第40話 生活安全課 の人とNPOの人 (安藤春奈)

私がお世話になっているお店のオーナーが、今日はソワソワしていた。


何でも【役人の見回り】が有るらしく


掲示広告のチェックをしたり

営業時間の確認をしたりと


店の中で

右往左往していた。



オーナー「今日の手伝いは21時迄だからね」




たまに少年課の人も混ざっていて

指摘されると面倒らしく


間違いが無いようにと

念押しをしてきた。



日頃世話になっているとの建前で

頼み込んで始めたお手伝い


無理矢理時間を割いてでも

すると心に決めていて


もう何年続けているのかな?




感謝の気持ちも

当然あるけれど



なんだかんだで

今まで続けてこられたのは


ただ単に


あの時から8年間

親代わりをしてくれた彼女(オーナー)に



借りを返したかっただけなのかもしれない。







とは言いつつ

手伝った分のお小遣いは

チャッカリ貰ってるけどね。


ーーーーーーーーーーーー


オーナーは

先にも言った通り

私の保護者代わりをしてくれている女性で

歳は45才


血の繋がりなんて無い

生粋の岡山人だけど




振り返ること

私が8才の時に


役所の人と、NPOを名乗る人らで


彼女の元へと案内してくれて


それで

今の生活がスタートした。





何故知っているかって?



それは


今でもその人達が

定期的に会いに来て

そう話してくれるから。





詳しくは


役所の人は最初だけで


それ以降は

警察の生活安全課の人と

外国人の生活支援をするボランティアの人。



その二人が今に至るまで此処に来て



成長を観察?している。






幼い時分には

「やぁお嬢ちゃん、元気かい?」って

在り来たりな挨拶をしながら

よく

頭を撫でてたけど


その時の2人の作り笑いが



とても上手だった印象が

強く残っている。



それで軽く私と絡んだ後は



毎度オーナーと3人で

奥の応接間で話をするのだけど



それは終始真剣な顔で


驚く程長く話し込んでいた。






ー-------------------------



私は上海(中国)に8歳迄住んでいた。






特に不自由はしてなかったけれど


突然8歳の年に

父さんだけを残し


お母さんと2人だけで

日本へとやって来た(帰ってきた)。



理由は今でも謎で



上海に居た時にお母さんから


「春奈は日本人なんだよ」と

常々言われてたから


だから帰ってきたのかな? って


浅く考えていた。



それなのに

暫くすると


今度は私だけを残して


お母さんも

上海に帰っていってしまった。



それから音信は無い



訳が分からない。





何故私だけ

置いて行くんだろう?



いらない子なのかな?と



自分を責めたけれど




いいえ




それはありえないって




愛情はいっぱい貰ってたって




それは無い筈だと



自分を何度も励ました。




ー------------------------




そんなこんなで16歳になり


両親から


ミリのコンタクトも無いまま




オーナーに縋りながら



私は生きてきた。





でも信じている




いつか迎えに来てくれることを。




「放っておいてゴメンね」なんて言って



抱きしめてくれることを。



私は今でも



お父さんとお母さんのことを




強く想っている。




だからこそその日まで


良い子にしておかないと・・・


誰も傷つけず


干渉もしない



大人しく過ごす。





いつ迎えに来るか

わからないから。



ー-------------------------



春奈「分かった、21時迄ね」



笑顔で返して



エプロンを巻く。



営業スマイルも上手になった。



あの2人(生活安全課とNPOの人)には



負けるけどね(笑)。






あっ、そうそう!


もしかしたら


あの2人(生活安全課とNPOの人)が


お父さんお母さんに


報告してくれてるかもしれない


だから


私は知らなくても



2人(両親)は今の私を


良く知っているかもしれない。




「あなたの娘さんはとてもいい子ですよ」って




伝えてくれてたら

直の事いいのになぁ・・・・。








だから



天瀬雪みたいな



破壊的な考えの奴とは関わらない様にしないと




絆が壊れてしまう・・・。









私は




夢(田嶋夢)だけでいい・・・・・。
























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る