想う

@haretokidokimomo

プロローグ

 現在に至るまでに

幾度となく蘇る想いがある。


それはまだ自分が若く

夢と現実の

判別が付かなかった頃の・・・


いや


妄想や願望で取り乱した先に居た

俺にとってはかけがえの無い

一人の女性の事を考えるとである。


その感情はこの俺を

今も強く支配し続けていて


これは間違いなく罰であると

自分に言い聞かせないと

とてもではないが耐えられない程の代物だった。



そう


俺は

彼女の事を好きだった。



今もだと断言してもいい。




どうしても

忘れられないのだ。




彼女そのものが

【苦痛】になっているのだ。




そんな苦痛の狭間で

どうしてこんなにもゴールが見えないのかと

考える時もある。



彼女と死別し


星になった事実は変わらないのに



タイムマシンなんて存在しないから

過去には戻れないのに



何故だか不意に押さえ切れなくなり


もしかしたら・・・と

期待を抱いて



思い出の地になどに足を運び

影を泥臭く探して


答えを見付けようとする。



いや



彼女に何かを伝えたいのかもしれない。



どうやって?



・・・・・。



俺には

切欠が必要なのかもしれない・・。









思い出す度

頭の上から足先まで

チクチクチクチク と

尖った何かが

縦横無尽に刺し続ける。



それが気になって

日々の生活は惰性極まりなく


ゾンビと言ってもいいのかもしれない。



只々時間が来たら目を開け


腹が減れば

適当に何かを口に入れ



就業の時間が来れば

職場の椅子だけを目指し


気が付けば

帰宅時間となり


一瞬で

ベットに寝そべったと思えば


寝たふりをして

夜が明けるのをひたすら待つ。






休みの日だろうがどうだろうが

仕事以外に

家以外を出歩く事など考えすらなく


楽しみなどは作らない



いや


創れない。


只々

自分の部屋で



彼女の事を考えて



ゴールの見えないコースを走る。



これでいいのか・・・



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




そういえば数日前に

俺が勤める会社に

1人の女性が入って来て


同僚が囲って

「おーかわいいじゃん」とか言って

べた褒めしていた時も含めた

不思議な体験を話したい。


俺も当然すぐ傍に居て

その子を見ていたのだが



不思議なことに


俺はその子の記憶が全く無いんだ・・・。


声すら判らず


何だろ?

煙みたいなモノに

体全体を覆われている感じで


存在自体の認識が皆無だった。



確かに

ここ数年まともに寝てはいないし



前述の様に

苦悩もしている。



だがしかし

もし

それが理由ならば



何故

他の人間は認識できるのだ?


しょうもない癖までも知り得る奴がいるというのに



彼女には

言ったように、声すらも印象が無い。




そして

それで終わりではなくて




更には

他にも数名

思い出せない人物が居たのだ。


会社以外の


道行く人の中


店の店員の誰か



稀な例では

ポスターの画像とか





そう

全員じゃなくて



特定の人だけみたいなんだ。





自慢じゃないが

俺は記憶力は良い


半端なく・・。


あー


今もそうだと・・・・思う。



高校時代は

それを鼻に掛けていたし


将来への投資材料にもしていた。



言いたいのは



判らない筈が無いという事で




靄が掛かるなど

有り得ないのだ



病気じゃない限り・・・。





今日も今日とて

皆と会話はするし

その子とだってする。


ちゃんと会話は出来ていると思う。



間違いなく


目の前でだ。




なのに


どうしてだろうか

印象は

煙のままで変わらないのだ。





この現象は


彼女への【想い】と

関係しているのかと

俄かに思う。




そう思いたい。



そうじゃないと


いったい俺はなんなんだ!。





ーーーーーーーーーーーーーーー




随分前から

病院にも通っている。


会社の指示もあるが

成り行き上そうなる。



先生は色々とアドバイスをしてくれるが



全然覚えていない。


どうでもいい



そう


どうでもいいんだ。


何故なら

何も刺さらないからで


マニュアルでも在るかの様な

お座成りな答えしか提示しないからだ。



無論

俺の聞く姿勢もなっとらんのだが



言わずもがな

先生にもちゃんと

【彼女】の話をした。


なのにあの回答



金が勿体無い。





【鬱病】だと。




夢(個人の名前)・・・。




お前は実在しないのか?











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




私は今病室でベットに縛り付けられている。



というか



色んな機械を体に付けられていて

身動きがとれない、と言った方がいいのかな?


兎に角


ベットからは脱出出来ない。



まぁ



体が動かないのだから

正直無理なんだけどね。




口も動かせないから

喋ることも出来ないし



私、何なんだろうね・・・って

凄い落ち込むんだ。





こんな私じゃ

目の前に好きな人が来たって

「好き」って言えないから



もうなんか

四面楚歌って感じで


泣くしかないよね?



あーそうだ

涙も出ないんだっけ!


あー


もう


人間じゃないよね。




もう

とっても辛いんですけど・・・。









そんなこんなで最近の私は

【彼】がお見舞いに来たら


ずっとずっとずっと




彼を見ようと思っている。



ずっとずっと




彼を忘れない様に

ずっと見ようと思う




ずっと。




その好きな人はね

【森田匠】って言うんだよ。




どこで知り合ったかって?





知りたいの?



ふーん

そう



じゃあ話してあげようかな!




彼と出会った時からでいい?



えっ


私の名前?



えっとね



私は田嶋夢


高校生なんだよ。











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