第2章 追われるルチルと夢渡の彼女

第12話 【SIDEララ】大変!聖女の結界が消え、王国がピンチです!


「ねぇララ、あのサラって女マジでド級のくそ」

「ちょっと、その言葉遣い神官長さまにきかれたらぶち殺されるわよ」

「じゃあ言い直すわね。あの女性ほんとうに神がかったレベルの厄災」

「わかる~でもあんまり言いすぎない方がいいよ、誰がきいてるかわかんないし」


私、ララは怒れる巫女の同僚をたしなめつつも、ここのところざわついている天明宮の巫女たちについて思いをはせていた。


なんでこんなに天明宮の巫女の皆が悪態をついている、じゃなかったざわついているかというと、新聖女、つまり聖女代理サラの性格がわるくかつ無能だったからである。


聖女だったルチル様の代わりに遣わされた、サラという女性は、よく言えば優雅な物腰、悪く言えばなんだか鼻につく喋り方をする見た目は非常に美しい人物で、どうやらオズワルドの新恋人らしい。

ていうかルチル様という婚約者いるのに恋人作ってるとかオズワルドはアホでは。


『皆さん、わたくしが新しく聖女となったサラ。

貴族である私に平民出身の巫女が仕えるのにふさわしくありません。あと、前の聖女に仕えた方々は出て行って』


との一言で、ルチル様に使えていた上、平民だった私はやることをなくしていた。


「なにあの高飛車貴族女」

「ほんとむかつくね」

「まーあのオズワルドの彼女なら納得」

「やることなくなっちゃったじゃん!」

「ルチル様大丈夫かなー」


など平民出身&ルチル様つき巫女仲間と愚痴りつつ、とりあえず朝の礼拝をし、その後は皆でおにごっこ、かくれんぼ、サラの物まね大会など、数日間は神殿で一通り繰り広げたあと、私は相当ヒマしていたのだが、本日は神官長さまに呼び出されていた。


めちゃくちゃめんどくさい予感がする。

こういう予感は外れないのであんまり行きたくなかったが、神殿を統べる神官長さまの呼び出しとなれば、行かないわけにはいかないのが下っ端巫女の辛いところだ。


「ララ、よく来た」


自室にいた神官長さまは、やってきた私を見るなり立ち上がり、傍に来るように、と私を手招きした。


「ルチル様がいなくなってから、オズワルドがこの国の結界を張るため、急遽聖女の代わりを立てただろう。あの聖女代理サラのことだ」


「はい」


私は何の話が始まるのかと思いながら、とりあえず素直に返事をしておく。


「昨日、聖女代理サラが張った結界がほころびた。

辺境の村々の中でも最も大きなシエスラにも魔物が侵入し、内密に騎士団が大がかりな討伐に出たそうだ」


「はぁ?

『わたくしには聖女の力があるのです!』

とかあんなに自信満々に言ってましたよねあの人」


「あの人ではなく、聖女代理、と言いなさい」


「……あの聖女代理、私から見ても聖女としての力は無いように感じてました。

そもそも、聖女として結界をはるには、数年にわたる修行が必要ですが、それすらもしていない彼女に結界がはれるわけがないのです。

あんなにわかもの貴族がルチル様の代わりになるはずなんてないですもんね!だからこんなことが起きるんですよ!」


はぁはぁ、思わず鼻息が荒くなる私なのであった。


「まぁララ、気持ちはわかった。

それでだ。明朝、今回のことについて、王への御前報告がある。サラ様にお前がつきそうように」


「んな、何でですか!?

私は平民なんで。聖女代理様は平民がお嫌いみたいですし無理です。

聖女代理様がなんていったか覚えてます?

『貴族である私に平民出身の巫女が仕えるのにふさわしくありません』

ですよ?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る