第17話:フィスト プロローグ

「見つかっちゃった!今度はあたしが鬼!」


 白群の美しい瞳を持つ少女は色鮮やかな装飾に彩られた廊下をはしゃぎながら駆けていった。


「お姉ちゃん好きでしょ? 紅茶の入れ方おしえてもらったんだ! 」


 少女は純白を金で縁取ったポッドを片手に得意げに笑った。


「頑張ったんだよ!なでなでして!えヘヘへ」


 少女の表情は明るく幸せに溢れていた。


「『さすがですわ』エヘヘへ、お姉ちゃんのマネ!」


 少女は悪戯な笑顔を見せた。



「もうちょっとかかる? 大丈夫ここで待ってるから」


 少女は大きな扉の隣で、壁に背中を預けていた。


「ごめんなさい。お稽古の邪魔をするつもりは」


 少女は涙を目に浮かべ、部屋を出ていってしまった。


「今日も遊べないの? お話は…ダメなんだ…わかった」


 少女は片手に持ったリボン付の包み紙をさっと後ろに隠した。



「お姉ちゃん?どこにいるの?」


 少女は暗い部屋の中で呼びかけた


「お姉ちゃんそこで何をして…」


 少女は“それ”を見てしまった。


「いやぁぁぁぁぁ!!」


 少女の声はもう届かない。

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