第3話 〜片桐祐介Side〜

「よしむらーーーーーーあああ、テメーはグズグズすんな」

俺は土下座している吉村の背中を足蹴にする。


「もう、お前明日から来なくていいわ。その代わり俺が貸した300万円明日すぐ揃えて持ってこい」

「そ、それだけは勘弁してください。家の借金で…」

「うるせえ、お前に用はないから部屋から出てけよ」

吉村は側近に引きずられ外に出される。


「木村、芳子にSNSにアップ用のランチ写真撮りに行かせろ。

どうせ股開くしか能が無い女だがそれぐらいならできるだろ。」

カッコよくて金持ちってだけでバカな女はすぐ股を開く。

なびかない女は薬を使って理やりやってやっるんだがな。

犯された事を知った時の絶望的な顔が俺の嗜虐心を刺激するぜ〜ククククッ。

しょせん世の中は搾取する側と搾取される側の2種類しかいないんだからな!


“じゃあお前は搾取される側だな”


「あー、なんだ。木村お前今なんか言った…」

俺が言葉を言い終わる前にドアが開かれた。


「誰が勝手に入っていいって言ったんだ。ノックしてから入れよ佐藤」

「相変わらず好き勝手やっているようですね、坊ちゃん」

「坊ちゃんはやめろ!くそが」

佐藤は本社の親父の右腕的存在。

主に荒事専門で昔は俺も厳しく指導される事もあった。

最近ではめったにこっちには顔を出さなかったのに何の用だ。


「坊ちゃんにとっては悪い話しともっと悪い話しがありますけど、どっちから聞きたいですか?」

「両方とも悪い話じゃねーかよ。どっちでもいいわそんなもんよ〜。

どうせどっかの女が俺を訴えるとかわめいてるだけだろう。

また金で押さえ込めばいいだろう。もしくは力で無理やり抑えるか。」

今までも、俺が無理やり襲った奴からたまに訴えられる事もあったが、

その都度暴力、圧力を使って押さえつけてきた。

世の中はお金さえ出せばいろいろと処理してくれる奴がいるもんだ。


「じゃあ悪い話しから。その通りでまた女性から婦女暴行罪で訴えられています。

今度は12名の連名で。ちなみに坊ちゃんの暴行に加担してた仲間も証拠を押さえられて訴えられています。」

「今回も押さえ込めばいいだろう、それがお前の仕事だ。」


「今回は無理ですね。証言も証拠もすべて押さえられていますし、お金で解決できる範囲を超えていますよ。

まあ今まで好き勝手やってきたんだから自業自得だと思いますけどね。」

俺はその場にあったガラス製の灰皿をつかみ佐藤の顔面めがけて振り下ろした。


ガッ

佐藤のかけていたサングラスが吹き飛び、額から血が出た。


「つべこべ言わずにいつものように処理しろって言ってるんだよ!」

佐藤は血が出ていても俺を睨むでもなくたんたんと言葉を発する。

「もうひとつのもっと悪い話ですけど、本社に脱税の強制調査が入りました。

まあ、会社自体がつぶれる事はないでしょうが、かなりダメージを負うようです。」

「何、そんな話聞いてないぞ!」


「そういう事なんで、これから坊ちゃんの月収100万円は本社から出せない事になりました。」

「はあ?パパがそう言ったのか?ママは?ママは反対しなかったのか?そんな事ありえるわけないだろう!」


「その代わりに、このブティック3店舗の経営権を譲るので坊ちゃんの裁量で赤字経営を回復してくださいとの事。

まあ、聡い坊ちゃんなら負債3億円なんてすぐに返せますよ。月収100万円どころか200万円も夢じゃない。」

「ふざけんな!こんな不採算店を俺に押し付けて、責任を取らせようっていうのか!」

激昂して佐藤に殴りかかる。

その時右手が白く光り、文字のような模様が浮き出した。

怒りで我を忘れた俺ははそのまま右拳を佐藤の顔面に繰り出す。


バシーーーン

佐藤は俺のパンチに微動だもせず受け止めた。

何だ、何かおかしい。右手の感覚が無いような…指先が冷たくなるような。

おかしい。殴ったのに手の感覚がない。殴った感覚が伝わってこない。何だこれは…。


「坊ちゃん、餞別代わりです。もう関わり合うこうともないでしょうしね。それではごきげんよう。」

佐藤は吹っ飛んだサングラスを拾って部屋から出て行った。


「くそ、今からパパに会いに行く。車を出せ!」

俺は右手の感覚が無いのを後回しに、急いで駐車場に降り車に乗り込もうと思ったその時、左腰に痛みが。


「かたぎ~~り~~いいいい! さんざん俺を利用したあげく切り捨てるのかよ!お前だけは許せねえ!」

後ろを振り返ると、クビにした吉村が俺の左側の腰に短刀を突き刺していた。


「は?」

段々と痛みが、熱量を伴った痛みが全身を駆け巡る。


「いたいいたいいたいいたい〜〜たっ助けて〜〜」

俺は泣き叫んで床を転がり回る。吉村は俺を何回も刺した後走り去っていった。


死にそうな痛みに俺は鼻水と涙でぐしょぐしょになりながら周りに大声で訴え続けた。

俺の意識は一瞬で暗闇に飲み込まれた。


俺が刺されてのたうちまわる姿がSNSで拡散され、3日間で再生回数100万回とバズった。

今までさんざん承認欲求を求めた俺にふさわしい最期だった。

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