蛇の道は蛇、悪いことをするなら不良とつるめ
どの学校にも校舎裏に溜まる不良というものはいるものである。前述した通り、この高校は偏差値が高くないからなおさらだ。相根は普段全く会話しない不良たちを相手に交渉していた。
「あー、お前誰だっけ? なんかあの田舎臭い島から来たって言ってたっけ」
「ええ、それでお願いなんだけど、売りをしたいから買ってくれる人を紹介してくれると嬉しいんだけど」
「はあ!? 言ってること理解してる? お前そういうキャラなんだっけ!?」
「いやこいつ確か本ばっかり読んでるやつですよ、なんかおかしいッスよ」
「まあ、ちょっと事情はあるんだけど、それは伏せさせてほしいかな。金が要る事情があって、あの島じゃ何年かかっても稼げない、という感じ」
「別に事情とかどうでもいいけどよ、お前が万が一サツにパクられた時にゲロらないって証拠と、俺にとってのメリットがいるだろ」
「両方、これでいいかしら」
相根はスカートをめくりあげて、ノーパンで性器を外気に晒した。
「私の処女をあげる」
これには不良たちもあんぐり。
「しまえしまえしまえ! バカお前センコーに見られたらどうすんだよマジで……処女……」
「それ、アニキだけじゃなくて俺ももらえますかね……」
「もちろん。私にとっても全員と共犯関係にならないと困るもの」
不良たちが息をのんだ。けれどもリーダー格の男は抜け目ない。
「わかった。売上の半分は俺たちに渡せ。2万円とって、お互いに折半だ。その代わり客はこっちで見繕ってやるし、コンドームも代わりに買ってきてやる。ガキが出来たら面倒だし、恋人もいないお前が毎回コンドームを買ってたらいくら何でも目立つだろうが。あと、客に前払いは徹底させて、トラブルが起きないようにしてやる。それでいいか?」
相根からしてみれば、当初の想定と単価が変わらない上に、回転率が上がり、取りっぱぐれもなくなるわけだから、文句のあるはずもない。
「ええ、問題ないわ」
「そうと決まれば今日はホテルでお前さんの処女をもらって契約成立と行こうか。おいお前ら、電話であそこに予約入れとけ」
こうして奇妙な契約は成立した。相根の処女は適当に散らされた。別に気持ちよくもないし、痛くもなかった。自分が嫁入り道具のような嫁として勝手に輿入れを決められた時から、父親に簡単に捨てられたあの日から、なんだか全部どうでもいい感じなのである。けれども本当にどうでもよければ、こんなに必死に金を稼いで逃げようとはしないはずなのだ。相根は自分が二人いるように思えた。周りの人間が誰一人信用できず、心がぐしゃぐしゃの自分と、そこから逃げるために燃え上がっている自分とが。
流れはこうだ。まず不良が客の写真を撮って相根に見せて、島の人間でないことを確認する。その後、客と相根、そして監視役の不良は港近くの寂れたラブホテルに移動する。ホテル代は客の負担だ。そしてその客に2万円先払いさせる。1万円相根が受け取って、もう半分の1万円を不良グループが受け取る。監視役の不良がコンドームを数回分手渡しする。コンドームは業務用のものを通販で買えば、一個につき20円程度のものが150個入りで売っているから、ほとんど無料のようなものだ。(コンドームが高いのは、小分けにしてあるブランド品を買うからだ) もちろん相根の家にそんなものを届けるわけにはいかないから、不良がまとめ買いするわけである。
1時間過ぎれば客は帰っていく。帰らないやつは不良が帰らせる。そして15分程度バイクをニケツして、相根を港に送っていく。
こうして相根は金を増やしていった。
増やした金は、覚えているだろうか、以前見つけた山中の小屋に複数の箱を重ねて厳重に施錠した上で隠した。言うまでもないが、ただの女子高生である相根の財布に何十万も入っていたらいくらなんだって目立つ。そこでそういった出所不明の金を隠すための場所が必要だったというわけである。もちろん自宅が相根にとって信用できない場所というのは今更説明するまでもない。
客は順調についた。なぜなら相根は女子高校生を抱きたい男を満足させるような容姿をしていたからだ。ここまで我々はあえて相根の容姿に対してスポットライトを当てていなかった。なぜなら中学生ぐらいまでの人間と言うのはたいして見分けがつかないからだ。通学路の児童たちなど全く同じ顔に見える。第一見分けがついたところであんな閉鎖的な島で何が変わるというのだ。しょせんあの孤島では子供と言うのはだれそれの息子さん娘さんであって独立した存在ではないし、我々の社会だってそれをどうこう言えたものじゃない。だからそんなものを描写するために言の葉を不必要にちぎるのは時間の無駄だ。
しかしながらすでに相根は高校生になったし、何より売春に客がつくかどうかというのは容姿の要素も大きいのだから、ここで一旦相根の外見について説明しておくことはもはやこの小説の進行上無益なことではない。何より二次性徴が終わって体型が急変することはこれ以上ないから、一度の描写で済むのが楽でいい。とはいえこれは官能小説ではないのだから、綿密に体の詳細を1㎝単位で開陳することはしない。そもそもそんなことは相根に対して礼を失することである。これでも筆者は相根のことをごく尊敬している。自分が相根の立場であればこう強くは振舞えなかっただろうなと考えている。であるからして相根の胸や尻が何センチであるかということまで書くことはしない。そもそも胸が99㎝だろうが100㎝だろうが見た目で判別できる男などいないのだ。(けれども、悲しいことに三桁バストという広告や客引きに反応してしまうのが男だ)
話がそれた。相根ごめん。
それで相根の見た目についてだが、まず化粧はほとんどしていないし、髪も染めていない。黒い髪をまっすぐに伸ばしているばかりで特に手を付けてもいない。小さいころに母親から引き離され、化粧の店も周りにはないのだから、学ぶ機会がないのである。これでも高校生になって、同級生から聞いたコンディショナーを使うようになったのだからだいぶ進歩したほうではある。身長は約155㎝で、筋肉質というほどでもないが、緩んだ脂肪の類はついていない。彼女はアウトドア派では決してなく、読書を好む人間だが、田舎での不便は日常生活を送るだけでも彼女にとって最低限の運動となっていた。胸は大きくない。BかCといったところである。だからまあ、ストレートの黒髪で、並みの身長で、胸も大きくなく、脂肪はないがアスリート体型でもない、どこにでもいる高校生といった感じである。けれどもその眼には稀に強い意志の光が灯る。しかし燃えるような光も、網膜にたどり着かなければ像を結ばない。彼女と言う黒い光を視ることができる人間は未だ此処にあらず。
さて、読者の中には、「え、そんな平凡な子なのに客が途切れないの?」と思われる方もいらっしゃるだろう。逆に、平凡なのがいいのである。考えても見てほしい。風俗には18歳(高校卒業後)から勤務できる。胸がデカい子、小さい子、身長の低い子、高い子、金髪茶髪、ピアスありピアスなし、そういった特徴のある子は探せば見つかる。しかも、ほとんどの場合、警察に逮捕されるリスクは低い。それなのに、違法で、見つかれば捕まるとわかっていて、高い金を払ってJKを買う人間は、いわば「JK性」を購入しているのであって、相根はまさに「そこら辺にいるJK」だからこそ評判がいい、というわけである。
もののついでだから一郎の容姿についても説明しておこう。髪は真っ黒でぼさぼさなのを、切るのが面倒だから毎回「適当に短くしてください」と理髪店で言っている。そういう髪型である。皆さんの周りにもそういう人が一人はいるだろう。それで相根とは真逆のアウトドア派で、よく山で遊んでいたから、かなり筋肉質である。身長は175㎝ある。まあ、本土ではちょっと高いほう。島の中ではかなり高い方に入る。島では牛肉や豚肉はかなり高価なのである。言うまでもないが、島内に育てている人がいないため、本土からわざわざ冷蔵した状態で持ってくるため金がかかるのである。豚は何人かが飼っているから、孤島での肉と言えば豚である。豚が悪いとは言わないが、やはりふんだんに牛肉を食べられる一郎は、周りよりかなり大きくなる、ということである。そしてそれが本土に来てみると平均ぐらいの身長であるから、一郎は改革への想いをいっそう強くした。みんなが毎日牛肉を食べられる、というのは金銭的に厳しいかもしれんが、せめて豚を効率的に、今より大きい規模で飼って、二日にいっぺんは豚肉を食べられるような島にしないといけない。やはりそのためには極端に一次産業に偏った今の島の産業では収入が厳しい、資本や設備も極端に農漁業に特化している、これではいけない……
おっと一郎の容姿について語るつもりが半分は思想の話になってしまった。けれどもやはり一郎について語るとなると、どの一部を切り出すとしても、島への愛着と義務感が関連しないことはないのだから仕方がない。まさにノブレス・オブリージュを体現する堂々とした筋肉質の姿である。
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