第36話:コクーン1「集結」
それは生活感のない部屋であった。10畳程の広さにベッドが2つ、内の1つには、もう人の姿はなく布団は綺麗に畳んであった。
窓から見える空は白を帯び始め、鳥の囀りが聞こえる。
「もうこんな時間、朝食作らないと…」
前髪を切り揃えた若い女性が、部屋の扉をそっと開けて入ってきた。
彼女は端にある自分の荷物の中から白いエプロンを取り出し、身につける。そして、部屋を出てしばらく歩き、厨房に入りその一角で料理を始めた。
彼女は手際よく調理を進めていき、30分と経たない内にレストランで出てもおかしくないほど、気品漂う料理を3、4品作り上げた。
それを料理を運ぶ用のカートに乗せて、自分の部屋に帰ってくる。
「ヘレナお嬢様!ヘレナお嬢様!時間ですよ!起きてください」
「んぁ?」
ボサボサの髪のヘレナと呼ばれた少女は間抜けな顔でベットからゆっくりと体を起こした。
「さあさあ!もう朝食はできてますよ」
ヘレナは目を擦りながらトボトボと歩いていき椅子に腰掛ける。すると、机に先程の料理が並べられた。
「いただきまぁす」
ヘレナはナイフとフォークを手に料理を口に運ぶ。
「おぃひい…ですわぁ…」
締まりのない声で嬉しそうに笑った。
パシャッ
「ふぃ!?」
そんな顔にフラッシュがたかれた。
ローズがヘレナの正面でレンズが迫り出している直方体のハコを彼女に向けていた。
「あわわ!フラッシュが!」
「またカメラ…いい加減しなさい!ローズ!」
ヘレナはローズと呼んだ女性の顔面に正拳突きをくらわせる。ローズは鼻血を噴き出し床に倒れたが、その表情は緩んでいて満足気であった。
「あー血が止まりません」
「自業自得ですわ」
鼻をつまみむローズと呆れるヘレナがとある一室に並んで座っている。
「でも、お嬢様の寝起き顔は最高!あ"まだ鼻血でできだぁ」
「現像する前に、絶対燃やしてやります」
「お?ヘレナじゃねえか。お前テスト終わったんじゃねえのか?」
扉を開けて入ってきたのは射撃をメインとする赤ずきんデリーナとそのパートナーであるレン、続いて、
「デリーナ、入り口で止まらないで…入れない」
「悪い悪い」
デリーナの後ろから戦斧を操る赤ずきんメイジーとそのパートナーのクロエが顔を出していた。
「入るぞ」
皆席についた時、ちょうど最後に入ってきたのは白髪の老婆。背筋がピンとしておりその佇まいには貫禄があった。そして彼女は正面の壇上に立ち、
「シャスール機関本部長のヴェリテだ。これから今回の強化プランについての概要を説明する」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます