第7話 かっこよく剣を振る狼さんと、森の探索とスターシア
ご飯の後、好きに過ごしてくれ、俺は構わないからという彼の言葉に甘えて、私は森と家の周辺をぶらぶらと歩くことにしました。
もともと着ていた装飾の多い聖女の服は動きにくかろうということで、「俺のおさがりだが」とルカが服を貸してくれました。
少しぶかぶかですが、随分動きやすくなって元気100倍です。なんだかこの服、男の子みたい。ふふっ、身軽~!
それにしても、昨日まで聖女として朝から晩まで毎日祈っていたので、こんなにやることがないのも久しぶりです。
落ち込みはしましたが、仕方ないことは仕方ない。気持ちを切り替えていきましょう。今できることをやるのみです。
ついでに木の実とかキノコとか、何か食べる足しになるものが見つかればいいなーなんて思いながら、広い広い呪われた森の中を気まぐれに歩けば、小さな川を見つけました。
そういえばルカが、近くの川から水をくんでいるって言っていましたが、ここのことでしょうか。
綺麗なお水が流れていきます。ここで、あとでお風呂に入りましょう。
私はもうしばらく森の中を歩いてみました。
どこまで行っても鳥の声もしなければ、動物一匹すれ違いません。虫の姿もありません。確かにこの森に、何の生き物もいないというのは事実のようです。
となると、お肉やら何やらは町から調達したほうがいいでしょうね。
なんてことを思いながら、私はグミの実をみつけてとり、食べられる小さなキノコをいくつか見つけてとり、ついでにベリーを摘んだり、あっ、お砂糖があればジャムも作れますかね?これでも一応料理は上手なんです。なんて考えていると、途中にまだ若く小さなスターシアの若木があるのを見つけました。
「こんなところに……!」
私は思わず声を上げました。スターシアは、食べた人の能力値を一時的に底上げするという魔法アップの実、非常に高値で取引される果物です。
しかし、その栽培はとても難しいのですよね。まだ人工栽培に成功していないんですよ。王都の植物学者が必死に研究しているという風の噂をききましたがどうなったんでしょう。
さてさて、この小さなスターシアの木、2つばかりもう実がなったのか、しかしその実は熟して、木の下に落ちて干からびていました。
私は、とりあえずそれも拾うことにしました。そして、またこの場所に来れるように、近くの木々に印をつけつつ、いったん帰宅することにしたのでした。
◇◇◇
ルカの家に戻り、採取した食材をテーブルの上に置いてルカを探すと、ルカは家のそばで、剣を振っていました。
それはなかなかさまになった姿で、私は部屋からしばらく眺めていました。
「ああ、帰っていたのか」
「はい。綺麗な型ですね」
私は時々、祭日に神殿を守る騎士団の剣捌きを見ていましたからね。彼の型がとてもきれいなことは良くわかります。そういえば、彼も騎士団にいたって言ってましたものね。
「いや、だいぶ鈍っている。剣を握るのがしばらくぶりだからな」
「そうなんですか?」
「ああ、ほらルチルが来るまでは手が……剣を握れる手ではなかったから」
ああ、なるほど。あの肉球の手では、剣術は難しいですもんね。
「そんなわけで、俺がこうして剣の鍛錬ができるのも君のおかげだ」
彼は私に微笑みました。品のある顔立ちで微笑まれると、ちょっとドキドキします。まぁあの天明宮には男子は長老のおじいさんしかいませんでしたからね。
こんな若者と接するのは久しぶりです……。
まぁ私も若者ですが。私の中にこうもミーハーな気持ちがあったとは……。
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