第28話 奴隷について

今日も僕とレイ君はいつものように僕の部屋でくつろいでいた。


僕はベッドに腰掛け、床で横になってだらけているレイ君に

異世界定番の気になるあの事を聞いてみた。

「レイ君に聞きたい事があるんだけどいいかな。」

「どうしたゆずるそんな深刻そうな顔して。」


レイ君は僕の真剣な表情に気づきだらけている姿勢を正した。

「正したのはいいけど寝転がりながら背筋伸ばしただけ!逆に難しい!」

「お、ちゃんとツッコンでくれたな。体を張ったかいがあったよ。」


そう言ってレイ君は立ち上がり姿勢を正した。

「直立不動!ピーンて気おつけ状態で!それが話を聞く姿勢?」

「ツッコンでくれてありがとう。」


今度はちゃんと床に座り姿勢を正した。

さすがに3回はボケないか…よかった。

あまりに冒頭でボケだすと中だるみして後半誰も読まなくなるからな。


ここで僕は素朴な疑問をする。

「異世界では奴隷っているの?」

「……何でそんな事を聞きたがる。」


レイ君が真面目な顔して僕を見据える。

ちょっとピリッとした空気が流れる。


「ぼ、僕的にはよく小説に出てくるから気になって…レイ君達の世界ではどうなのかな〜って。かな〜って…」

「……で?」


「奴隷にも色々いるじゃん?犯罪奴隷だったり、貧困で食うに困って奴隷落ちだったり…ねえ?」

「……続けろ」


「奴隷オークションなんかが裏で開催されたりして…能力を秘めた女の子を見つけたりして…してして。」

「……ふむ」


レイ君どっちなんだよ。怒っているのか怒っていないのか、気軽に話しにくいよ。

もっとお気軽に話したかっただけなのに…探り探り話さないといけない状態なの?

「隷属の首輪とか、魔法の契約書だとか異世界ぽい要素も定番だよね。…だよね?」

「………………」


無言ってどっちだよ!この話題止めたほうがいいの?続けていいの?

「今日の天気は晴れ時々くもりっていうより豪雨だよね。」

「………ゆずる」


「はい?」

「この世界でいう奴隷っていうのは人間でありながら所有の客体即ち所有物とされる者。人間としての名誉、権利・自由を認められず、他人の所有物として取り扱われる人。所有者の全的支配に服し、労働を強制され、譲渡・売買の対象とされたbyWikipedia という事であってるのか?」

「うん、そうだね。概ね僕の知っている範囲ではあってるね。」


「アリストテレスは「生命ある道具」と表現していたらしいな。」

「嫌な言葉だけど言い得て妙だね。」


「そういう事を含めて異世界の奴隷についてゆずるに教えてやろう。」

「う、うん、いいの?」

何を言うつもり?何か言いづらい事があるの?

えっもしかしてレイ君の過去が…


「異世界には奴隷なんていないぞ。」

「いないの。あっさり!じゃあ何でずっと不機嫌な顔だったの!」


「いや〜地球というのはなんて残酷なシステムを作り出す恐ろしい生き物だと改めて考え直していてな。」

「確かに残酷だけれども、ずっと昔の事…って事もないかな。今はもう…ないとは言い切れないけど。」

僕はものすごい歯切れの悪い返事をした。


「まあ、異世界でも昔はあったみたいだけど今はこっちで言う派遣社員みたいなシステムだな。農業や鉱山の力仕事だったり、風俗的なお仕事だったり、簡単な軽作業とかもある。もちろん本人の意思で仕事をしてもらう。だが犯罪者には人権はない。これだけは地球の犯罪奴隷の枠当てはまるかな。」

「なるほど何か聞いてると異世界の方が進んでる気がするよ。」


「まあシステムは一長一短あってどちらが優れているとか物差しで測る事はできないけどな。」

「そうだね。それにしてもよかったよレイ君が元奴隷だったとかいう話を切り出されたら僕どうしようかと思ったよ。」

僕がそういうとレイ君は床に体育座りで顔を伏せた。


「ど、どうしたのレイ君急にわかりやすいぐらいに塞ぎこんじゃって」

「……」

どよ〜〜〜んという文字が見えるほどのベタな展開だ。


「…嫌いにならないでくれよ。」

「えっ?」


「今から話す事を聞いてもゆずるは嫌いにならないでくれよ。」

「もちろんだよ。」

え、何話すつもり。まさか本当に奴隷だった過去話しを

今から4話ぐらい使って過去編として投稿するつもりじゃないだろうな。


やめてよ。その話し聞く間、僕の出番が全くないじゃないか。

ぜめて次話ぐらいに簡潔にまとめてくれよ。

などと邪な事を考えていたら。


「実はオレ奴隷がいたんだ、20人ぐらい。美人ばかりの性奴隷。」

顔を上げたレイ君はものすんごいドヤ顔で自慢してきた。


「てめええええええええ、ぶっっっころすううううううううう」

僕はつい本音があふれ出た。


「嫌いにならないでって言ったじゃないか!」

めっちゃいい笑顔で言う。


「それとこれは別なんじゃあああああいいいいい」

僕はショートソードを振り下ろした。


「正確にはみんな望んでオレの所に来たんだけどね、美女20人」

僕のショートソードを笑顔で白刃取りした。


「正確さは求めてない、結果がすべてじゃあああああ」

僕はショートソードに全体重を乗せて振り下ろす。


「ぶはははは、その顔いいよ!ゆずる最高の顔だぶはっ」

「ぐっぐぐっっっせ、せめて一太刀だけでもおおぐぬぬ」

僕は血の涙を流しながら押し込んだ。


「ぶはっ血の涙流すほど!ふん」

「あっ」

結局僕のショートソードはポッキリ根本から折られ引き分けに終わった(強気)


「機嫌直せよゆずる。ペネロスやるから。」

「毎回ペネロス渡せば機嫌が直ると思わないでよ!騙されないよ僕は。」

ペネロスを3つもくれた。

もちろんすぐ食べたよ。


「それに今度詳しく話してやるからさ、ゆずる好きだろ?」

レイ君が勝ち誇った顔で言ってきた。


そんな話を僕が好きで当然みたいな口ぶりだ。

そんな態度に腹が立ってレイ君に言ってやった!


「大好物です(ハート)」


僕とレイ君の絆はより深まったよ。

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