第16話 オルレアンの乙女(中)


誰もが世界を変革することを考える、だが誰も己を変えようとは考えない。


トルストイ




 金曜日

6時限目(最後の授業)の前の休憩時間で決行する。


理由は簡単で、その後で起こり生る災難から、1日間を置きたかったから


それだけで


他意は無い。


ただ


猶予が欲しかっただけ。



授業の内容は、流石に入って来ず

時間ばかりを気にして、運命の時を待った。



 私が見た限りだと実行犯は4人。

メンバー内はちょくちょく替わってはいたけれど

毎度必ず一人だけ同じ子がいて、恐らくその子が主犯、もしくは主犯の内通者だと思われた。

そしてその女子が他の3人を誘い、毎日毎回懲りずにイジメているという構図なのだった。



アホか!。




それ以外の特徴としては、私のクラスとは違い人数が制限されている所。

此方のクラスでは全員で攻撃してきたけれど

春奈さんのクラスは4人だけで、他の子は参加していなかった。


見て見ぬ振りも立派なイジメだけどね。

心情は解らなくもないけど・・・・・。



兎に角その一人だけを相手すれば

私の作戦に効果が生まれることが分かっていた。



作戦内容はこう。





 先ず授業終了のチャイムが鳴ったら隣のクラスへ移動し、4人組が春奈さんをいじめてるタイミングを見計らってから中へ入る。


そして主犯?の子に対して


「私のお父さんに云いつけてやる」と脅す。



次に春奈さんの手を取って一緒に教室を出て、保険室の先生に事情を話して保護してもらう


これが私の作戦。


そうして上手くいけば、2種類の結果が得られる算段。


一つ目は、私の噂を知っていたら(お父さんの防犯カメラ騒動とゆみゆみの存在、そしてイジメられていた事実)

私のクラスみたく、制裁を恐れて黙り込むパターン。


もう一つは、神経を逆撫でする訳だから、逆ギレして私に刃を向けるパターン。



どちらにせよ、春奈さんは救われる。

後は春奈さんの自己保身が強ければ、春奈さんもあいつらの仲間の振りをして、私をいじめに掛かる筈。


ていうか、そこが一番の肝であり、重要な所。


彼女も私をいじめて、あれらの仲間にならないと完璧に終わらない。



理想は、みんな無視してくれるのが良いのだけれど

匠くんの言っていた【リスクを覚悟する】の言葉を加味すると

その部分がそうなんだろうなと思った。



一番の気掛かりは、春奈さんが過度に抵抗しないかという所

完全拒否されたら、見も蓋も無くなってしまうから。


上手く空気を読んでくれればいいに・・・・と


切に願ってしまう。





唐突に




なんでそこまでするんだろう?って思ってしまうけど


やっぱり


あんな行為は見たくないって



心が叫ぶからかなぁ



私の正義が叫んでるんだよねぇ




全てを敵に回してもいいからって・・・。


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 決行の時が来た。



チャイムが鳴る。



早く終わらせたいという願望からなのか、積極的に足が動く。

あっという間に隣のクラスの入り口に着き、タイミングを待っていた。

いつも通りに4人が彼女(春奈)に行為を始めた。






「お父さんに云うから!」




ちゃんと言えた!


驚いた顔をして見せる4人を尻目に、春奈さんの手を取り、教室の外に連れ出すことにも成功した。


まずまず!


そのまま保健室へ・・・・。




ところが




教室を出て直ぐに、春奈さんは私の手を払い除けて、私をDISりだした。


春奈「あんた何様のつもり!」


夢「えっ?」


春奈 「私を哀れんで、正義の味方気取ってんの?

ジャンヌダルク気取り?馬鹿じゃないの?」


そう言い放つと、自分の教室に戻り始めた。


夢「ダメ!」


私は手を取ろうと伸ばしたのだけれど、それも払い除けられて

「有難迷惑なのよ、見下しやがって!」って叫ばれた。



そう言われて私は咄嗟に

「イジメられてるの、もう見たくないよ」と

素で返してしまった。


一瞬驚いた顔を見せた春奈さんだったけど、直ぐに硬い表情になり


「余計なお世話よ」と吐き捨てると



直ぐに自分の教室へ戻ってしまった。





数分の出来事だった。





まだ時間があったから恐る恐る覗いてみると、春奈さんの前には誰もおらず、ターゲットだった例の女子は机に座っていて、顔を真っ赤にしてイライラしていた。



あの子主犯だったんだ。


まぁ



少し予想からは外れたけれど、楔は打ち込めたと確信した。


後は春名さん次第だし



私は明日からの覚悟を決めとかないとと思いながら、自分の教室に戻った。





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次の日の学校では、私の想像を超える苦痛が待っていた。

  

















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