第18話 ルカの帰宅、ルカの恋人?



◇◇◇



家の扉があく音がして、私は目を覚ましました。しばらくで部屋のドアをノックする音。私が返事をすると、


「遅くなってすまなかった」


といいつつ、荷物を背負ったルカが私の部屋に入ってきました。


「ほい、まずはこれを飲んでくれ」


「ポーション?

え、もしかして町までいってくれたんですか!?」


「ああ、君が俺を人間にしてくれたからな。

魔物の類は森を超えられないが、今の俺は一応なりは人間だしな。大丈夫だった。

だが意外と遠くてな、行きも戻りも、思ったより時間がかかった。

馬でも欲しいところだ。

まぁそんなことはどうでもいい。ほら、飲んだ飲んだ」


言われるままポーションを飲めば、みるみる私は癒えていきました。


「……治りました!」


「良かったな」


「はい!」


にこにこ私を見るルカに私もにこにこします。


「それじゃあこれは食べられるか?」


ルカが取り出したのは、小さな紙袋、そこからふんわりと甘い匂いがします。

包み紙にはマリアおばあちゃん、と書かれていて、私は気が付きました。


「こ、これ、有名店のアップルパイじゃないですか!

女子に大人気のマリアおばあちゃんのアップルパイ……!!聖都で休日は1時間並ばないと買えないものですよ……!」


「ああ、朝一で並んだ」


ルカの言葉に、思わず吹き出してしまいました。


「ふふっ、そっか、これを買うためにあなた、並んでくださったんですね。

ありがとうございます」


「何を笑っているんだ」


「ルカがアップルパイを買うために女の子たちの列に並んでいたかと思うと、可愛くて」


「そりゃどうも。ほら、食べた食べた」


とルカは私にアップルパイを手渡し、自分も一つあけました。

二人でアップルパイを食べると、ふふふと私達は顔を見合わせました。


「美味しい!」


「それはよかった」


ルカは満足そうににこにこしました。


「本当はアイスクリームものせたかったんだが、それはそのうちに」


「本当に!?ふふ、約束ですよ」


私もにこにこしました。


「ルカみたいなお兄さんがいたら楽しいでしょうね」


「そこは恋人とか言った方がロマンがあると思うんだが……。まぁ楽しい兄をやる自信はあるな」


それで私は思い出しました。アップルパイの美味しさで一瞬忘れていましたが、あの不思議な女性、つまりここに夢渡りをしてやってきた彼女のことです。


「ルカ、そういえば、あなた恋人がいるのですか?」


「は?

どういうことだ?」


「あなたが出かけている間、ここに女性がやってきました。

あなたに会うために、夢渡りという魔術を使って。そこまでしてくるのは大概恋人と相場が決まっています」


本人も恋人っぽいことを言っていましたし。ルカは素敵なひとですから、まぁ恋人がいるのも当たり前でしょう。


「夢渡り?」


「体は別の場所にありながら、魂だけで移動する魔術です。

とても上位の魔術師しか使えないものですよ。そこまでの術を使ったのは、あなたにどうしても会いたかったからなのではないでしょうか」


「ふむ……何と名乗ったんだ」


「名乗りませんでした」

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