第10話 猿芝居の母さん(1)

みしゅなんの助言も受けられずに、その日の尾行は終わる。


帰りの同じ電車には乗れたけど、近づけなかったし


見る事すら・・・出来なかった。


これ以上イメージが悪くなるのは嫌だし


更に避けられるのも、もっと嫌だし。


変な印象で存在を固定されて

未来永劫葬り去られるのも嫌だ。



今の自分はなんなんだか。


声を掛けられない、私の根性無しめ!



何が怖いんだろ、私


嫌われること?


彼(匠)の本心を知ること?



彼女とかの存在を暴露されること?



彼の中に私が居ない事?



あーそれは現実だねぇ・・・痛い事実・・・。



私は何がしたいんだろ?


何をしたの?


んー


私は何もしていない。



只、見てただけ



コソコソ見てただけ。



ーーーーーーーーーーDAY 2ーーーーーーーーーーーーーー


次の日も、帰りの岡山駅で匠くんの後を歩く。


結局昨日は、みしゅなんからの連絡は無かった。


あいつ忘れてやがるな。


ムムムっ


みしゅなんにLINEをする。



ーーーーーーーーーLINEーーーーーーーーーーーーーーー

(絵文字等なし)


夢  (連絡くれんし)


みしゅなん (忘れてた、さーせん)


夢  (殺す)


みしゅなん (ゆみゆみみたい)


夢 (匠くんの後付けてる)


みしゅなん (刑事みたい)


夢(・・・・)


夢 (どうしようか?)


みしゅなん  (告れ)


夢 (できんし、多分避けられちょる)


みしゅなん (関係ないよ、あー、まぁーそうだなぁ)


夢(何?)


みしゅなん(口実がいるよね)


夢(それあっても無理だけど)


みしゅなん(他力本願匂わせてるじゃん、ダメ女め)


夢(ヒドイ)


みしゅなん(協力者が必要ね、)


夢(誰?)


みしゅなん(あーそうか、ゆみゆみから聞いたよ)


夢(何を?)


みしゅなん(学校での事、相談して欲しかったなー)


夢(ごめん)


みしゅなん(まぁいっか、あーたはそのまま尾行してなさい、何日でも)


夢(それで?)


みしゅなん(駅員かテッケイ【鉄道警察】に捕まったらLINEちょーだい)


夢(はあ?)



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


まぁみしゅなんの事だから、何かいいアイデアがあるんでしょうけど


ちょっち不安。


でも、私に良い案が有る訳でもなく

言われるがまま

ダラダラと尾行を続けて

結局何も無く更に3日が過ぎてしまった。


ーーーーーDAY5ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

言われるがまま5日目に入り、いつものように帰りを尾行する。


匠くんにバレない様にはしてたつもりだけど


もし気付かれたら、正真正銘の【痛い人】ですよね


俯瞰で見たら、キモい行動してんだろーなー


想像するだけでオゾマシイ


そんな不快な妄想をしながら、岡山駅構内を宇野線のホームに向かって歩く。


すると


「すいません」



「あの、すいません」


と大人の男性の声が、すぐ近くで聞こえてきた。


声のする方へ体を向けると・・・・


ラフな格好の男性と女性の2人。


不意に手帳めいた物を眼前に突き付けてきて、そこには


【岡山県警】と刻印されたバッチと・・・



うげっ、けーさつ



鉄道警察「ちょっと時間ある?」


夢「あわわわわ」


固着してしまった私の手を取り、駅の一角にある詰所まで連れていった。



けーさつの人の話だと、不審な行動をする未成年の女の子がいると通報があったとのことで、不審者の印象と私がよく似ているから呼び止めたらしい。



鉄道警察「話聞くだけだから、」


夢「あわわわわ」


全く会話にならない為、けーさつの人は学校と保護者の連絡先を聞いてきた。


夢「あわわわわ」


鉄道警察「鞄の中見てもいい?」


追い込みを掛けられる私。



ふと、みしゅなんとの約束を思い出してLINEをする。



鉄道警察「何してるの?」

不審がるけーさつの2人


間髪入れずにスマホの電話が鳴った。


出てもいいとけーさつの人。


出るとみしゅなんで、一言


「夢のお母さんの番号変わってない?」


変わってないと言うと


「けーさつの人に替って」とみしゅなん


言われるがままスマホをけーさつの人に渡す。




私をチラチラ見ながら5分程話すけーさつの人。



あわわわわ




最終的にお母さんが迎えに来る手筈となり、それまで詰所で待機になった。


けーさつの人に

「色々事情があるのは解ったけれども、不審な行動は控えてね」と言われた


えっ、事情?


そうこうしてたら、みしゅなんからLINEがきた。

長々と綴られた文章・・・

うげげっ、私、痛い人になってる・・・。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


それから2時間程経ってから、慌ててお母さんが入ってきた。


なっ、何故か号泣している。


母「夢ちゃん、何で相談してくれないの?」

そう言うと私を抱き締めた。


ウルウルしてるけーさつの人。


泣く母。


そしてドン引きする私。


いやいや違うっしょ!

これじゃ私、昼ドラ女じゃないのよ!


やらかし女、みしゅなん!


ゆみゆみといい・・・。


うっ、うぜえ。


















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る