第19話 人間万事塞翁が馬
今日から指示がある迄自宅謹慎になった。
その間反省文を書いて提出しろと連絡があったけど
何をどう書けばいいのか心情の総括に苦慮し
1文字でさえ紙に筆を入れることが出来ないでいた。
それ以前に、完璧に犯人扱いをして疑わない学校側の善がった判断に
『責任を取れる人間がいれば、誰でもいいんだ』
という考えの方が強く湧き出て
本気で向き合った私の所作なんて不毛だったと
改めて痛感した。
でも、どうでもいい。
もう、どうでもいい。
その日の夕方、お母さんが私の部屋に
託け(ことづけ)と称してやって来た。
「LINEとかじゃなくって、朝晩一度だけ必ず電話を掛けてこいってさ、匠くんが」と、お母さん。
更に
「モテモテだね、夢は」と
私を茶化すとニコリと笑い
只々頭を撫でるだけで部屋を出てった。
この2人にはマウントを取られた感が半端ないけれど
学校の【横暴】に比べると温かみが有り、且心地いいので
自然と笑みが出た。
夜になると、今度はお父さんが部屋に来て
「生きてるかー」って
不器用なコミュニケーションを図ってきた。
けれど
不細工だけど愛嬌が溢れてたので
これもまた笑みが出る
自然に。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ふと考えてしまう。
誰一人として寄り添ってくれなかったら
私は今頃どうなっていたのだろうか?って
こっち(岡山)に来て直ぐに
私、死んでた(自殺)かな?
家出してたかな?
引き籠り?
あー、それは言い得て妙!
良いことが思い浮かばない・・・・・。
そうやって
色々考えるから殆ど眠れなくて
無理して眠ろうと思って瞼を閉じても
最近学校であった嫌な思い出(いじめ)が際限なく蘇ってくるし
予期せずA子さんやその一味の顔が脳裏に描かれると
恐怖と寒気が勢い良く押し寄せてくるし
八方塞がりで参ってしまう。
本当に
あの集団エゴの波の高さには驚愕した
何もかも飲み込んでしまう
中立の天秤も
出る杭でさえ
容赦なく飲み込むんだって
そう思った。
だから
形骸化という海で難破した漂流者のように
辛うじて生き延びた私を
又いつ攫(さら)いに来るのかと考えたら
「私はそういう人達の踏み台なのだろうか?」と
自責の念に駆られて
更に眠気を剥奪していく
結局は寝たくても寝れない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
朝になって匠くんに電話をする。
世話になった為無下にはできないから、言われたままにcallをする。
夢「おはよう」
匠「おう、生きとるな」
夢「うん、生きてる」
匠「家から出るなよ」
夢「なんで?」
匠「又、ビルに上りそうだから」
夢「上んないよ」
匠「絶対に?」
何故か返答出来なかった
間が空き
匠「数日前に、俺がお前に言った事あっただろう?、覚えているか?」
夢「なんだったっけ?」
匠「リスクを背負えって話だよ」
匠「あれは不適切だったって、今は反省している」
匠「ジェンヌの事をよく知りもしないで言ってしまったからな」
匠「ごめんな」
彼は謝る。
最後の『ごめんな』の言葉に心を奪われた。
無論匠くんが謝る筋合いの無い件なのは承知している
そうではなくて
なんか
学校では絶対に言われない言葉で
誰も絶対思わない言葉
鼻から私に対しては何の感情も無く
憂さ晴らしの【道具】としか思わない奴らの
口からは絶対に出ない言葉
それを
お父さんやお母さんは元より
匠くんはちゃんと言える
間違いは素直に認めて口に出せる
なんだか
こうも人によって違うんだなと
そう思うと
胸が熱くなった。
ゆみゆみやみしゅなん達でさえ簡単に口にしないフレーズ
【ごめん】の言葉の重さや重要さに
心を奪われた。
求めてはいけないのだろうけど
自然にそれを頂ける様になれる関係こそが
人と付き合う上で一番重要なんだって
身に染みて分かった気がした。
まだまだだねぇ私は
とりあえず私は反省文を書く事を止める
そう決めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます