第31話 神祖の大聖女の力 ①
ご飯を食べた後、夜になる前に、皆でアルドに出荷してもらう用のスターシアを収穫してしまおう、ということで、私たちは庭のスターシアの収穫をしていました。
私は木に登り、手元に固定したかごにスターシアを一つ、二つと入れながら、聖女の結界を失ったリディス王国が、これからどうなってしまうのだろう、なんて考えていました。
いえ、考えるまでもなく、これから多くの魔物が国に侵入してくるはず。それでただですむはずがないです……私はどうしたら……。
「……さん、聖女さん、ねぇ、聖女さん! 聞いてるっすか!」
考え事をしていた私はアルドの声で我に返りました。
「え、あっ、ごめんなさい、どうしましたか?」
木の下からアルドとルカが私を見上げています。
「いや、もうかごがいっぱいになってるんじゃないかと思ってな。
こっちはもうある程度収穫が終わったぞ」
ルカの言葉に、私は手元のかごを確認しました。
あ、ほんとだ。もうだいぶ収穫がすんで、いっぱいになってますね。
ちょっと私、ぼーっとしてたみたいです。
「あ、私もかごいっぱいです」
「じゃあ聖女さん、降りてきてかごを一回おろしましょう。あとは俺がやりますよ」
とアルドが手を振ります。
私はええ、と返事をすると、ルカがかけてくれたはしごに手をかけました。
「ルチル、気を付けて降りてきてくれ。
……その、ちょっとぼんやりしているようだったから。
落ちないようにな」
少し心配そうに、ルカがいいます。
うーむよく見ていますね。確かにうわの空で考え事をしていたのは確かです。
でもまぁ、故郷に魔物が侵入してるとか、殺されるかもとか言われたら色々考えちゃうのも仕方ないですよね。
「ふふっ、わかりました。気を付けておりますね」
であった頃のように、ルカをつぶしちゃっても困りますからね!
私はルカが押さえているはしごから地面に降りてかごを降ろすと、まだとり切れていないスターシアの収穫を、アルドにバトンタッチしました。
アルドはかごを背負い、ルカが押さえているはしごを器用にのぼって木にあがると、私がとりきれなかったスターシアを一つ、二つともぎ始めました。
「それにしても、本当の聖女様とか、俺初めて見ましたよ。
雲の上の存在だし、そもそもよっぽどの式典とかじゃないと、表に出てきませんよね」
木の上から、アルドが雑談を投げかけてきます。
「そうかもしれませんね。
私達神殿のものは、あまり世俗に関わらないのが良いとされているので」
「確かに俺も直接聖女に会ったというのは、何かの式典の折に2,3度、という感じだな」
「ええー、先輩団長だったのに?ほんっとレアなんすね。
そうだ、聖女といえば、魔物除けの結界を張ってるっていうのは皆知ってるっすけど、ほかにもいろんな噂があるじゃないすか」
「え、どんな噂ですか?」
実は私あんまり自分の噂って知らないんですよね。気になるー。
「えーと、手足を失ったものがいるなら、その手足を再生させるとか。
あとは死者をよみがえらせるとか」
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