第5話 「3橋学園文芸部合同文化祭」



 晴れ渡ったその日は「3橋学園文芸部合同文化祭」でした。

 水道橋すみれ女子学園の入り口には色とりどりの紙花のアーチが設けられておりました。2校が女子中学、1校が共学でしたので、この文化祭にはほとんど女子の中、男子も混ざっておりました。

 午前中、琴乃さんはすみれ女子学園のブースで「すみれ花かるた」の物販をしておりました。琴乃さんたちの部員が考えた俳句に、美術部員が絵を添えた、52枚のかるたでした。


 その中の琴乃さんが作った俳句は、、、、



 下駄箱にはみ出た右足 すみれ咲く



 でした。


 琴乃さんのように、すべての札には、花の名前を詠んだ俳句が書かれて居りました。

 琴乃さんは、来た人に絵札を見せながら、自分の俳句を可愛く読んで聞かせておりました。




 午後になり、出し物の時間になりました。


『すみれ色のスマホ』と云うのが、琴乃さんたちの出し物でした。作者は琴乃さん。琴乃さんは茉莉先輩の手前、出し物を失敗させたくありませんでした。



 どうしよう、どうしよう



「琴乃さん、始まるよ」

 部員のヤマダが呼びました。




「あっ」

 そのとき、視界の端にうさぎ耳が見えました。



「ちょっと待って」


 琴乃さんが追いかけると、その人物は立ち止まって、振り向きました。


「ブックまん、、、、」



「やあ、琴乃さん。そなたに渡したいものがある」


 ブックまんが取り出したのは、、、。

 うさぎ耳のお守りでした。


「琴乃さん、大丈夫。うまくいくよ、ぜったい」




 ブックまんはそれだけ云うと、琴乃さんの手を握り、そして立ち去ってしまいました。

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