第2話 魔の森へ

◇◇◇



さて、廊下をかけだし神殿の裏口から外にでたものの、行くところがありません。


王に訴える、という手もあるにはありますが、王命である以上、オズワルドとの婚約破棄も、聖女という地位を失ったことも、覆えらないでしょう。あの周到なオズワルドが根回ししないはずはないでしょうし。


というか、言いたくはありませんが、オズワルドは無敵なのです。

聖女は結界を貼ることにかけてはぴか一ですが、こと魔術というとそう能力が高いわけでもないので……。


祝福とか加護とかの聖なる力は、魔術とはまた別の魔法なのですよね。

……そのせいで、魔術師オズワルドには誰も逆らえません。今すぐ何とかなるというのは考えないほうがいい。


しかし、9つの時からこの神殿に暮らしてきた私は、出ていくと言っても行くところがありません。親も亡くなっているし。親戚はいるには居るらしいのですが、顔も名前も知らないし……どうしましょう。


『困ったら森へ行きなさい』


いつかお母さまが言っていたことを私は思い出しました。


森とは、神殿裏から、モンスターたちとの住みかをわける中立地帯まで広がる魔の森のことです。


この森、昔は神殿の管轄の聖なる森で、今はめったにみられない妖精たちの住処だったらしいのですが、私がずっと子供だった頃に魔物を封じた以降、魔の森として恐れられ、今は私達人間をはじめ、どんな生き物も住まないと言われているいわくつきの場所です。


今でもこの森には封じられた恐ろしい魔獣がいて、夜な夜な森を駆け回り、生き物を見つけ次第殺しているという噂なのです。


森は深く、私が想像もつかないくらい広いと聞きます。が、入口は神殿のそばにあるのです。茨の魔法で厳重に封じられていますが。



◇◇◇



というわけで、今私はその入口に立っておりました。


これでも私は聖女です。封じらている森の結界をこじ開けられるんじゃないかしら?多分。


「私の力に応えよ、開け」


私の聖なる力に応じて、森の結界は、その場所だけゆるみました。


ふふっ、意外とできるじゃないですか、なんて思いながら、私は森の奥に向かって歩き出します。


まぁ、魔獣がいるにしても、私は聖女です。結界によって退けるくらいはできるでしょう。もし退けられなくても……。

怖いとは思いませんでした。


ただ、聖女の地位も、オズワルドとの婚約を破棄されたことも、森では誰も笑ったり私を後ろ指さしたりしないだろうな、と浮かび、それだけは嬉しいと思いました。


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