第6話 犬耳イケメンさんと朝ごはん。

私は目を覚ましました。朝の光がまぶしい……。ここはどこでしょう、朝の天明宮……にしては静か……。

……ああそうか、狼さんの家に連れてこられたんですっけ?


私は寝ぼけていたようです。

我に返ってベッドから置きると、身支度をある程度整え、階下へと向かいました。


「おはようございます」


「おはよう。嫌いな物はあるか?」


起きるとご飯が作られていました。いい匂いがします。卵焼きかな?


「ありません」


「よかった、じゃあ朝ごはんにしよう、座ってくれ」


私は言われるまま台所の椅子に腰掛けると、料理する彼を眺めていました。

それにしても、卵や牛乳もある……どこから調達しているのでしょう。昨日の彼の話では、ここから出られないような口ぶりでしたが。


「いやあ、誰かがいるのは久しぶりだ」


パンと牛乳、ルッコラのサラダと、干し肉が何枚かと、ベリーの実が盛られたお皿。彼は卵焼きを器用にフライパンから二人のパンの上にのせると着席しました。


「さあ食べてくれ」


簡素ですが、おいしそうな朝ごはんです。私は礼を言い、食べ始めました。


「なあ君、これからどうするんだ?」


どうする……?どうしましょう。

そんな顔をしていたのか、彼は私に気さくに微笑みかけました。


「何も決めていないのなら、ここには好きなだけいていい。俺にできることは宿を提供し、料理を出すことくらいだが、それでよければ。

ただし、行く当てがあるのなら、こんな寂しいところにいるのはすすめない。森の出口まではおくろう」


「私がいなくなったら、あなたは呪いを何とかしてくれる人が居なくなってしまうのでは?良いのですか?」


「確かにそうだが、だからといって君の自由を縛るというのも理不尽だろう」


この方は多分、すごく良い方なのでしょう。

私は微笑みました。


「私は、王命をもって追放されました。

……身内のところに王命で追放されたものが行けば、迷惑をかけるでしょう。

そもそも親も兄弟もいないのです。行くところがありません」


「ふうむ、そういうものかもな。しかし王命で追放とは何をやったんだ?」


同情するように、彼は私を見ました。


「あはは……それはその……まぁそのようなわけなので、もしあなたが許してくださるなら、しばらくどうするか決まるまで、ここに置いていただけると助かります。自分のことは自分で、」


「あ、いやいや、俺としては願ったりかなったりだ。何をする必要もないよ。好きなだけいるといい。

俺としては、君がいてくれて良いことはあれ困ることはないし、そうだ」


「何ですか?」


「なぁ、そういえば君の名前を聞いていなかった」


「私もあなたの名前を聞いていませんでした」


私達は顔を見合わせて笑いました。


「俺はルカ」


「私はルチルです」


「これから宜しく、ルチル」


「ええ、宜しくお願いします、ルカ」

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