第30話:フィスト1-13「作戦会議」

 普段物置になっているあまり使われない大部屋にシャスール機関の関係者が20名ほど顔を並べていた。議題はもちろん、


「はい。今後の特異体への対応について話し合いたいと思います。はい」


 丸メガネのニーニャが部屋の正面に立ち、会議を開始する。


「はい。現在、残ったヒトガタで特異体の空けた穴を警戒にあたっていますが、今のところ特異体の姿は確認できていないません。はい」


 昨日の襲撃以降、特異体は姿を消したままだった。室内では意見が交わされる。


「聞いた話だと赤ずきんに首が捻れるほどの怪我を負わされたらしいな。怪我の修復に時間がかかっているのでは無いか?」

「だとしたら今がチャンスだ!」

「とはいえあの穴に入るのは危険だろう」

「ならば爆破してしまえば良いのではないか?水攻めでも良い」



 それを聞いて一人の男をが手を挙げ立ち上がる。

 彼は昨日特異体と直接戦闘したシャスール機関第4支部防衛ヒトガタ部隊の唯一生き残りのヒトガタ乗りだった。


「私達は特異体が穴に逃げた時、榴弾で一斉攻撃を行いました。しかし予想をはるかに崩落が起きました。奴は我々の足元を崩落するように穴だらけにしていたと予想されます。我々は特異体に誘導されていました。迂闊な穴への攻撃は被害を広げてしまう可能性があります」


 ざわめきが室内を満たす。

 ニーニャが補足する。


「はい。防衛隊の落ちしまった大穴の底には私たちが用意していた対特異体用のトリモチが使われていていました。車両から入手したものを使用したと考えられます。崩落の件も含め知能の高い特異体だと考えられます。はい」


 皆頭を悩ませる。


「今の戦力は?」

「はい。現在の戦力は赤ずきんのヒトガタ、防衛隊のヒトガタ合わせて6機が仮眠をとりながら交代で警戒にあたっています。はい」

「やはり、待っているのは得策では無い。攻めるべきだ」

「ワタクシが先行して入ります」

「お嬢様無謀過ぎます!」

「しかしそれしか無い。待っていても相手のペースで攻められるだけだ!今ある戦力を最大で投入するべきだ」

「増援を待ってみては」

「特異体が待っているとは限らない」


 白熱する討論の中、華奢な手が上がる。ニーニャだった。


「はい。ヘレナさんが許すなら、私に案があります。はい」






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