第3話
わたしは鍛冶屋の街、トーマトに初めて来た時の事を思い出していた。ガイドブックに載っていたニーナの工房は最後のページであった。きっと最後に載っているのだから一番だと思い込み一番初めに訪れた。
「こんにちは」
……。
返事がない、一階の工房の窯は久しく火が入った様子はない。
「なんだ、旅の客人か?」
「はい、この街に来たのは鍛冶屋の修行をする為です」
「ここで良いのか?鍛冶屋の聖女なんて呼ばれたのは昔の話だぞ」
「はい?」
「なんだ、知らずに来たのか?」
「まぁ……」
わたしは困って頬をかいていると。
「わたしの名前はニーナ、普通なら、ここで剣の一本でも打ってもらうのだが、わたしは違う」
ニーナは窯に火をともして着替えてくる。それはきわどい作業着であった。
「わたしの仕事を見てそれでも弟子入りしたいなら弟子にしてやる」
そう言うとニーナはナイフを作り始める。無駄のない動きは見ていて魅了されるのであった。
「決めたわ、ここで修行する」
「おいおい、まだ、ナイフは完成していないぞ」
「わたしはオリハルコンの牙を探す旅に出たいのです」
「ほーそれで、この街で修行か……しばらく見ていない宝具の原石だな」
ニーナに気に入られて弟子になる事になった。
***
わたしはリックをかついで背の高い杉の森を歩いていた。目的地は砂漠の都のガザーブである。道は馬車がなんとか通れる幅でであった。相方のレナはフラフラしている。
「レナ、このへんでキャンプする?」
「あーそうしよう」
旅に慣れているはずのレナであったが基本的に体力がない。わたしは魔物よけのランタンに火を灯してキャンプの支度を始める。
「この辺はウェアウルフの縄張りよ」
レナは震えながら話を始める。その為に高価な魔物よけのランタンを買ったのにこのチキン魔法剣士が。そうだ!このグランドブレーカーで更地を作ろう。わたしはピコピコハンマーを取り出して巨大化させる。道の横をゲシゲシと叩いて草を倒す。
「おーこれでキャンプができる」
「関心してないで手伝って」
二人がかりでテントを広げると携帯食料を食べることにする。
うん?殺気だ。
テントから出ると一体のウェアウルフが現れる。こちらの様子をうかがっている。不味いな……討ってでるか?イヤ、仲間を呼ばれると厄介だ。
「レナはどうした方が良いと思う?」
「言ったはずだ、ここは向こうの縄張りだと」
レナは安全策を提案する。要は魔物よけのランタンの火力を上げて去るのを待つのだ。
わたしはランタンの火力をあげるとテントの後ろに隠れる。しばらくすると、ウェアウルフは去っていく。ここは人のテリトリーではない事を痛感するのであった。
***
わたし達は杉の森を抜けると乾燥した大地に入る。ここから砂漠の都であるガザーブは徒歩で一週間程である。
うん?あの岩が動いている。よく見るとサソリの形をしている。
「岩サソリだ!」
砂漠に住むモンスターである。体長は五メートル程の大型モンスターだ。
レナは剣を抜き構える。わたしもピコピコハンマーを取り出して巨大化させる。
「魔法剣、氷柱の剣」
レナが大地に剣を刺すと氷の氷柱が地面を進み岩サソリにヒットする。
「グランドブレーカー」
わたしも巨大ハンマーで上から叩く。岩サソリはバラバラになり勝利である。わたしが一息つくと岩サソリの残骸から液体が流れだす。
「毒か?」
危険な臭いが立ち込めている。
「さがれ、可燃性の液体だ」
突然の発火と共に岩サソリの残骸が燃え出す。
「ふう、危なかった、ありがとう、レナ……」
わたしがお礼を言うとレナは勝ち誇り。
「モンスターの知識くらい持っていないと旅はできないぞ」
ホント、この勝ち誇りは子供っぽいな。呆れるが問題ない。巨大ハンマーをピコピコハンマーに戻して、わたし達は歩き始める。
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