第5話 納豆カレー
彩香が出かけた帰り、L○NEでのやりとり。
『今から帰るけど、駅前のカレー屋さんでカレー買って帰るね。何食べたい?』
『おーいいね。』
『私はチーズカツカレー』
『結構ガッツリいくね。俺はほうれん草納豆チーズカレーにしようかな。』
?マークがついた手足が生えてる香車のスタンプを彩香が使う。
『なに?どうかした?』
『りょーくん、なんか1つ変なトッピング入ってない?』
『ん?どれ?』
『いや、納豆って。。。』
背景に雷鳴轟く驚きのスタンプを遼が使う。
『あやちゃん?納豆トッピングが変といった?』
『いや変でしょ』
『このカレー屋さんの従業員トッピングランキングで上位に入る納豆が変とな。』
『りょ、りょーくん?』
『とりあえず買ってきて。いいから。』
『わ、わかったわ』
彩香は、遼の気配に不穏なものを感じつつ自分のカレーと言われた通りのカレーを購入し、自宅に帰った。
彩香が自宅に帰ると、普通の様子で遼が出迎える。
「ただいまー」
「おかえりー。カレー買ってきた?」
いや、やっぱり納豆カレー気にしてるわ、と内心思っている彩香。
「言われた通り買ってきたけど、、、」
「一口食べてみなよ。絶対わかるから。」
「いや、いいわよ」
自分の分のカレーも買ってきてるしそんな冒険する必要を感じない彩香はあっさりと断る。
しかし遼の熱量は彩香の想像以上に熱かった。
「ご飯前に一勝負必要だね」
「え?」
「俺が勝ったら納豆カレー食べてみて」
「う、うん。私が勝ったら?」
「冷凍庫のハー○ンダッツ抹茶味はあやちゃんのものだよ」
「のったわ。」
彩香はめんどくさいと思いつつアイスの誘惑にはあっさりと屈した。
「じゃあカレー冷めちゃうし早くやろう。10分切れ負けね。」
「おーけい!」
いつも通り負けても別になんてことない戦いが始まった。
将棋盤前に着座。
「「よろしくお願いします」」
先手彩香、後手遼。
「あやちゃん、今日は負けられないからね。」
「なに、りょーくんえらく気合入ってるわね。」
「納豆カレー布教のためなら鬼になるよ。」
遼としては負けられない戦いだったらしい。
しかし、戦いとしてはオーソドックスな進み方をしている。
形勢はほぼ互角。
駒もぶつかって、かなり戦況が混沌としてきている。
「これ、こうなって、いや一手負けるかな。でも。。。」
ぶつぶつ呟いている彩香を尻目に遼は時間をあまり使わずに指している。
だいたいいつもなら軽口が飛び交うのだが、遼が黙っているため会話にならない。
彩香の持ち時間が少なくなってきた終盤戦。
攻勢に出ようとしていた彩香に対して遼は手にしている持ち駒をどんどん自陣に投入しはじめた。
「うっわ、守るの!?からい!」
将棋の世界では防御を徹底して勝ちにこだわった指し方を、からいと表現する。
攻めようとする彩香の手を先回りするかのようにどんどん守りを固め、要塞化していく。
「ちょ、ちょっと勝つ気あるの?」
「この戦いは負けられないんだよ。どんな手を使っても絶対勝つ。」
「え?」
「持ち時間気にした方がいいんじゃ無い?」
「うえ、あと2分!?」
慌てて次の手を指す彩香に対してさっと防御を固める手を指す遼。
遼は5分以上残している。
「2分で攻め切れるかな」
「ああああ、言葉で揺さぶるのやめてえ!友達無くすよ?」
「あやちゃんいれば大丈夫だから問題ないよ」
「ああああ、ちょ、ちょっとりょーくんだまってて。」
3分後。
ピーーー。
チェスクロックが無情にも時間切れを報告し、彩香の負けが決まった。
「ううう、、、時間攻め、、、悔しい。まいりました。」
「「ありがとうございました」」
一礼。
項垂れながら彩香が呟く。
「いやあ、そんなまでして勝ちたかったの?」
「納豆カレーなので、辛さと粘りの融合を見せてあげようかと」
「。。。ま、まあわかったわよ。食べる。」
その後食べてみたら意外と美味しかったということであっさりと納豆カレー派に鞍替えした彩香なのであった。
機嫌を良くした遼によって冷凍庫のハー○ンダッツ抹茶味は2人で仲良く食べた様子である。
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