第1話 通学電車

JR岡山駅と宇野駅(岡山県玉野市 宇野)を結ぶ【宇野みなと線】

私は通学で宇野駅から乗ってる。

朝夕のピーク時で6両になる以外は2両で細々と走ってる。

しかも朝夕以外は岡山駅まで行かずに、途中の茶屋町駅で引き返すから疎外感がヤバい。たまに観光列車が走ってるみたいだけど乗ったことは無いな。

だって休日なんかはお父さんの車で移動するから、もっぱら学校用だね。

都会の人からみれば ドローカル な電車。チョッとハズいかも。


でも私には一番大事な場所。






学校は嫌い。


勉強は好きだけど、それ以外の教室とか体育とか部活とかお昼とかキライ。

先生も同級生もキライ。

皆私にはキツいからキライ。


下駄箱に有る筈の上履きはいつも無くて、必ずグラウンドに飛んでいってる。雨の日は最悪。

机にしても私へのDISり書きが酷い。使い回すのに無神経。

それから昼食の時とかトイレとか、必ず何かが飛んでくる。ゴミとかが。

ちゃんとゴミ箱に捨てて欲しい。

そういえば以前隠れてお弁当食べてたら見つかっちゃって、弁当箱ごとゴミ箱に捨てられたっけ。

「汚い、キタナイ」って言われながら。


私のお母さんに謝れ!







私は学校でイジメられている。





お母さんは敏感だから、傷とかはヤバい。

イジメが始まった頃は身体中傷だらけで、お母さんを騙すのにかなり苦労したなぁ。

薄々気付いてるとは思うけど・・・。

けどお母さんは聞かないでいてくれる。


「気を付けて」って、毎朝学校に行く時に声をかけてくれるお母さん。しっかりしてなくてゴメンね。


これ以上お父さんやお母さんに迷惑を掛けられないから、大人しくしておかないと。

特にお父さんは岡山じゃ一番大きい【中⚪銀行】の重役さんだから、迷惑かけちゃう。

たしか部下の人の子供とかが、私の学校に通ってるみたいだし・・・?

あーそうだ!私を一番嫌っている小野祐未可さんのお父さんも、たしか私のお父さんの直の部下って聞いたことがある。えっ!まさかの仕返し?

何の?


まさかね・・・



私の事を先生に相談した事があったなぁ。

けど何を考えているのかなぁ、ホームルームの時間に私の名前を出してイジメをするなと注意をするのって。ドン引きしたよ。


それ以来服で見えないとこばっか叩いたり蹴ったりしてくるなぁ。

子供産めなくなるよ。



本当に辛い。



入学して2、3か月迄はそんなことはなかったのに。

友達もできたのに。


何でだろう?


いじめが始まったら友達だと思っていた子達も、 いつの間にかイジメる側に移っちゃってて、私独りぼっちになっちゃったよ。


先生は見て見ぬふり。


私が悪いんだろうなぁ・・・・心当たりは無いけど。






だけどそんな私にも楽しみがあるよ。

嫌な学校にも行く理由をくれる楽しみ。

電車だけ乗って帰るのも有りって考えた事があったけど・・・。


いや無し無し!


お父さんやお母さんに悪いから。


あのキライな学校には行かないとね。


あっ!話が逸れたね。



その楽しみは、茶屋町駅から乗ってくる。


イヤホンで常に何かを聞いていて、頭でリズムを取ってる姿がカワイイ人。

何聞いてるのかなぁ?

いつか聞いてみたいなぁ。ナンテ



そして必ずその人は4両目に乗る。


だから私は3両目と4両目の繋ぎ目辺りで待ってる。


程なくして、乗り込んだその人を


私は恐る恐る見る。


ドキドキしながらそっと見る。

目が合わないかなぁなんて思っちゃって


キャー合ったら死んじゃいそう!


なんて考えながらそっと見る。


観れるだけ見る。


いっぱい目に焼き付けて置きたいからずっと見る。


この時間は本当に幸せ。


この時間が永遠にループしてくれればいいのにと、いつも心の底から思う。


無理を承知で思う。




その人も私も岡山駅で降りて、東口と西口に分かれて歩いてゆく。


何処の高校かなぁー。


同い年なのはなんとなく解る。


付け回ったらストーカーだよね?

んー今正にストーカー?


こんなことしてるのバレたら嫌われちゃうかなぁ?


それは駄目!


絶対に嫌われたくない!

例え命と引き換だとしても。



私はあの人が好き。


誰よりも好き。


本当に好き。


田嶋 夢 16才 ・・・・・・私。


この想い・・・届くといいな。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る