第38話 フランケン シュタイン (天瀬雪)
安藤春奈には、悉(ことごと)く失望した。
私は彼女の為を思って
忠告をしているのに
全く 聞き入れてくれない。
事ある毎に
「貴女とは違う」と
突き返しては
無視して距離を置こうとする。
いったい何が違うのか
私には全く分からないから
時間の許す限り問い質しに行くのだけれど
あの娘は決まって
貝のように
口も心も閉ざしてしまう。
何故私を避けるの?
良き理解者になれるのに・・・。
ーーーーーーーーーーーーーー
私の家では小さな工場(こうば)をしている。
何を作っているのかは分からないけれど
知る限り、休み無く働いている。
父が社長で
母が経理
3人の年老いた従業員がいて
皆辛そうに作業をしている。
最近などは
「まともに従業員に給料が払えない」と
自宅で漏らす父がいて
それを裏付けるかの様に
従業員には休んでもらい
父と母二人だけで
遅くまで仕事をしている日が
とても多い。
毎日同じ服で
ボロボロの靴。
そんなに無理をするならば
辞めてしまえばいいのにと
幼な心に感じていた時期もあったけれど
(中学位まで)
その当時は
悲惨なカラクリを知る由も無かったから
言えただけの話で
全てを知ってしまった今では
そんな父と母を
哀れに思っている。
勘違いされる前に言っておくけれど
決して見下している訳じゃなくて
ただ
可哀そうなだけ・・・。
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家を助ける為に
私も毎朝新聞配達をする。
学校が休みの日には
近くのコンビニでバイトをしたりして
身を犠牲にしている。
バイトをしているコンビニにも
同級生が買い物に来る時があるのだけれど
彼女らを見ていてつくづく思うのが
「なんであんなに楽しそうなのか」
ってところ。
私は何をしてても
ひとつも楽しくないのに
何故笑えるのかが
全然分からない。
友達は形だけは居て
ごく希に連(つ)るんで歩くことが有るけれど
何が面白いのかも解らないし
息が詰まるから
嫌で仕方がない。
無論
家に呼んだりもしないし
カラオケ?
マチブラ?
ありえない
根拠が見当たらない。
でも
それらを謳歌している子達を見ると
何故か羨ましく感じる自分も居て
私も重い荷物(重い責任)が無かったら
笑顔を振り撒けれるのかな?
なんて
本気で考えて
苦しんだ日々もあったけど
結局私には出来ない。
どうしてなのかな?
こういうのって
運命なのかな。
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社会のシステムは
とても上手に出来ていて
弱い人間から何もかもを吸い上げて
強者だけが幸せを勝ち取れるようになっている
まるで食物連鎖の様に。
お祖父さんの代で契約した親会社との縁が原因で
今の状況が構築されている。
最初は良好だったみたいだけれど
父の代に替わった辺りから
度々難癖をつけては
マウントを取り
報酬を下げるようになった。
その親会社も【下請け】で
彼らも又親会社から
お金を貰う立場なのに
ロクに作業はせずに
手数料とか言って
上間えを跳ねて
仕事とセットで
落としてくる。
そこがとても卑怯な手口で
作業はしていない訳だから
その手数料が
丸々利益になって
実際の作業は
到底儲けが出ない位にまで下がった賃金で
私のお父さんらがする。
断ったことが
幾度かあったみたいだけど
その度に
「だったら、お前も仕事を誰かに委託しろ」と言って
はぐらかす。
委託?
安すぎて、誰もせんわ(怒)
それも出来ないと言うと
「無責任な奴だ」と罵る。
「契約違反で、罰金を払え」と
法外な金額を突き付けてくる。
父と母はお人好しだから
それ以上逆らわずに
毎日毎日
あいつらの為に働く
クソ共の為に。
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私は、その惨状を知ってから
あることを考える様になった。
私達みたいな人間を守る
卑怯者なんていない
平等な世界を
創れないかと。
だって
現状じゃ無理でしょ?
グズ共が困るから。
だから創りたい
実現する手段は
至って簡単
皆の精神を
支配するだけだから
マインドコントロールってやつ?
そう
思い通りに動く
怪物を生み出せればいい。
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私には1つだけ
自慢できる要素があって
それは
【語彙力】が高く
どんな人だろうが
論破できるスキルが
備わっているという事。
今迄はちゃんと活用してこなかったけれど
これからは
有効活用させてもらう。
手始めに
バイト先のコンビニに良く来る
同級生のバカ3人共を【支配】してみた。
簡単簡単!
思い通りに動く。
学校は勿論
アフターでも
呼び出せば
直ぐに来た。
無害なので
更に私の理念を叩き込む。
凄い!
絶対に逆らわない!
完璧だ。
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私の理想郷の入居者リストに
安藤春奈 の名前がある。
彼女は来るべき
いや
来ないと潰される。
だって
強欲クズ共に唆(そそのか)されて
日本に連れて来られた
【不法入国者】の娘だから。
今はまだ誰も知らないけれど
バレれば大変なことになる。
あー
ヤバい。
何としてでも
保護せねば・・・・・。
だから日々説得にも熱が籠る
判ってくれるまで・・・・。
そんな最中
又別のクズがしゃしゃり出て来た。
大手銀行の重役の娘
ぬるま湯姫
田嶋夢。
クラス全員の前で
偉そうに私を非難した。
クソが!
おめーみたいな奴が
被害者増産してんだよ!
金持ち無責任女!
罰を与えねば
天罰を。
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失敗した
ついクズ(田嶋夢)に手を出してしまった
アイツの顔を見ていたら
冷静でいられなくなった。
物理攻撃は駄目なのを
承知していたのに
抑えきれなかった。
ヤバい
ボスキャラが来る・・・・・。
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案の定ボスキャラが来た。
クズ(田嶋夢)の親父だ。
権力を振り翳(かざ)して
潰しに掛かってきた。
わ、私の父と母が・・・・・
土下座して謝っている。
ゴメンなさい!
私の所為で
わたしが初手を誤ったから
手を出してしまったから
辛いことさせてしまった。
許せない
絶対に
許さない。
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転校して近づかないことを条件に
警察沙汰は免れた。
父と母には悪い事をした。
もう少し待っててね
誰も責め立てない世界を
私が創るから
それ迄は
頑張って耐えてね。
私はもう直接手は出さない
出さない方法を執る。
又新たに怪物を作る。
丁度この学校にカモが居た
森田匠と鈴木四郎
森田匠は
クズと近いから慎重に。
鈴木四郎は
安藤春奈と近いから好都合で
先ずこいつを私の理想の怪物に創り上げて
安藤春奈を呼び込む。
いいじゃない!
それで森田匠の方は・・・
そうそう!
確か情報屋(小野祐未可)が言ってたなぁ
森田匠を好きな奴が
結構居るって。
私はあんな
頭が良いのを鼻にかけた奴
キライだけど
あっ、そうだ
中に
高校生の分際で
読モ(読者モデル)してるの居たな。
いいね
そいつを森田にぶつけて惚れさせて
森田に
田嶋夢を
潰して貰おうか・・・・。
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