想う

第37話 ポピュリズム

匠くんから止ん事ない事情を聞かされてから、私は居ても立っても居られない心境に苛まれてしまって

自分の知らない場所で、知らない内に恨まれていくこと程

悲しく、そして悔しいことは無いと

今回の一件で再び思い知らされてしまった。

又恨み辛みを抱いてしまうと、より多くの人が過激な行動へとシフトする傾向があって

それらを身を以て知っている私からすれば

所謂(いわゆる)【いじめ】が再燃しないかどうかが気になってしまい

「今度は我慢できるかな?」などと

ビルの屋上に居た時と照らし合わせながら

心境を吐露してしまった。

そういった反面で

私らに、端(はな)から悪意が有ったのならばいざ知らず

今回のような

此方の話などは聞かずに

一方的な思い込みで悪者としてしまう

野球部員と鈴木君らのやり方には

諦めきれない憤りがあって

彼らが少しでも聞く耳を持っていてくれるのならば

是非とも諭して間違いを改めたいという

俄(にわ)かな願望も持ち合わせていた。

更に

この件には匠くんも絡んでいる都合上

しっかりと対応をしなければいけない

重要なmissionの側面もあるので

もし対応を間違えようものならば

例えば

彼が春奈らと同罪と思われて、学校で爪弾きにされ

私との距離を置きだすとか。

更に酷くなると

新たな悪い噂を流布され

それを聞いた彼も信じてしまい

結果

私の事を嫌いになってしまうとか。

それで偶々逢った時に

彼の口から

「ムカつくから近づくな」

なんて言われてしまったりとか・・・。

未だ仮説の域を越えない戯言だからいいものの

本当にこんなことになってしまったら

ショック所では済まされない

生きる気力を削がれそうな位のダメージを

負い兼ねないのだ。

大袈裟に聞こえてしまうけれど

私にとっては代え難い位大切なことで

何よりも必要な事で

何よりも重要なことで・・

だって私は、彼の事が好きだから・・・。

不器用で、積極的には行けないけれど

だけど好きで

好きだから沢山近くに居たいし

好きだから沢山構って欲しいし

沢山お話もしたい。

今更になって、赤の他人に戻るなんて愚行は

受け付けないし

もう

遠くから見るだけではもう我慢出来ないのだから

死んでも嫌で嫌で

仕方が無い。

変な始まり方ではあったけれど、結果彼に近づけている今日には

勿論感謝をしている。

今回の件だって、彼からの前振りはあったけれど

大事なアクティビティだって思ったから

根回しをしたのであって

今でも間違いだとは感じていない。

だから

だからこそこの程度で仲を反古にする気はなくて・・・・・

多少無理があったとしても説明を

いえ、気持ちだけでもいいから

相手に聞いて欲しいと

考える度に、固く思っていった。

頭の中を錯綜するそんな諸々を処理する為には

やはり行動を起こすしか方法がないと改めて判断し

居ても立っても要られず

勢いで

匠くんにLINEで決意表明の文面を

頑張って送ってみた。

春奈にもLINEで同じ内容を流し

先ず、味方の反応を待つことにした。

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暫くすると春奈から

「付いて行くよ」との返信が届いた。

私が「ありがとう」と返すと

「あの時はゴメンね」なんて

仰々しい内容も添えられてきて

初めて彼女の弱い部分に触れたものだから

少々焦ってしまった。

だからか知らないけれど

何だろ

春奈も春奈で思う所が有って

理由があっての、あの態度になったのかな？

なんて

考えてしまって

性格も一見キツそうに見えるけれど

その部分も

もしかしたら

何かしらの理由があってのことなのかな

フェイクなのかなと

今迄の付き合いも踏まえて

思い始めてしまって

だからなのか

「謝ってね」みたいな

一方的なお願をいする気は

完全に失せてしまった。

それに

もしかしたら鈴木君の方に問題があったのかもしれないし・・・

あーいけない　いけない！

そんなのを言うのは藪蛇だよね

大丈夫、解ってくれるよ！

匠君と３人ならば必ず上手くいく！

がしかし・・・・

春奈より遅れて、匠くんからも返信が来たけれど

その内容が辛辣で、一気に雲行きが怪しくなってしまった。

匠「安藤さんが実際に取った態度と殆ど変わらない噂だから意味無いかも」

夢「でも、ちゃんと謝れば理解してくれるよね」

匠「・・・・」

夢「どうしたの?」

匠「天瀬 雪 って子知ってるよな?」

夢「どんよりと」

匠「そっちの学校居たんだろ?

なんか、その子がジェンヌ達とかの噂を

撒き散らしててさ、皆それを信じちゃってるんだよ」

夢「はぁ？」

匠「内容が妙にリアルでさ」

匠「おまえ、その子に何かしたのか?」

その質問で思い出した。

春奈に難癖をつけていた子だ！

私とも揉めて、最後は警察沙汰になった・・・

直近の話題じゃないの！

そうなんだ・・・匠くんの学校に移っちゃったんだ・・・

確かにアノ子は根に持ちそうだ。

鈴木君の一件を聞いて、上手く利用しようとしているのかも・・・。

夢「まぁ・・色々と・・」

少し間が空いて

匠「と言っても、このまま放置しててもアレだよな・・・」

匠「なんとかセッティングしてみるよ」

匠「あまり期待しないでくれよ」

夢「ありがとう」

本当は匠くんの感想も聞きたかったけれど

そこは

聞く勇気が無かった。

ニュアンスからは

未だ大丈夫な感じだったけれど・・・・

けれど・・・

私が妄想した内容に沿っている分

凄い胸騒ぎがする・・・。

天瀬雪かー

あの子、悪知恵だけは良く働くからなぁ

こわいなぁ。