第7話 通学電車 (森田 匠)

ある日、久しぶりに混んでいる電車の中で足を踏まれた。

しかも女子。

それだけなら、あの時は確かに混雑していたし、まぁ仕方の無い事象になるのだろうが



何故だか妙に頭に引っ掛かってしまい

後々も

引きずってしまったんだ。


小さな声で何かを言い

それ以外の、例えば 俺の即座の返しだったりとかを完璧に無視したら

そそくさとその場から他の車両へと移動して行ったその子。


あたかもその光景は

サッと夜空を横切る

流れ星の様で


「あいつなってないなぁ」と愚痴る傍ら

気持ち悪い感覚が支配していくのを覚えている。


その気持ち悪い感覚が離れないのだ。



別に

相手にされなかったというプライド方面の・・

なんだ

根に持っている・・・とかじゃ無くて



どういえばいいのか・・・



何か重要なピースを失くしてしまっている様な・・





別の人にも

当然踏まれた経験は沢山有るし

似たような対応も沢山された。


まさかの一目惚れか?


まじで!


まぁそれは置いといて


気になって仕方が無かった。


その翌日も

やはり気持ちが悪いので

脳の整理を行い

原因究明を探ることにした。



ってな訳で

先ずは思い当たる節から始める。


一つ目はビジュアル。


確かに

あの子の印象は他とは違う気がした。


パッと見ただけだが

教養が高そうな都会的な仕草を感じたし


服(制服)の上品(オシャレ)な着こなしや

スタイリストが居るかのような髪型や

軽めのメイク。

極めつけは

流暢(りゅうちょう)な話し方【標準語】。



どのピースも、岡山の土地者ではないと

容易に指し示していて


そりゃ

電車の中じゃなくても

周りからは

相当浮くだろうなとは思った。


それだけでも十分にインパクトが有り


間違いなく

違和感ではあった。


補足だが、芸能人みたく顔は凄く小さかった。





けど

それでも何か

腑に落ちなくて


うーむ

やはり

そうじゃない気がすると

もっとインパクトが強い違和感があるんだ、、、と


あくまでも俺主観の気持ちで

確証は無かったのだが

俺が許してくれなかった。


又、考え込む。


そして

アレコレ考えていたら

特に

電車内の光景を思い浮かべていたら


突然

電気が走るアハ体験が降りてきた。



なんか降りてきたぞ!と

心の中で叫ぶ。



おおー

いやいや知ってるぞ、あの子。


そうそう

俺は彼女を、別のシチュエーションで見た記憶があったのだ。しかもかなりの頻度で。


更に頭を捻り

場所を特定してみる



俺の辞書には【忘れる】という文字は無く

お得意の記憶の引き出しを引いた。


・・・・。


あっそうそう!

思い出した。


やっぱり俺は、前にも彼女を見ていた

間違いない。






高校に上がって、通学でこの電車を使い始めた頃から今にいたる迄に、俺をいつもガン見している女子が居たのだが

その子が足を踏んだ子にソックリなのだ。


いや本人で間違いないだろう。


三両目と四両目の境からソッと覗くだけの子


とても不思議な印象を持ったっけ。


冷静に考えるとストーカーでしかないのだが・・・


いや、確実にストーカーだな。


怖し・・・・。



それが違和感の正体だろうと思った。


頭が妙にスッキリした。


正真正銘の違和感だが

同時に

不快にもなった。





俺には能力がある。

と言っても、超能力者とかそういうのものではなくて、単に記憶力がとても良いって方だ。

だから勉学には大いに利用させて貰い、そのお陰で常に学年主席をキープさせて貰っているから

その自信を基に、有名大学を出たら IT企業を立ち上げるという

なかなかのビックな目標を掲げる事ができた。


俺の人生設計は現状、とても順調だ。


あくまでも現状はだが。



少し遠回りをしたが

その能力の恩恵で、俺は一目見た光景や人も、鮮明に記録することができ


その能力のお陰で

彼女を思い出すことも出来た。


俺はスゴイ。



しかし

逆に残念な部分もあって


嫌なことも、やはり同じくハッキリと記憶してしまうから

げんなりするのだ。

対象者のマイナスな面だな。


悪しき癖や人を欺いた瞬間とか

人を卑下する瞬間とか

拒否は出来ずに

強制的にインプットされてしまう。


電車内なんて良い例で、大抵が同じ人間が毎日乗って来るものだから

全員の【クセ】を覚えてしまい

BADなイメージが多い人などは

そういう目(悪い奴)でしか見れなかった。



女子だとプラスして、好意も沸かなくなってしまい(当然かな?)

男子と性別が被ってゆき

恋愛からは遠ざかっていく傾向が有った。

(森田匠は恋愛経験がゼロだから、出会う全ての女子をそういう目で見ていると証明している)


「良い所も悪い所も引っ括めて、その人の個性」なんて言う人もいるが

それはバランスの問題であって


悪い所が多い人は

やはり悪者で

個性じゃないと思う。


逆も然り。



だからあの子も

ストーカー疑いが絶賛上書きされて

足踏み事件の応対も良くなかったから


俺のジャッジでは【悪い奴】である。


そう


だからあの子も

根本的に興味が無い方向なのだ。



ストーキングだけは止めておいた方がいいと

忠告はしたいけど。














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