第2話
会長室の扉が開くと。
そこに居たのはマッチョな若い男性であった。
「アリサ君、話は聞いている。七人勇者に会いオリハルコンの牙を探すのだな」
爽やかな笑顔で筋肉の決めポーズする。ヒューっと寒い風が通るが会長は笑顔を崩さない。
「AHHHH。惚れるなよ」
いや、惚れないし。わたしがジト目で見ていると。会長は軽く咳払いをして地図を取り出す。
「うむ、本題だが、ここに地図がある、この印の場所に七人勇者がいる」
会長から地図を渡れて見ると三つの〇がある。
火の勇者であるジルは旅をしているとのこと。
「他の光、闇、邪気の三人は何処にいるのですか?」
「色々、有ってな」
会長は渋い顔をする。話によるとこの四人に認められれば問題ないとのこと。
とにかく、帰って旅の支度だ。わたしが帰ろうとすると。
「ま、ま、焦らずにプロテインでも飲むか?」
会長の提案にわたしは丁重にお断りした。
「筋肉に効くのに……」
寂しそうな会長を見て少しだけプロテインを飲む事にした。
「そうだろ、筋肉、筋肉!」
会長の筋肉好きは筋金入りだ。
すると、受付のお姉さんがティーカップに入ったプロテインの飲み物を持ってくるのであった。
***
「そうそう、アリサ君と同じタイミングでオリハルコンの牙を探す者がいてな。二人で旅をしたらどうだ?」
「はい、目的が同じなら、歓迎します」
「その者は街の西の宿屋に泊まっている」
わたしは鍛冶屋ギルドから出ると。西の宿屋に行ってみるのであった。しかし、これから本当にオリハルコンの牙を探す旅が始まるのか。
「でへへへ……」
なにか顔が緩むのであった。おっと、まだ、七人勇者に認められないと探せないのであった。そして、宿屋に着くと中庭で剣を振る少女がいた。
「すみません、オリハルコンの牙を求める人を探しているのですが、知りませんか?」
「あぁ、多分、わたしの事です」
その少女は魔法剣士のレナと名乗り、オリハルコンの牙を探す旅をしているらしい。
「わたしと一緒に旅をしませんか?」
わたしの問いにレナとひと勝負する事になった。弱い仲間など要らないとはシビアな考え方だ。とにかく、わたしはピコピコハンマーを取り出す。
『グランドブレーカー』
取り出したピコピコハンマーは巨大化して、わたしは構える。この『グランドブレーカー』はその名の通り大地を砕く威力がある。
「ふん!」
レナはわたしの巨大ハンマーでの攻撃をかわすと剣を振りかまいたちを発生させて攻撃してくる。わたしはかまいたちを『グランドブレーカー』で叩き付けて攻撃を防ぐ。
「ふ、いいわ、一緒に旅をしましょう」
レナは剣を納めると笑顔で握手するのであった。
***
明日、旅に出発する為にわたしはトランクに荷物をつめている。
うん?作業場から妙な気配がする。わたしが一階に降りていくと、レナが作業場で固まっている。
「レナ、どうしたの?」
「は、は、裸の聖女がいるのよ」
どうやら、レナは裸の女性に興味があるらしい。ニーナはニヤリと笑いレナに近づく。
「へーわたしに興味が有るんだ」
「は、はい……」
わたしは上機嫌のニーナを止める。このままでは純粋なレナにあれこれしてしまうかもしれない。
「ダメです、レナはもうわたしの友人です」
「ケチ」
しかし、女性魔法剣士などしているのだ、色々な理由があるのか。今夜はわたしの部屋でレナが泊まるのだ。
「襲うなよ」
隣で寝ているレナに言うと
「失礼な、わたしはおっきな胸にしか興味が無いのだ」
「そう?なら、わたしのジルの話しをしようか?」
わたしは幼い頃の話をした。
レナはわたしの話を聞いて不機嫌になる。
「わたしのオリハルコンの牙を探すのは力が欲しいからだ。大切な人を守るには力が必要だ」
それは決意を感じた。その夜中の事である。レナは心の整理がついたのか、オリハルコンの牙を探す決意を語りだした。
わたしは幼い頃に姉と死別している。
姉は村一番の魔道士であった。ある日の事である。村に大量のキメラが襲ってきた。村人は皆で戦いにでた。
「レナはここを守って」
姉に短剣を渡されて避難した弱者の建物の前に立つ。わたしが倒れたら皆の命はない。わたしはただ夜の開けるのを待った。キメラは村から去りホッとしていると。犠牲者が運ばれてくる。その中に姉が含まれていた。涙など出ず、心のざわめきが凄かった。わたしは姉に布をかけると誰よりも強い力が欲しくなる。こんな短剣ではなく、オリハルコンの牙で作った剣だ。
微睡のなかで語られたレナの過去は悲しいモノであった。
この世界は争いで満ちている。オリハルコンの牙は世界の半分を焼きつくした黒龍の牙で破壊の象徴として十分である。
何故、探すのに七人勇者に認められる必要なのか判った気がする。
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