を目指しているだけあって話も合い、楽しく過ごせていますわ。たまにリーヴァイ・フォレスト公爵子息や執事科のオリバー・ベイカー子爵子息もご一緒になりますわ。
オリバー・ベイカー子爵子息様は執事科だけあって上手にお茶を淹れてくれます。皆様とは仲良くさせていただいておりますが、リーヴァイ・フォレスト公爵子息様がいらっしゃると他クラスの御令嬢の方々が周りを取り囲み毎回大変な事になっています。
見目麗しいリーヴァイ・フォレスト公爵子息様やセオ・クラーク伯爵子息様が毎回笑顔で御令嬢方を躱す姿には感動すら覚えますわ。
レオ・モリス侯爵子息様は無口なせいか、追いかける令嬢方も静かで、レオ・モリス侯爵子息様と少し距離を置きつつ、後ろをついて歩く感じです。レオ・モリス侯爵子息様は全く令嬢方を気にしていない様子ですわ。
皆様は気さく名前で呼んで欲しいと言われましたわ。初めて出来たお友達ですし、名前で呼ぶのは気恥ずかしいですわ。最初は難しくても呼ぶ練習をしないといけないですね!
そんなある日、いつものように皆様とテラスでお昼ご飯をいただいていると、一人の御令嬢がこちらの方へやって来ました。
「ルナ様はいい御身分ですね!いつも、いつも男を侍らせて!そんなのだから婚約者に捨てられるんですよ!」
突然の事で皆さん呆気に取られております。
「まず、貴方のお名前をお聞きしても?」
「ララ・ヒルですわ」
あの方のご家族でしたか。
「えっと、ヒル男爵令嬢様。まず、私は貴方とは初対面ですし、私の名前を呼ぶ事を許可した覚えはありませんわ。
次に、いい御身分ねと言われましても、確かに公爵という身分ですので、どうお答えすれば良いのか分かりません」
私は少し困った顔をしながら真摯に答える。
「そして男を侍らせて見えるとの事ですが、クラスで女子は私一人だけなのでこればかりは仕方ないのですが…。私はクラスに女子が増えてほしいと思っておりますわ。
婚約者の件に関しても、貴方のお姉様が、婚約者のいる方と逢引した上、私の誕生日パーティで呼ばれていないのに参加し、パーティで酷い暴言を受け私、とても辛い思いをしたのです」
私は寝込んでしまう程ショックを受け、ようやく立ち直ったばかりですのに。またあの時の辛さや悲しみが思い出され涙が出そうになるのをグッと堪える。
「うっさいわね!あんたのせいなのよ!あんたばっかりモテて!」
ヒル男爵令嬢は大きな声で騒ぎ始めました。もしや、これがヒステリックと呼ばれるものでしょうか?
…怖いです。
私はどうすれば良いか分からず、怖さに震えていると、
「ははっ、ルナ嬢はやっぱり可愛いね。ヒル男爵令嬢。キミは姉妹揃って頭だけでなく、シモも緩いのか」
セオ様が笑っています。その笑いにつられたのか周りの方もヒル男爵令嬢をみて失笑している様子。先程の物々しい雰囲気は一変されていますわ。
私ももっと上手くヒル男爵令嬢の言葉を躱せば良かったですね。
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