第4話

 わたしとレナはガザーブに向かう馬車の上で寝ていた。そう、旅の商人の馬車にヒッチハイクを成功したのだ。


 商人の話では砂漠の都、ガザーブは塩が足りないらしく高値で売れるのである。レナは暇らしく、あくびをしながら目をこすっている。


「良いの?用心棒として馬車に乗せてもらっているのに」


 最近はモンスターの徘徊が多いらしく、旅の商人は困っているのである。


「大丈夫、塩なんて狙うモンスターなどいないから」


 確かにぶどう酒ならゴブリンが狙うかもしれないが塩ではな。うん?地平線に緑の街が見えてきた。ガザーブに到着が近いらしい。


 やがて、ガザーブの門にたどり着き、検閲を受ける。わたしはトーマトの鍛冶屋ギルドの推薦状を見せる。


「し、し、失礼いたしました」


 門番が敬礼をする。気分は悪くないが、この推薦状はそんなに凄いのかな……?


「君、君、わたしは心が広いからね」


 完全に勘違いしているレナを止めると、わたし達は旅の商人と別れてバザーに向かう。香辛料に果物、肉に野菜、なんでも置いてある。


「この先が武器屋のスペースらしいぞ」


 レナは新しい剣が欲しいらしく、わたしはこの街の鍛冶屋の腕が知りたかった。バザーの中を進むと武器屋街に着く。短剣に大剣、バトルハンマーもある。


「おぉ、この剣が欲しいぞ」


 レナが手にしているのは黒龍が世界の半分を燃やす前の旧世界の遺跡から発掘された剣である。


「金貨、四百枚!」


 た、高い……。


「レ、レナさん、帰りますよ」

「えーあの剣欲しい」

「ダメなモノはダメです」


 で、七人勇者の一人である土のウッドは何処にいるのだ?とりあえず、宿屋に向かう事にした。



        ***



 わたし達は宿屋の部屋に入るとベッドに飛び込む。


「あー久しぶりのふかふかのベッドだ」


 初めての長旅である。野宿も多く旅の疲れであった。


「アリサ、ご飯にしようよ」

「うーん、もう少し……」


 わたしはこのふかふかが止められないでいた。しかし、お腹も減る。起き上がるとレナにグッドポーズして。


「よし、ご飯だ」


 わたし達は宿屋を出ると飲食店の屋台の並ぶ場所に来ていた。肉の串焼き、トウモロコシの丸焼き、水餃子など文化の交差点のガザーブならではの光景である。食事は一時間ほどになりお腹いっぱいまで食べたのである。


 やがて疲れた体を癒すようにわたし達は爆睡する。それは朝方の夢のことである。鍛冶屋の街トーマトが燃えている。 白い光の羽と黒い闇の羽が舞っている。  2つの羽が交わると闇の羽が消えて光の羽が輝く。


「2つの羽は小さなマテリアルの結晶。そして、この燃える街が創造された」


 それは並行世界の誕生の瞬間であった。


「君は邪気を刺激しすぎる。でも、邪気を止められるのは……」


 そう、邪気を止められるはわたしだけである。 確率的な世界はわたしの存在を求めている。


……。


 わたしはレナのいびきで目を覚ませる。 ここはガザーブの宿屋だった。 わたしの必要性か……。





               ***





「さて、七人勇者の一人、土のウッドを探すわよ」


 レナは寝起きでぼっーとしている。ここはレナを起こさないと話にならない。わたしはレモンティーをレナに飲ませて様子を見る。


「あー少し目が覚めた」


 大丈夫かな……。ま、良いや。


「A案は王族に居場所を聞く。B案は街の情報屋に聞く。どちらが良いと思う?」

「王族は会えるか疑問、情報屋は料金が高いかも」


 こいつ使えねーな。


「観光協会に行けば?」


 か、観光協会?ダメもとで言ってみるか。しかし、レナはダルそうにしていると。


「もう一眠り……」


 レナはベッドに転がり込む。ここは無理に起こしても無駄だな。わたしはレモンティーを飲んでしばらく待つことにした。それから、わたし達は観光案内所に来ていた。小さなスペースにポスターやら、チラシが貼ってある。うん?奥に誰かいる。フードをかぶったショタだ。


「少年、七人勇者のウッドは何処にいるか知らないか?」


 レナが声をかける。態度でかいな、ま、ショタだしいいや。


「なんだ、お前、僕がウッドだ」


 観光案内所に七人勇者?イヤ、しかし、もしかして……。


「何だ、簡単に見つかるじゃん」


 相変わらず態度がでかい。


「お前たち。一回、土に埋もれてみるか?」


 確かに土の七人勇者のウッドだ。


「あーすまん、連れが失礼をしたようだ」


 レナは胸を張って言う。もう、本当に穴に入りたい気分だ。


 『は、は、は!』

ウッドが笑い出すとレナも一緒に大声で笑っている。


「気に入った、特別に許してやる」

 うやら命拾いしたらしい。


「どころで何で七人勇者は旧世界から生きていられるの?」

「うむ、光と闇の七人勇者が時間を操ることができるのだ」


 永遠の命ね……わたしなら迷うな。


「それで僕に要件はなんだ?」


 おっと、肝心なことを忘れていた。


「オリハルコンの牙を探す許可が欲しいのです」

「探求者か……難しい試練が欲しいか?」


 ウッドは悩んだ表情で問うてくる。


「わたしは修行がしたいのではないです」

「ふ、素直なヤツだ。良かろう。その探求に満ちた目を信じて、僕は許可を出そう」


 観光案内所に土の七人勇者のウッドがいて簡単にクリアであった。


「このガザーブの都には地下迷宮があるらしいのそこに落とされたと思うとラッキーだね」

「ホント、、簡単に許可が降りて拍子抜けだよ」


 レナは上機嫌でいる、確かに厳しい試練の選択肢も有ったらしいがわたしが断ったからだ。


 そう、強い敵と戦う力は欲しいが、それが全てではない。オリハルコンの牙はもっと違う使いかたが有るはずだ。レナは最強の剣が欲しいらしいがそれなら難しい試練を出されたはず。


 オリハルコンの牙は簡単な最強では無い証拠だ。それは強さとは色々な要素を秘めている。守るモノが有っての強さだ。


「今日の夕食は露店で買った物にしましょう」


 わたし達は夕食になりそうな物を買って帰る事にした。そして、宿屋に着くとレナは日記をつける。


「このオリハルコンの牙の物語を書いて夢の印税生活よ」


 はあ……ま、深く考えない方がいいか、理想の夢をみるのは自由だ。

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