第2話 ヒーロー
朝起きるとクロネが当たり前のように寛いでいた。 ベッドから降りるとすでにテーブルには朝食が用意されていた。 いったいどうやって用意したんだろうか。
「飯作ってくれたのか」
「泊めてもらった以上恩は返すべきですから」
俺は座ると食事に手をつけはじめた。 幽霊が作ったとは思えないほどに美味かった。 そのまま完食するとクロネに聞いた。
「どこで覚えたんだい。 つーか、 泊めた覚え無かったぞ」
「外にいるのもなんですから。 勿論部屋の掃除もヤードさんが寝ている間にしておきましたよ」
「家政婦を雇った覚えはないんだけど。 まあ、 いいか」
俺は優雅にコーヒーを飲みながら食事の余韻に浸っていた。
するといきなりノックもなく扉が開いた。 入ってきたのはリロだった。
「邪魔するけどいい?」
「いいけどノックぐらいしろよな。 で、 何の用? 所長が癇癪でも起こしたか?」
「それはいつもだけど……あれ? さっき女の人いなかった? 急に消えた気がするんだけど」
俺は驚いた。 クロネも心なしか驚いているような気がした。
「そんなわけないだろ。 一人だよ」
「いや、 そう思うんだけどさ。 昨日、事務所にヤード来た時も見知らぬ人がうろうろしていたんだよね。 だれも見てないって言ってたけどさ」
「それでなんだよ。 なんか用があったんだろ」
勝手に小屋を探しているリロに尋ねた。
「あー忘れてた。 所長が来いだって。 なんでもネクロマンサー達を一網打尽にするんだって。 用済んだから帰るわ。 じゃあね」
リロはそのまま帰っていった。 俺はため息をついた。
「見えるんだなクロネが……てっきり誰も見えないんじゃないかと思ってた」
「私もです。 でも私が視えるということは素質がありますね。 もしかしたら私たちの仲間になれるかもしれません」
「リロを巻き込みたくないよ。 大体、 リロがその気にならなかったらどうする?」
「その時はマジカルハンマーで記憶抹消です」
いつの間にかクロネの手にはハンマーが逃げられていた。
それをどう使うか聞く気はしなかった俺は黙ったまま事務所に向かうことにした。
事務所に着くと既に作戦会議が行われていた。 もっともそれは作戦会議というより所長の妄想に近い何かだった。
「俺がすべて引き受ける。 お前たちは援護していろ。 雑魚はすべて任せる」
「それだと所長がいくらなんでも無理がありますよ。 やはり、 兵を出すようにお願いしないと……」
「市長はまだ病気が治っておらん。 兵に頼らず俺たちだけで方をつける。 いいな」
俺はどうしたらいいか悩んだが、 結局何も言えず黙ったままだった。
自分に任せろというべきだろうか?
昨日の出来事が幻でもない限り自分がやるというべきだろう。 会議は俺の葛藤をよそに進んでいく。 他の墓守たちも所長のやり方で行くと決めたらしい。
「会議は終わりだ。 皆俺をサポートすること。 さあ、 墓場に向かうぞ。
皆ぞろぞろと出口に向かい始めた。 俺はそれが死地に向かう兵士たちの群れにみえてしまった。
「あ、 あの……」
「なんだヤード。 話は終わったぞ。 お前とリロは下がっていろよ。 今は猫の手の借りたいぐらいだからな」
所長は笑った。 俺は結局何も言い出せないまま事務所に一人残された。
墓場に着くと皆準備を終えたようだ。 俺は今日ネクロマンサー達が来ないことを祈りながら配置についた。
俺はクロネの姿を探した。
「残念ですがヤードさんの思っているようにはならないみたいです」
「おわっ! いたのかよ。 ところでなんで俺の考えがわかるんだ?」
「顔を見ていればわかりますよ。 何を考えているか。 先ほど見回りましたがどうやら今日もくるみたいです。 備えたほうがいいいですね」
俺は最悪の事態を想定したて俺は青くなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます