第三部 自立する偶像
オリジン・オブ・モンスター
生まれた時からママは教祖だった。私はずっとお嬢さまと呼ばれていた。パパはいなかった。誰も私の名前を呼んでくれなかった。書類に名前を書く時でさえ、便宜上のこととして渋々書いていたんだ。
ママが言った。私の名前はパパにもらったたった一つのものだって。だから私はこの名前が好きだ。私の名前は美香。でも名字はママからもらったから嫌いだ。米浦。好きなものと嫌いなものを合わせて、米浦美香。よねうらみか。名前にしてしまうと、そこらへんにいるような凡庸な名前だ。もしかすると信者たちが私の名前を呼んでくれないのは、それが凡庸なのが気に入らないのかもしれない。
生まれた時からずっと、私は互生の中で教育を受けてきた。いわゆる互生二世だ。互生ができて、ママが教祖になった一年後に生まれた。だから計算上、ママは教祖になった直後も男を食ってたってことになる。まあそれはいいとして、私は後継ぎとして互生が運営して互生の子供たちが通う保育園、小学校、中学校に通った。教師ももちろん互生の信者たちだ。教師や塾講師や、元教授なんてのもいた。みんな私のことを丁重に取り扱った。小さな子供を、まるで割れ物のように。でも本物の私は、割れ物の中に閉じ込められていたんだ。互生というたかだか十数万人程度の宗教組織に閉じ込められた若後継ぎ。本当に自分のやりたいことなんてできやしない。そうじゃなくなったのは……そうじゃなくできると思ったのは……あの島が燃えた日、相根に出会ってからだ。
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