第6話 テロリストなゆみゆみ

 お父さんが学校に援助をしていたのも

驚きだけど


それ以上に


知らない内に沢山の防犯カメラが

所狭しと設置されていた事実を知った時の


あの動揺たるや


だって


皆から受けてきた全てを

お父さんやお母さんに知られてしまったのだから


その為に発きる

この波止め無い没落感たるや


私のこの

ショボい心臓だと


いとも簡単に圧し潰されそうだった。




お母さんから教えてもらった

PTA会合での

お父さんの発言。



隠していた訳じゃない


自分だけの問題だと思っていて


お父さん達には関係ないと

決め付け・・


いや

決め付けたい自分が居て



だってこういう事は



恥ずかしい部分でしょ?



正直

知られたくないと思うのは

普通でしょ?






けど・・・



そうじゃなかったんだよね?




だって



会合の後で

私を見付けた時のお父さん



なんか寂しそうだった・・。



あんな顔を見せられたら

私が間違ってたって事になるよね?





天を仰ぐ。





どうなのかな?



又同じ境遇になっても

ちゃんと話せるのかな?



けど



いくら考えた所でも




又迷惑掛けそうな気しかしない。





そんな自分に



ちょっと

嫌気が差した。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私にとって

劇的な日があったのだけど

その事を話したいから話すことにする。


何が劇的かって?


あの子の名前が分かったんだよね!


そう

電車の彼の事だよ。




それはね

短い間だけど

ゆみゆみとの登下校が始まって


3日程経過した頃かな


宇野駅を発車した辺りで

彼女が唐突に

「隅に置けないねぇ、姫は」と言って

詰め寄ってきた時から始まるんだけどね

後で考えてみれば

ゆみゆみの様子は、あの時からちと怪(おか)しかった。


夢「なっ、なんの事?」


ゆみゆみ「名前なんてぇの?」


夢「いっ、言っている意味が分かりませんが・・・」


シドロモドロな私の抵抗を他所に

悟ったかの如く、力強く親指を立てながらニヤつくゆみゆみ



あっさりと私の片思いは

彼女にはバレてしまった。


大層ご満悦そうな表情で

「任せろ!」と言い放ち


私の肩をポンと叩くや


開閉ドアの方へと猛進。



そのやりとりからは

彼女らしさしか無く

悪気は感じられなかったのだけれど


パッションがエナジーとばかりのゆみゆみは

細かい気配りなどは存在せず


私からしてみれば

台風でしかなかった。


確かに東京に居た時もそうだった気がする。


通った場所は全て


荒廃してたなぁ・・。


そんな台風が

『早くゲロ(告白)って楽になれ!』って

顔に書いて詰め寄ってくるから


うぁコワい

ってなる。



ぐぬぬぬぬーっ



電車の彼ー!


ゆみゆみが居る時だけ

バス通学にならないかなぁ・・・。








ゆみゆみは、学校から貸与された制服が

男子用なのにも関わらず


怒って

突き返えすことさえせず


それはそれは

ご満悦に袖を通して

岡山での学園生活を過ごしていた。

(まぁ似合っているのだけれども)


まぁそんな

【男子】みたいなゆみゆみと2人で

行動を共にしていれば


当然の如く


カップルに見える訳で・・・。


案の定

周りの目が

そのように提示していた。


「意外とお似合いだな」と言う声も

漏れ聞こえてたし


それに

そういう状況下での微妙な空気を

何故だかゆみゆみは感じ取れるみたいで



「今日も可愛いぜ!」なんて言って抱き寄せるものだから



まぁ

そうなるよねって感じ。



だからね



今一番ヤバいのが!



電車の彼がゆみゆみを

私の彼氏だと勘違いする事なんだよね。


もしそうなったら・・ヤバいかも。



面識が無いから

気軽に?話し掛けれない分不利でしかなく

為す術なくアウトな気がする。



詰みです。



オワコンです。



そうなんですよねぇ・・・


私は

彼と

声を交わした事さえ無いのでした。


それ所か


意識さえもされていない確率が高いし・・・・ワロタ。


ハイ



私はストーカーです(涙)。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



なんだかんだ考えている間に

電車は茶屋町駅に滑り込んでゆき


やがてドアが開くと

沢山の人が流れ込んできた。



私達2人を見て

一瞬ビクつく人達・・・

今更・・・・。





そんなことは気にしてられず


私は

乗客一人ひとりを目で追って

彼を探し始めた。



頭の中で

「いないで、いないで」と唱えながら。


いなかったら居なかったで困るよ的な感情との

妙な鬩(せめ)ぎ合いの中で


1人1人真剣に目で追った。



彼が気付く前に気付く。



見付けたら・・どうする?


取り敢えず隠れる?


いや

今は何でもいい


先ずは発見とばかりに

車両の内外を、隈なく探した・・。



そしての・・・


あーいた!。



あれっ? イヤホンだったのにヘッドホンに替ってる!、しかも赤!


小さな発見に心躍らせるショボい乙女の私。


俄かな新情報に心を踊らされている間に




不覚にも

ゆみゆみに先手を取られてしまった。


ゆみゆみは獲物を狩る野獣の様に彼にロックオンを済ませていて

乗り込むであろう車両の入り口に

既に到達していた。




やっ、ヤバい!


私は無様にも硬直。



ゆみゆみは悠然と彼と対峙し

ゆみゆみ「名を名乗れ、小僧」と威嚇。




ぎゃーーーーーーーーーーーーっ




心臓が止まる感覚を体験する私。



いっ、息が出来ない・・・・。



ゆみゆみは眼(ガン)を垂れながら更に詰め寄り

射撃体勢に入った。



私・・・死ぬ・・・。



すると突然


ゆみゆみに対する恐怖かどうなのか

知る由も無いけれど


何のスイッチが入ったのか


物凄い勢いで、彼は車両から飛び降りて

全速力で駅の改札口へと消えて行ってしまった。



ガーーーーーーーーン。




ガタガタと

何かが壊れる音がする・・・・。



崩れきって

抜け殻になってしまった私に


ゆみゆみが

「学校に遅れると言っておいてくれ」

とか告げると

同じく電車を降り

後を追うように

改札の先へと消えていってしまった。



なんか

この前再放送していた映画のターミネーターと同じだ・・・。




東京に帰りたい・・・・。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



結局ゆみゆみは、その日は学校には現れず、夜遅くになってから

私の家の方へと戻ってきた。


担任からは、当然連絡が入っていて

ゆみゆみを見るや否や、心配をする私の両親には


「すみませんでした」と謝ってみせると、一目散にホテルへと戻って行ってしまった。


その時点では

私への説明は無い。





それからどれ位経ってだろう・・・




午前零時を回った頃かなぁ




余りにもな肌寒さを感じて

目覚めてしまったんだけど


その原因が、閉めていた筈の窓が全開だったからなんだよねぇ



怖っ!てなって

ベットから飛び起き、明かりを点けて辺りを見渡したんだけど



まぁ大丈夫そうだったから安心した。


一先ず落ち着いて


それで

改めて窓を閉めて

ベットに戻ったのだけど


その時

ふと

寝る前には無かった

1枚の折り曲げられた紙を

枕元で発見したんだよね。



何故か気になり・・


無性に気になり・・・


恐る恐る開けてみたの。


『森田 匠 17歳 ○○○○高校2年』



なんじゃこりゃ?



見た事ある筆跡・・・。


あー


ゆみゆみだ。




普通に渡せや、暗殺者か!。


それに窓から入ってくんな!変態!





まぁ色々な意味で暗殺者だけど、ゆみゆみは。




あの時


電車を降りてからの行動が



なんとなく判り




死にたくなってしまう私。




学校



行きたくないな・・・。


その後

寝れなくなった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

夜が明けて

目が覚めてリビングに行くと


お母さんが


「岡山市の中心部でテロリストが潜伏しているらしいから、今日は休校になったよ」

と言ってきた。


TVでも報道がなされていて、厳戒態勢が敷かれていると説明していた。


更に目撃者の情報で

そのテロリストは

ゴリラ並みの体格の【男】だとも報じていた。


その様子を

既にリビングに来て見ていたゆみゆみが

「岡山は物騒だな」と

他人事のように言っていたけれど



私には判る。





あれ、アンタでしょ?





ゆみゆみさん

やりすぎですよ・・・。






森田 匠かぁ


先輩なんだね。



って


名前は分かって嬉しいけれど




ゆみゆみさん




彼に何をしたの?





























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