第14話 覇王の舞

ある日の昼休み中に僕はレイ君に白い部屋に呼び出された。

ちょうど僕がポテトを食べようと大きく口を開けた時だった。


何の前触れもなく呼び出された。

白い部屋に呼び出された時は身ひとつで呼び出されるため、食べかけの手に持っていたポテトは一緒に呼び出されなかったみたいだ。


だから俺はムシャムシャ食べた振りをした。

僕はポテトを食べているんだぞの体で食べた振りをしていた。


食べたつもりが空振りした気恥ずかしさからついごまかすために

形態模写をしていた体をとったのだ。

一言でいうならエアポテトだ!


しかし僕の身にもなってほしい18歳にもなって空振りしたのだ。

こんな恥ずかしい事が他にあるだろうか?


まだ1本目だったのにポテト。

そのポテ…


「ポテトポテトうるせ〜〜な、何回ポテト言うんだよゆずる!」

「違う違う、ポテ~イト」


「発音なんかどうでもいいんだよ!」

「急に召喚させられてその言い草!」


「悪かった。ゆずるの事なんてこれっぽっちも考えずにこちらの都合でお前の体を弄んだ事を謝る。」

「その言い方! 弄ばれてね〜〜し。都合のいい女じゃね〜〜し。」


「悪かったよ、後で業務用スーパーの激安お徳用冷凍ポテト5kg買ってやるから。」

「何で業務用スーパー限定? しかも何で冷凍ポテトなんだよ! おいしいけれども」


「もうポテトの話は気が済んだか?」

「レイ君が広げたんだろう。まあ、ふにゃけたポテトも好きだから後で美味しくいただくけれども。」


「じゃあここから本題に入るぞ。」

「ポテトを食うのを遮ってまで召喚したのもそれなりの理由があるんだろうね?」


「ああ、ゆずるには異世界に行ってもらう」

「……何て?ポテトに行く?」


「まだ、ポテト言うか。ゆずるには異世界行ってもらう。」

「よおおおおおおおっしゃああああああ。」

僕は喜びを爆発させた。


「きたあああああああああ!異世界展開きたよ!待ってたよ!」

僕は右手を天に突き上げ、生涯悔いない覇王と化した。

しばらく僕はレイ君の目の舞で“覇王の舞”を披露した。

ノリノリで自作の歌つきで“覇王の舞”を披露した。


「いや、そんな創作ダンスを見せられてもよ!そんなに嬉しいのか?」

「嬉しいでしょう。夢の異世界展開でしょう。成人男性200人に聞いたら128人は異世界に行きたいっていうと思うよ(当社調べ)。中学2年生に聞いたら201人が行きたいっていうし(当社調べ)。何で1人増えてるんだよってつっこむところやろう!その1人は担任の先生だよって中学2年生じゃ無いやないか〜〜〜い!」

僕のはしゃぎっぷりにレイ君はドン引きだ。


「そ、そうなんだ。うん、どうしよっかな〜」

「で、異世界って魔法の世界なんだよね。魔物とかと戦ってLV上げて無双系になる系?もちろんレイ君も来てくれるんだよね。レイ君と一緒なら初めからめっちゃ安全に異世界生活できるしね。うひょ〜〜テンション上がる〜〜」


「いや俺は行かないよ。ゆずる1人で行ってもらう。」

「は?ま、まあ考えようによっちゃあ一人で無双できなくもないか。もちろんレイ君のサポート次第だけど〜ハーレームーみたいな。叶えてくれる?みたいな。」


「こいつマジうぜー。あっ、つい心の声が漏れちゃった。」

レイ君絶対意図的に漏らしてるでしょ。

まあ、うざくてもいい!この際ポテトの事もゆるしちゃうぞ!


「異世界っていってもゆずるに行ってもらうのはダンジョンだぞ。」

「えっ?ダンジョン?ひとりで?」


「そう、ダンジョン。一人で。OK?」

「無理無理無理無理無理むりむり〜〜〜何で異世界いけると思ったのにダンジョンオンリーなのよ!」


「だからそれを今から説明するっていうのにゆずるが1人で覇王の舞を踊ったりなんかするから話がずれていくんだろ。」

僕はゆっくりとレイ君の目の前で“覇王の舞”を踊った。

時にはスローテンポを交えて…


…殴られた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ゆずるは弱いだろう。だからダンジョンで鍛えてきてもらう。」

「そういう事か。最初っから言ってくれれば僕は舞わなくてもよかったのに。」


「そこのドアは異世界のダンジョンに通じているからすぐにいけるぞ。」

「ああ、そのドアは異世界に繋がっているっていってたね。」


「とりあえず、餞別のひのきのぼうとたびびとの服、そして50Gだ」

「それドラ●エの王様の餞別っっ!」

この人本当に異世界人?って疑ってしまうほど日本に馴染みまくってるんだけど。

それよりこんな装備で大丈夫なの?ダンジョンって。


「ゆずるがダンジョンに馴染みやすいように、こちらのゲームと同じステータスとLV制にしておいたぞ。」

「えっ異世界にはステータスはないの?レベル的な概念も?」


「ああ。地球でもそうだろう?そんなのはない。もちろんスキルなんざ無い。」

「意外に異世界ってつまんないんだね。」


「いや、ゲームや小説を参考にされても…まあだからゆずるにはゲーム感覚で鍛えてもらおうとお母さんが夜なべして作ってくれたんだ。」

「それ絶対レイ君が作ったんじゃなくてお母さん=謎システム仕様でしょう。」


「それじゃあ、ステータスについて説明するぞ!」

無視された。

舞うぞ!






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