第12話 業務調整

「先輩、たすけてください!」

オフィスで仕事中の遼の元に後輩の名取 新が駆け込んできた。

新は新卒で入社後、遼の部署に配属されて3年目の若手エンジニアである。

遼は新人の頃新のトレーナーとして教えていたことがあり、何かと頼られていた。


「どうした?」

「先輩、営業の田原さんの説得をお願いします。。。」


営業の田原さんとは彩香のことである。

新がすすめているプロジェクトの担当営業が彩香であることは遼も知っていた。


「いや、そのプロジェクト俺参加して無いじゃん。」

「そうなんですけど、、うちのサービス使えなくなったから納期延ばさせてくれって説得する自信がなくて。。」

「んー、わかったよ。会議には参加する」

「すみません、会議室着いてきてください。」


新に連れられた遼が会議室に入ると、彩香が一人待っていた。遼を見ると軽く会釈する。

職場は職場で切り替える。これも二人のルールだった。

彩香と新が話始めた。


「納期を延長させてくれと言うことですが、顧客に延長かけ合うなら理由が欲しいんです。」

「サービス利用できなくなったからなんです。。」

「サービス利用して効率よく進めると言うのがうちの提案したプランでしたよね?」

「はい、でもサービスが使えなくなってしまって。。。」

「なぜですか?」

「当初は使うつもりで進めてたんです。ただ、サービス利用した場合にインターフェースのアクセス制限が問題になりました。なのでサービス利用するパターンで条件クリアできないか考えていたんですが難しいと言うことなので、使えないことになりました。」

「んー。。うちのサービスが問題なんですか?」

「えっと、サービス仕様がお客さんの要望を満たしてないというか。。」

「提案自体がまずかったと言うことですかね。。どうやって説明しようかしら。。」


後輩の立場もあるし教育の側面もあるため、だまっていた遼だったが収束しなさそうなので口を挟む。


「話遮ってすみません。サービスは使うんですけど、使い方を変える必要があるんです。」

「と言うと?」

「もともと顧客が想定していた使い方は、顧客内のルールに反するということで顧客都合で使えなくなってしまったんです。ただ、方式変更することで要件はクリアできる見込みです。」

「なるほど。。」


(さすが先輩。。なるほど、話の主旨、ポイントをまとめて話すことが大切なのか。)

話しはじめた遼を見て新は安心すると同時に感心していた。

遼からの説明を受けた彩香の顔は理解の比率が上がってきており、どうやら納得させらそうな雰囲気である。


「まとめると、我々の提案は振り飛車だったんですが、先方のポリシーで飛車は振れないと言われた、と言うことです。」

「。。。え?」

「それはひどいわね!」

「。。。え?」


納得した。


「居飛車に戦型を変えて勝つためには計画の見直しが必要なんですよ。」

「なるほど、理解しました。顧客都合で方式変更させられている。しかし、顧客要件はクリアするつもりである。ただ計画の変更が必要で一月ほど納期を伸ばしたい。と言うことで理解あってますか?」

「はい。顧客に伝えて納期調整してもらえると助かります。」

「わかりました。では調整してきます。」


遼と彩香が話をまとめていく。二人は納得できる会議ができたようで、お互い満足気な表情だ。

話がまとまり、颯爽と部屋を出ていく彩香。

新だけはなぜ最後まとまったのか急転直下の展開についていけていない。


「おし、話まとまったからこれでいいよな?」

「あ、ありがとうございました。」


遼もミッション達成、と満足気に会議室を出ていく。

調整ごとはうまくいったようだが釈然としない新が一人会議室に取り残された。


「ホントなんなん、あの夫婦。。」

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