第5話 最終兵器 ゆみゆみ

ゆみゆみを呼んだのは、ヤッパリお父さんだった。


ゆみゆみがそう教えてくれた。



ひょっとして


学校でされている事を


お父さんは

知ってたのかな・・・・。





こういう状況の替わり方であると


そう考えてしまうのは

至極当然で


それに


思い返してみても


私の

ここ数か月の

帰宅時の状況や


態度を鑑みれば



お母さんでさえ

感付いたのだから

(確認はしていないが接し方が気付いた風だから)



お父さんが

知らない筈など無いと

判断する方が

正しかった。






けど

そうだとしたら



何故今迄

助けてくれなかったんだろ?



そこが

無性に気になって

仕方がない。






いつから知り得たのかは

判らないけれど・・・。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



私の後ろの席に座ると

「親父さん、姫の相談に乗りたいみたいだぜ」とゆみゆみが言った。



その発言のお陰で


ああ

やっぱり知ってたんだなと


確信に変わった。



それで


ゆみゆみを使って


私の方から

先に言わせたいって訳?



いやいや

回りくどいやり方するもんだなと



ここ数日の出来事を思い返しながら


少々呆れてしまった。



実の子なんだから

直接聞けばいいのにと

ボヤきも入れながら・・。




お父さんの思惑を

悟った直後は


いっその事


反抗してみせようかとも

考えたけれど


なんだろ



時間が経つにつれて


ひょっとしたら


お父さんは

お父さんなりの

解決手段があって


既に


その渦中に居るのでは?

と考えたら


まぁ



取り敢えずはだけど


詮索は止めて

様子を観てみるのも良いのではないか?と


強引ではあるけれど



気持ちを纏めてみた。




どの道

私の性格だと


自ら相談だなんて


今更過ぎて

ハードルが高いからね。






だとしたら父さんは



どんな方法取るのかなぁ?





以前も経験したけれど


教室で先生が

「いじめは止めなさい」って

注意するやつ?



アレするのかな?




いやいや



あれは勘弁してほしい!




相手の憎悪が増すだけで


こっちは

何の成果も得られない。



凄い嫌だ。




じゃあ

先生や保護者達を怒鳴り散らすパターン?

(俗に言うクレーム)



ああ


これも


結局同じ結末になるよね・・・。




・・・・・。




良い解決方法なんて

思い付かないよな・・・。



そんなの有るのかな・・・。



まぁ100歩譲って


有るとして



じゃあ

私は

何てお願いするの?



「クラスメイトは皆悪い奴だから退治して」って

言うの?





何だそれ・・・。



じゃあ

「私の事を同級生が理解してくれない」とか?




・・・・。



参ったな・・・



私こそ

クラスメイトの皆の事

理解してないじゃん・・・。




空しい・・・。





・・・・。





なんやかんや

考えてみた所で



結局一番良いのは



現状よりも悪化をしないこと



つまりは



放置して貰う方がいいのではないかと


思った。



やっぱり

解決するには


当事者同士じゃないと


ダメだからね。


けど


残念ながら


私には学校の子らと話し合う勇気など

微塵も沸かない。





目すら合わせられないような

無力な私には



出来る事など無いのだと悟った。


だから


お父さんの思惑に乗る方が手っ取り早いのだ。



横着なだけでしょうけど・・・。





それがあってか


ゆみゆみを見た時には



正直安堵した。




心底安堵した。



だって



彼女が居てくれたら

1人じゃ無くなるのだから・・・。



その時は

それだけでいい気がした。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ゆみゆみは


先生からこっぴどく叱られたのにも関わらず


全く効かない所か


逆に

「粛清したまでのこと」と言い放ち

職員室をザワつかせてみせた。



しかも職員室のテーブルに


足を投げ出して座るといった

暴挙にも打って出た為



居合わせた先生達が次第に激高してゆき



顛末



反省文を書くという名目で

そのまま職員室に軟禁されてしまった。



そして


この一件は

保護者の耳にも

いち早く入ることとなり


あれよあれよと

拡散され尽くし


事が大きくなり


PTAや学校側だけでは

抑えきれなくなったのか


止む無く


数日後の放課後に

臨時の保護者会を開くこととなった。




無論私の家も

例外ではなく



ってか



当事者なので





ゆみゆみの保護者代理として


私のお父さんが

出席を求められて


それに応じる形で



お父さんが

学校に来た。



「姫の親父さんに迷惑を掛けてしまった」



事情を知った

ゆみゆみの機嫌の悪い事ワルイコト・・・


「女(先生)、聞こえねーんだよ、〇ソ漏れてんのか?」などと、教師に向かって言ってはいけない暴言を吐き垂れる始末で


更には


クラスメイトに

ひたすら重いプレッシャーを掛け続けて


教室から追い出してゆき


気付けば



私達2人以外には

誰も居なくなってしまっていた。




先日よりもヒドイな・・・。




余りにも

度を越した行為に見えたから



私からも

ゆみゆみには注意したんだけどね



やっぱり

それは良くないって・・・。



でも

「自分はどうでもいい」って言って


反省してくれなくて



逆に私に


微笑んでみせた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


話し合いが気になって仕方が無かったけれど


私に出来ることなんて無いから

家族として終わるのを待つ事に決めた。



長引きそうだけど・・・


大丈夫かなぁ?



ゆみゆみの処遇が気になる・・・・。



ところが

想像していた時間よりも

かなり早く終わって


程なく


お父さんとゆみゆみが会議室から出てきた。



2人は満足げな表情を浮かべていて


それを見て


私はなんだかホッとしてしまった。




良い結果が出たのかな?・・。






そんな私を


見つけるや否や、お父さんが

「お前、こんな時間まで何してるんだ?」って軽く叱りながら


近付いてきた。



ゆみゆみは私に向かって親指を立てる。



大丈夫だったんだ・・・



再度安堵する。





「私にだって出来る事がある」とお父さん


「親を当てにして欲しい」と言いながら

頭を静かに撫でてくれた。




なんかホロっときちゃったな。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


翌日から状況がかなり?変わってビックリした。


暴行とかあからさまな嫌がらせとかが


ピタリと止んでしまった。


無論上履きも遠足しなくなった。


消しゴムも飛んでこない。


と言って


歓迎されている訳では無くて


つまりは


異世界風に言うと

物理攻撃は無効化されたけど、精神攻撃は有効って感じで


【無視】に一貫されたみたい。




けど全然違うな


私が気にしなければ問題ない。






ありがとうゆみゆみ



そしてお父さん。




それから数か月経った後に、その話し合いの内容が分かった。


お母さんが教えてくれて


「私はこの学校に一個人として援助しております。寄付金であったり、防犯の為のカメラの設置であったり、学校に通われている全てのお子さんの身の安全のため私は努力を惜しみません。先生方におかれましても、これ以上に無くご安心頂けるものと自負しております。隅々まで、且プライベートは抑えつつ網羅したと考えております。しかしながらそのカメラに写っているものは私の娘をイジメている映像ばかり、先生方におかれましては、何も対処をしないばかりか目を瞑っておられるご様子。もしも問題になる様な映像が無かったとするならば、いや、そうなのでしょう、それならば、文部科学省や岡山県警察本部に相談してもいいのではないかと考えておりますが、いかがでしょうか?。

今回の議題に関しましても、娘が不憫だと勝手に思った私が、古い友人である 太田 祐実さんへお願いをして、遠方からではございますが、無理を承知で来て頂きました。良き理解者なものですから。

私の独断でお呼びしました。


確かに大田祐実さんへの聞き取り上でも

反省すべき点は散見されました。

ですから行き過ぎた行動に関しましては、その責任の全ては私にあります。

私の身勝手な行動により、先生方や保護者様方には多大なご迷惑をお掛けしました。

謝罪いたします。

その責任としまして、防犯カメラ等の設置も含めた援助は白紙にさせて頂ければと思います。

娘も転校させます。

太田さんにもお帰り頂きます。

只次の高校には理由として、カメラの映像を提出しますけど、宜しいでしょうか?」


お父さんがそう話したら、皆言い返さなかったみたい。


まぁこれだと


逆恨みしようがないわなぁ。


お父さん凄いわ。




ゆみゆみは結局1週間で帰っていった。

知らなかったけど、ゆみゆみは岡山市内のホテルに宿泊していたみたい。


それは

私に必要以上に迷惑を掛けない様にしたかった為で(あくまでもゆみゆみの見解)




まぁ1週間だけど


無理強いをさせてしまった。







あっ、それと小野祐未可さんは、知らない内に転校してた。


ん? おとうさんの影響かな?











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る