第32話 シュレーディンガーの猫

 今日の匠くん達とのデート?は、春奈の変な噂が尾を引いて

終始白けてしまい、直ぐにお開きとなってしまった。


もうチョット一緒に居たかったなぁー。


春奈や野球の人(鈴木四郎)もあれっきり会わなくなっちゃったし


なんか疲れた・・・・。


次は勇気があれば匠くんだけ誘うことにしよう!


多分無理だけど・・・・・。




そうやってあれこれ考えながら家に戻って来て


取り敢えずはと思い


リビングの椅子へ腰掛けてみたら


なんだか

昼間のドタバタの所為なのか

食欲も含めて何もする気が起きなくなっていて



「もう寝よっか」と発すると共に

観念し



お風呂の準備をする為に


自分の部屋へと移動した。




部屋に入るなり

いきなり

ドアをノックする人が居た。


開けてみると

同居している3人が立っていて



何か言いたげな表情を浮かべていた。




だから私は反射的に

「何?」と質問した。


すると


みしゅなん「お邪魔するよ」


ゆみゆみ「お疲れ!姫」


マー吉「失礼仕(つかまつ)る」


と各々私に声を掛けながら


濁流の如く流れ込んできて


私の部屋のベッドや床などに


各自好き勝手に腰を下していった。



堪らずに


夢「疲れているから明日じゃ駄目かな?」と、遠回しに解散要求をしてみせたのだけれど


反応は無く。



ならばと



夢「早くお風呂に入って寝たいから出てってくれない?」と

稀にみる強気な攻めを見せて


追い出そうとした。



しゅなんが

「取るもの取ったら出て行くので!」と

意味不明な返答を浴びせてくるものだから


あっさりと弱気になって


増々彼女らの行動が

分からなくなってしまった。




取るものを取ったら?


何を?


いやいや


今貸している物など1つも無いし

無論借りている物も無い。

ざっと見ただけだけど

部屋の中に知らない物が転がっている形跡も無い。

一応ドアには鍵が掛けれるから、居ない間には入れない筈だけど・・・・



理解に苦しむ。


私の反応を見兼ねたのか


慌てる様にゆみゆみが

「姫、出過ぎた真似をしてすまない」

「これも貴女の身を案じての事だから、御容赦頂きたい」と説明してきた。


誰の為?


意味が解らない。


「訳がわからないんだけど?」と

私は声を荒げつつ言い放ったら


その言っている傍から


みしゅなんは

私が外で着ていたアウターのポケットへ

手を突っ込み


そしてそこから何かを取りだし


此方に解る様に見せた。


取り出したのは1つの小さな箱で

直径4センチ位の細長の小箱だ。


何かガラケーにも見えるこの箱

液晶画面やキーボタンもある。


何の機械?



「本気でこれナニ?」と睨み付けながら聞く。



するとみしゅなんが


「ボイスレコーダー」と

端的に云う。


録音機よね?


何の為に?


流石に頭にきて


夢「何の為に記録したの?」

と詰め寄った。


怒る権利はある、明からにプライバシーの侵害だからだ。



みしゅなんは落ち着いた様子で


「夢の親父様に頼まれたんだよ

だから仕方がなくてね」と弁明。


夢「お父さん?」


マー吉「貴殿に内密のままとは、些(いささ)か疑念はあり申したが、我ら一同身を案じた上での所業」


めんどくせぇから現代語で喋れや!


ゆみゆみ「いや・・・姫すまない、親父さんは内緒にっていったものだから」


みしゅなん「ゴメン 夢、やっぱり黙っておくのは流石に・・・ね」


おのおのが引けた感じでポツリと漏らす。



でも結局答えになっていないんだが・・・。




このまま彼女たちを問い詰めた所で

結局は

納得出来ないだろうと私は思い


それだったら


元凶である父さんへ直に聞くのが

最適解だから


自分の部屋を飛び出して


お父さんの所へ

勢い良く詰め寄った。




お父さんは、私が初めて男の人と遊びに行って、トラブルが起きないかどうかが

気になっていたらしくて


その為にゆみゆみら3人に尾行と、会話の内容の記録を頼んでしまったらしい。


それを聞いて


夢「お父さん、茶屋町駅であれだけの事しておいて、今更何?

気に入ってくれてたんじゃないの?」と聞き返した。


「あそこで会っただけで、その人の素性が理解出来たとでも思ったかい?」と

開き直る父。


父「人に本性なんて無いよ、皆沢山の【手札(顔)】を持っていて、相手によって出す札を替えているだけだよ

それがその人の性格と言えばそうなるし、演技(建て前)と言えばそうなるしね」


夢「意味が解らない」


父「実際父さんは、彼(匠)がどれだけ手札(顔)を持っているかなんてどうでよくてね

只夢が、彼が繰り出すソレらにちゃんと対応出来るかどうか、其所だけが知りたかっただけなんだよ」


夢「何が言いたいの?」

親子だからアグレッシブに聞ける


父「じゃあ、夢が知らない匠くんを目撃してしまったとしよう、抱いていたものとは真逆の嫌な彼だったとか」


夢「・・・・」


父「それでも想い続けられる自信はあるかい?」


夢「それは・・・」


父「お父さんは夢のお父さんだからね、やっぱり傷つく夢を見たくないんだよ

決して彼(匠)を否定している訳ではないんだよ」


夢「・・・」


父「人間以外の動物は、本能という手札1枚しか持てないのにね

人間は知性を持ち過ぎたからかな?沢山の事実を同時に持ってないといけない、もしかしたらその特性が、傲慢な人間に対する罰の1つなのかもしれないけどね」



そう言うとお父さんは、ひとりで数回頷いてから


「変なことしてごめんね」と謝って

今日はそれ以上何も口にすることは無かった。



会社で色々あるんだろうなぁ


自問自答してる風にも思えたし


なんか怒る気が失せてしまった。


-----------------------ー-----


私も部屋に戻り、気持ちを精査してみる。


ベッドに寝転がり、頭を働かせる。


要は裏切りとか幻滅とか


羨望とかリスペクトとか


それらへの私の耐性って事よね?



お金に強欲な匠くん・・・・ないない。


ドスケベーな匠くん・・・・幻滅。


ナルシストな匠くん・・・・これは耐えられる。


中二病な匠くん・・・・?


人には冷たい匠くん・・・・・ムムム。







私を嫌いな匠くん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私の事を何とも思っていない匠くん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





辛い・・・・・それは嫌だ。


でも



私、匠くんとどうなりたいんだろ?



頭が痛い・・・・・





話変えよ。




春奈はどうかな?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふーっ


春奈は自分の事を殆ど喋らないから


全く掴めないな。


でも


私を助けてくれた時の彼女は信じれる


いや信じたい。


んーでも



それが建て前の顔だったらどうしよう・・・・・。




あー止め止めっ


なんか刑事みたいで嫌だ。



結局は、対象者がどれだけ手札(顔)を持っているかが、傷つく前に判ればいいのよね?



それをどうやって見付ける?




んー


一人じゃ考えが纏まらないなぁ


んー


チョッと気が引けるけど


協力して貰おうかな・・・。


































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