第24話 メスゴリラとその従者

人生は恐れなければ、とても素晴らしいものなんだよ。人生に必要なもの。それは勇気と想像力、そして少しのお金だ。


チャールズ チャップリン




最近になって漸く学校が楽しくなってきた。

それは友達が出来たお陰であり

特に拙(つたな)い話を休憩中に時間ギリギリまで【安藤春奈さんと】話すのが楽しくて仕方がなく、その中でも時間が長いお昼休みときたら、正に天国そのものでしかなかった。

昨日見たテレビの話とか、スマホのアプリの話とか

服の話とか、推しの有名人の話とか・・・

当たり前の事だと言われえばソレまでの事だけど、その当たり前の事を岡山に来てからは味わっていなかった訳で、だからこそここ最近の日常で、力まず自然体でソレらを味わえる自分のことが、何だか誇らしく思えて嬉しくなり、常にワクワクが止まらないでいた。


 此方では未だ友達は1人かもだけど

私にとっては十分過ぎるご褒美で

無くさない様に

壊さない様にと、自分に強く言い聞かせた。


ある時不意にその内容を安藤さんに打ち明けると

彼女は「その気持ち良く判るよ」と言ってくれて

初めて安藤さんにを見た時の、あの状況を鑑みれば

私達と同じ境遇の子が、現在進行形で沢山存在しているんだろうなと

お母さんが作ってくれた卵焼きを箸で挟みながら馳せって


そしてゆっくりと


心に着低させた。


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 恋バナになると、必ず異性の存在の確認合戦が始まる。

気を使ってポイントを変えたりもするけど

基本は必要以上に自分のデータは出力しない方向を目指す。

私達も腹の探り合いが疑心地なくて

必ずスタックする。

妙な雰囲気になり

気不味くなると、安藤さんはいつも逃げ道みたいに必ず【あの話】を出す。


安藤春奈「ねぇ、あのビルmenは誰?」


勝ったとばかりの微笑を浮かべて、彼女は答えを待つ。


ぐぬぬぬっ


いやはやあのビルの下りは汚点でしかなくて

情けないを通り越して、今は恥ずかしい。


可能な限り100年は触れて欲しくない。


更に匠くんとの関係も、云う程のものでもなく・・て


只の片思いな訳で・・・・・・


そんな言い返せず黙り込む私を見て安藤さんは、毎回

「青春だねぇ」

と言いながら肩を軽く叩いて、自身の恋愛事情は封印した。


そもそも私の恋バナなんて中身が薄い


というか無い。


『片思い』の一言で終わる。


初めの頃の通学電車でのコンタクトも、只のストーカーでしかなくて


「話したら100%引かれるな」と心で愚痴るのが精一杯。


結局安藤さんの目論見に嵌まる(はまる)しかなく

こっちが先に話さないと打ち明けない心積もりなんだろうと

マウントを持っていった安藤さんを見ながら思い

いつか必ず聞いてやると、静かに闘志を燃やす私であった。



恋バナはもう止めにして


 少し敷居を下げて、友達について話す事にした。

安藤さんは、それに関しては直ぐに

「誰もいなかった」と公言して

続け様に

「田嶋さんが唯一無二だね」と言ってくれた。

真直ぐ私の目を見て話すものだから、こっちが恥ずかしくなる。


けど嬉しい。


改めて色々あったのだけれど、施(と)った意思や行動に関しては何ら過ちが無かったんだなと


深く思った。


なんか感動する。


私の方は、東京に悪友が3人いる事を告げ、いつか一緒にお茶しようねと約束をして


話を締めた。



本当に『いつか』のつもりだったのに・・・・・。


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自分の家の前迄来ると、数台のトラックと数人の作業員が忙しなく家を出入りしていた。

中に入りお母さんに尋ねると、部屋の改装をしていると告げられた。

自慢では無いけれど私の家は広くて

以前にこの土地の資産家が住んでいた物件を、お父さんが買い取ったのだけれど


部屋数か多くてビックリする。


建物も無駄にデカくて

その為に年配の使用人が1人住んでて、午前中にはハウスキーパーも来る。

夜は怖過ぎる位静かで、トイレでさえ行けない日がある。

外観は、邸宅というよりも【役場】の方がピッタリと合う感じで、趣が感じられなかった。

そんな屋敷の3部屋を、しかも私の部屋を跨ぐ様に改装していて

当初は私の部屋が広くなって、トイレとかお風呂とかを付けてくれるものだと、勝手に期待をしていた。

しかし予想は外れて

ガッツり部屋が3つ出来上がっただけだった。


何の為なんだろう?


答えは週末に判明した。



日曜日の昼前に、家の中に見覚えのある顔が・・・・

しかも3人居て・・・・!


えーーっ!


そこには

ゆみゆみ、みしゅなん、マー吉、の3人が立っていた。















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